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56 変人様?いえ賢人です

 今日は待ちに待った遠足! ではなくて…「社会科見学」の日。


 前の世界でもあった工場内を見学させてくれて、帰りの際にお土産をくれたりするアレですよ。


 なんと、王立魔道具研究所からお誘いを受けたのだ。


「こたつ」に使用する「魔石」開発をお願いした縁で、今日は現場を見せてくれると言うので、そりゃあもう、二つ返事で了承しましたよ。


 むしろこちらからお願いして見せてもらいたかったぐらいだ。


「魔石」ですよ?あの有名な。異世界と言えば「魔石」でしょう!


 ファンタジーな世界!


 騎士さんに案内されて、研究所の入口へ。

 ドアを開けてもらい、中に入り、挨拶をしようとしたら、


「おい! そこの女! それ早く洗ってこい!」と、いきなり怒鳴られた。


 ぇ?私のことですか?

 と、きょとんと、していると、


「何してる! さっさとしろ!」と罵声を浴びた。


 え? 何これ?



 周りを見渡すが、他に誰も居ない。


 騎士様は困惑顔で「閣下、こちらの方は…」

 と、言いはじめた瞬間!


「あ?」


「誰だ、てめえ?」「殺されてぇのか?」


 物凄い形相で、騎士様を睨みつけた。


 え?何?この人?


「申し訳ございません」騎士様は急ぎ最敬礼をし、頭を下げた。


 え? 何で騎士様が謝ってるの? それにこの失礼な人は何?



「用がないなら邪魔だ! 帰れ!」

 騎士様に、その人が怒鳴る。


 直立不動の騎士様は「しかし…」と小さな声で続けた瞬間!


「あん?」「おめーは耳が、わりーのか!」

「邪魔だから帰れ!って言ったのが聞こえなかったのか?」


 私は騎士様に申し訳なく思い、気にせず退出してもらうよう

 目配せした。


「つか、おめーまだ洗ってねーのかよ!」

「この愚図が!」


 え? 私ですか?


 なんかちょっとイラッとしたので、服の袖をまくり、

 大きめな足音をたてて、流し台へ向かった。


 やればいいんでしょ?やるわよ!

 ふん! 舐めんなよ? アラサー毒女見せてあげましょう!


 テーブルにあったビーカーや、ガラス器具などを

 ワシャ! と掴み、ゴシゴシ洗う。


 前の世界で、調剤薬局でパートとして働いた経験があったのだ。

 それに医療関係でも。

 医療器具や、薬剤器具の扱いは実は慣れていたのは内緒だ。


 だって感じ悪いんだもん。このおじさん。


 洗浄終え、自分の手を洗って


「出来ましたが?」「他にすることは?」


 少しばかり小ぶりな胸を張って言うと


 フラスコと、ビーカーを、その感じ悪いおじさんが、

 おもむろに手にして、ライトの下で確認している。


「まぁ、こんなとこかな」と、無愛想に言った。


 はあ? こんなとこって何よ失礼ねぇ。と思ったが、

 大人な私は言葉にはしなかった。


「そういえばさぁ、あんた何でいるんだ?」


 はぁ? 今更ですか? と内心呆れたが

 大人な私は、笑顔で、


「見学に来るようにお誘い受けたんで、来たんですけど?

 ふん! 何かあ?と最後の言葉は飲み込んだけどね。



 顔に出てたのかしら? ガラの悪いおっさんが、


「ふーん」と何やら、ニヤケ笑いを浮かべた。


「で?(ワタクシ)は勝手に見てまわったら、よろしいのかしら?」と、

 少し早口で、強めに姿勢を正して言うと、


「アンタも変わってるなぁ」

「こんなところ来ても、女が来て喜ぶような、もんは、ここにはねーけどなぁ」


 薄ら笑いを浮かべながら言う。


 ふん! 喜ぶか、喜ばないかは私が決めるわよ!

 言いそうになったが、そこは得意のアレで… 

 そう、こんな場面に便利な営業スマイル!


