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52 ズルい人

 メイン料理が運ばれ、ホールからは歓声があがる。


 料理長自らサーブする。


 長い包丁が、どう見ても長剣にしか見えないのは私だけだろうか?

 と周りに目をやると、あぁ皆さんも同じ意見ですのね。と何故か安心したのはナイショだ。


 殿下が、シャンパンを開け、グラスの塔に注ぐ。


 これやって見たかったのよ。「シャンパンタワー」

 前の世界だと庶民の私はテレビでしか見たことなかった。お恥ずかしいことに…


 なんとか無事全てのグラスに注がれ、サンタガールにより、招待客にグラスが配られた。


 殿下が、グラスを手に取り、私に渡す。その瞬間手をギュッと握られた。

 ちょっ、恥ずかしいからヤメて下さい。


 ホールの熱気と殿下の熱にあてられた私は、少し冷やしに、バルコニーに向かった。


 肌寒い風が今は気持ちいい。空を見上げるとカシオペアの星が。


 後ろからふわ~と、抱きしめられた。


「エレナ。愛してる」耳元で囁き、そのまま耳にそっと唇をあてる。


 恥ずかしそうに俯くと、強引に引き寄せられ、


「こっちを見て」と言われる。


 恥ずかしながらゆっくり、殿下を見上げると

「いい子だ」低い甘い声で囁かれ、


 顎を手で掴まれそのままキスをされた。


 殿下の唇が離れるかと? 思った瞬間、口の中に温かい物が侵入してきた。


 痺れるような感覚のあと、頭が真っ白になる。

 ゆっくりと殿下の熱を感じる…


 そっと唇が離れた瞬間、私は、恥ずかしさで俯いてしまう。


「嫌だった?」と、優しく言われる。


 無言で首を振ると。


 いつもと変わらない優しい笑顔で、今度は軽くキスをされた。


 心臓の音が殿下に聞こえそうだ。 

 私だけがこんなにドキドキしている…

 何故か寂しくなった…


「どうしたの?」優しく聞かれる。

 きっと顔に出ていたんだろう。


「いえ…」


 殿下がすっと私の手を取り、殿下の胸に私の手をあてる。


「僕だってほら。こんなにドキドキしている。恥ずかしいから黙っておこうと思ったけどね」


「やっと僕の手の中に。こんな日をどれだけ待ったか」


「今、僕は嬉しくて、叫び出しそうな気分だよ」ニッコリ笑う。


 ズルイよ… 


 全てお見通しなんてズルイ…



「ゆっくりでいい、僕を好きになって?」

「そして、僕だけを見て。僕の大事なお姫様」と言って跪き


 白い小箱の蓋を開け差し出す。


 殿下の瞳と同じ綺麗なサファイヤブルーの指輪だった。


 殿下が私の手を取り、薬指にはめ、そっとキスを落とした。



 頬に一筋の雫が落ちた。


「殿下…」と呟くと


「カインだ」と、少し強い口調で言われる。


 王族の呼称として「名前」の部分を呼ぶことを許されるのは「家族」だけだ。


 殿下の場合、「王太子殿下」と呼ぶか、「殿下」か、「ミドルネーム」である「ステファノ殿下」が

 正式だ。


 ちなみにこの国の貴族は、「ミドルネーム」にあたる部分は「王族」だけが洗礼で与えられる。

 それ以外の貴族は全て「フォン」が付く。


 非常にわかりやすい仕組みだ。


「殿下。それはまだ…正式な婚姻を終えておりませんし…」私が言うと


「カインだ」と再び言う。


 私が渋る顔をすると、殿下は少し意地悪そうな顔を浮かべ

「呼ぶまでこの手は離さないよ?」口の端を上げて言う。



 本当に今日の殿下はズルイ。


 そしてその手は殿下の口に持って行かれ、指先を殿下が軽く舐めたのだ。


 もう許してください… 心臓が爆死します。


 ヘナヘナになりながら、殿下を見上げると、


「ほら、早くして?」口の端を上げて微笑む。


「カ、カインさま…」小さな声で言うと、


「聞こえないなぁ」低い声で言われる。


 泣きそうな顔の私を見て、殿下がそっと抱きしめ

「ごめんね。あまりにもエレナが可愛かったから、つい意地悪してしまったね」

 優しく耳元で囁かれた。



「怒らないでレディ」騎士の礼をとる。


「さぁ、そろそろホールへ戻ろうか。冷えて来ただろう?」


 殿下が自分の上着を脱ぎ、私の肩からかけてくれた。


 柔らかなシトラスの匂いがした。



 私は勇気を出して呟いた。


「メリークリスマス。カイン様」


 その瞬間、殿下は破顔し、私を横抱きに抱き上げたままホールに向かって歩きだした。


「殿下、重いですから降ろしてください」と言うと。


「ダメ」と、短く、いたずらっ子のような顔をして、おでこにキスされた。


 今日の殿下はおかしいわ…。

 こんなに積極的だと、私の身体がもたない…

 と心の中で呟いた。









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