53 うれしはずかしのプレゼント交換
殿下に抱き抱えられたまま、ホールに戻ると
みんなの視線が一斉に向けられた。
もう、恥ずかしくて口から心臓が出そうです。
お願いだから降ろして欲しい。
「聖なる夜に王子が、姫様を拐かすのですか?」
揶揄うような声でヘンリー様が殿下に言う。
「そうだ。邪魔しないでくれよ?」殿下が答える。
「そろそろ、降ろしてさしあげたらいかかです?姫には刺激がまだ、お強そうですよ?」
「鈍感な王子は嫌われてしまいますよ?」
尚もヘンリー様が殿下を煽る。
「心配は無用だよ。ヘンリー卿。姫は私にゾッコンだから」
「そして私も姫に夢中だ」
「ハイハイ。邪魔者は消えますよ~」と去って行った。
ゆっくりと私は降ろされ、恥ずかしさに殿下から目を背けると、
「エレナ、おいで」手を引かれ、料理のテーブル前に誘われる。
「何が食べたい?」殿下が皿を手にしている。
慌てて給仕の者が来ようとしたが、殿下が手を上げ断る。
チキンやサラダ、フルーツなどを綺麗に皿に盛られ、
優しい笑顔で「ハイ」と差し出された。
その流れるような動きに驚いて、じっとしていると、
「あ、ごめんごめん」と言って、赤いイチゴを一粒、手に取り私の口元に持って来た。
え?
これって… あの?
例の有名なアレ?ですか?
いや、無理ですから。皆さん見てますし…
何のいじめでしょう…
マジで、もう心臓爆死ですから…
元夫にもされたことないわ…
殿下は、クシャっと笑い、
小首を傾げて、まだ口元にイチゴを押す。
その顔は仔犬のよう…
昔飼っていたトイ・プードルを思い出す。
ちょっとオマヌケ顔が可愛い、
人懐っこい、やんちゃで、甘えん坊の犬だった。
そう、名前は「ソラくん」だ。
何の話だった?
そう、今の敵は目の前の赤い物体だ!
ソラくんそっくりのクリクリお目目で訴えられる。
負けた… チクショウ…ソラくんゴメンよ。
小さく口を開けたら、そっとイチゴを押し込まれた。
殿下は満面の笑みだ。
ご満足頂けて良かった。頑張った甲斐がありました…
と、思ったら!!
殿下が口を開けて待っているでは、
あ~りませんか!
えええええええ? 無理ですから…
何の罰ゲームですかこれ!
もはや拷問…
「早く、早くぅ~」と、ソラくんが、もとい 光の王子が、
再び口を開ける。
これは私に与えられた試練ね。
神様は乗り越えられない試練は与えないはず!
ええぃ! やってやるわよ!
待ってろ! ソラくん!
気合を入れて、皿からイチゴを一粒、
勢いよくもぎ取り、目をギュッと瞑り、
殿下の口元目掛けてイチゴを勢いよく
ゴールを決めた! キリッ
フフフ…見たか!我ながら素晴らしい
稲妻弾丸シュートだ!
ゴーーール! の声が聞こえと思った瞬間?
「エレナ…、そこは鼻だよ」と小さな声で真面目に言われた。
えええ!? やってしまった! 恥ずかしくなってそのまま俯くと、
私の手にあるイチゴを殿下がパクリと口にした。
「うん。美味しいね」満面の笑みで微笑んだ。
指先に殿下の唇が一瞬触れ、殿下がチュっとキスを落とした。
そして何事もなかったような顔で
「そろそろ戻ろっか?」軽い口調で言う。
シュートを決められず、いや違う。
相手チームの立て続けの猛攻に撃沈した私は、ヘロヘロになりながらも、
その長身、金髪の主将にホールドされ、フィールドへと連れ戻されたのである。
殿下よ、それは反則ですよ。心の中で抗議した。
ちょうどその時に、遅れて来た国王夫妻が、お父様と一緒にホールに来られた。
今の、両陛下に見られてないよね? 心配になった…
そして、ついにメインイベント「プレゼント交換」の時間だ。
セバストナカイと、なんとサンタ役は鬼軍曹、もとい、メラニー女史が台車に載せたプレゼントを運んで来た。みんなには、入室前にプレゼントを預かっていたのだ。
赤いワンピースを着た鬼軍曹、もとい、メラニー女史が今日は可愛らしく見えた。
うん。殿下の意見も一理ある。と納得した。
コスプレ好きではなかったようだと安堵する。
メラニー女史とセバストナカイの合図で、音楽が鳴り出した。
「プレゼント交換」の始まりの合図だ。
隣へ、隣へ。童心に返ったようだ。
まあまだ15歳なんですけどね。世間的には…
国王陛下も参加して、嬉しそうにプレゼントを隣に回している姿が、ちょっと可愛く見えたのはナイショだ。
音楽が止まり、メラニーサンタの「メリークリスマス」の合図でプレゼントを開ける。
「可愛い~」「お!これは良い物が当たった!」などと、感嘆な声が聞こえた。
殿下は、クッキーの詰め合わせのようだ。喜んでいる。良かった。
その後、みんなで、プレゼントの見せ合いをしたり、談笑したりと楽しい時間が流れたところで、私は、ダラスとセバスに目配せする。
部屋のライトが消え、音楽がゆっくり流れ出す。
サンタガールが、奥からワゴンをひいてくる。
招待客のテーブルに、灯りが点った蝋燭を置いていくと、少しづつ明かるくなっていく。
柔らかな温かい灯りが、緩やかに揺れる。
大きなクリスマスケーキがワゴンに鎮座している。
全員のテーブルに蝋燭の灯りが点ったあと、お父様が挨拶をする。
「今年一年みんなありがとう!」「来年も良い年でありますように」
「メリークリスマス!」「乾杯!」と。
本当に今年は色々あった。
『トレ・ゾール』を開店させたり、誘拐されたり、婚約したりと…
きっと忘れられない年になるだろう。
殿下がそっと耳元で「メリークリスマス」と囁き、私の肩を抱いた。
周りを見れば、チラホラとカップルが肩を寄せ合っていた。
いつまでも、この幸せが続きますように…
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