「では、見せていただきますね」

 私が言うと


「触んじゃねーぞ! 勝手に!」と大きな声で言われた。


 わかってるわよ。そんなことぐらい! と言いたいが

 うん。我慢、我慢。


 そんな時、入口のドアが開いた。


「あーー。やっぱりか…お嬢様、申し訳なかったです」

 と、聞き覚えのある声がした。

 ヘンリー様だ。


 ほぅ…思わず安堵した。


「なんだ? ねぇちゃん、こいつと知り合いか?」

 時期宰相様に、こいつって…


 ヘンリー様も苦笑いだ。

 私は小声でヘンリー様に耳打ちする。


「ねぇ、この方はどういう人なの?」

「あぁ…やっぱりか…」少し悲しそうな目で私を見て


「王立研究所魔導部 部門、部長兼、王立研究所相談役、ヨハン・シュゼル様ですよ」

 ヘンリー様が教えくれた。

 ん? ヨハン? シュゼル? 何処かで聞いたような?


「坊主!」男が声を荒らげた。


「いいじゃないですかぁ。近いうちにお身内になるんですからぁ~」と

 ヘンリー様が言う。


 ん?


 私が不思議そうにしていると、ヘンリー様が耳打ちして来た。


「陛下の兄上ですよ。シュゼル大公閣下です」と



 えええええええええ? こんな人が?って思ったのは内緒だが…


 顔に出てたのか?


「お前、こんなやつが?」って思ったろ?

 シュゼル様に言われた。


 え? ここにもエスパーが?



「シュゼルなんて、こ洒落れた名前で呼んだら、叩きだすぞ?お前!」

 と私に向かって低い声で言う。


 え?なら、なんてお呼びすればいいのかしら?


 と、困っていたら


 ヘンリー様が「おじさん、でいいんじゃない?」と笑いながら言う。


「お前殺されたいのか?」と低い声で睨む。


 でも、シュゼル様って確か…

 王太子様に次ぐ、王位継承者第二位の人よねぇ…この方が?


 一瞬、「おじさん」を見ると、


「あん?」と言われ、「いえ。何でもございません」と誤魔化した。




「エレナちゃんねぇ。この人、こんなだけど。これでもちゃんと、研究家なんだよ?」

 と、ヘンリー様が言う。 大公閣下に、()()()って…

 敢えて口にせまい…


「魔導ランタンあるよねえ?」


 もちろん知ってますが?


「ええ?」と答えると、


「その『魔導ランタン』創ったのがシュゼル様だよ」

 とニッコリ微笑んで、ヘンリー様が言った。



 えええええ?

 ランタンってあの?


 そんな凄い人だったの?このおっさ、おじさま

 いや…大公様か

 と、心の中で詫びる。


「あん?」

 出た! やっぱりエスパーだ! ここにもか!



 あ! 思い出した! 何処かで聞いた名前だと思ったはず!


 この世界に来て直ぐの頃、この世界のことを知ろうと思って、

 色々調べた中にあった本『今世紀の賢人達』に載ってた名前だったんだわ!


 そんな凄い人だったのか! 


 驚きにちょっと、腰がひけて、よろけそうになった時、


「おい。何やってんだよ」「しっかりしろよ!」

「お前、ちゃんと飯食ってんのか?」


「どうせ、お貴族様の、あのクソ不味い飯ばかり食ってるんだろ?」

「あんなもんばかり食ってると病気になるぞ!」と、

 先程までより、少しだけ優しい?口調に聞こた。


「おい!いつまで休憩してんだ!」

「さっさと、仕事しろよ!」


 いや…優しい? 気のせいだったようだ…


「あん?」 睨まれた。

 うん。エスパー決定!


 でも、賢人というよりは、どこをどう見ても変人よねぇ…


 この人、散髪とかしてないのかしら?

 髪はボサボサで、寝癖かしら?なんか後ろはシッポ見たいに出てるし…


 また、睨まれた。


 うん、今度うちのくノ一を紹介してあげよう!







───この日の二人の出会いが、この先、大陸中に激震を走らせることになるとは、

 今はまだ……誰も気付かなかった。




























「最後までお読みいただき、ありがとうございます」

続きが気になると思っていただけましたら、ブックマークや評価をぜひお願いします。


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