51 聖なる夜に
今日は12月24日 ついにこの日が、そう国民が心躍る日『クリスマス・イヴ』
朝から、厨房は大忙し。料理長のダラスのおかげで、クリスマスケーキも用意できた。
顔は怖いけど、仕事は出来る頼もしい人だ。顔はコワイけどね…
セバスがやって来た。
「ぷっ」思わず吹き出しそうになってしまったのを、咳払いで誤魔化す。
今日のセバスは頭にトナカイの角のカチューシャをして、鼻にはトナカイの鼻先をつけている。
「ぷぷっ」 笑ってはイケナイと思いつつ…まあ私がさせたんだけどね…
「お嬢様?」
「いえ? 何でもないわ」「何か変わったことがあった?」
「只今、お城からの使いの方が来られまして……」
珍しくセバスの顔がこわばる。
「何かあったの?」
「国王陛下が、お忍びでおいでになる」とのご連絡が……
「は?」
「え?」
思わず淑女らしくない声をあげてしまった。
くノ一はいないわよね?と、すかさず背後を確認する自分が情けない…
「それって…もしかして…王妃殿下もいらっしゃる?」
「恐らく」
「奥様には先程お知らせしておきました」
「ありがとう」
どうしましょう…
まさかの国王夫妻が出席するなんて…
───時は少し、さかのぼった王宮の一室では
「儂には招待状は届いてないようだが?」
「クロフォードよ?」
「まさかとは思うが、儂は邪魔か?」
「え? 儂は必要ないと言いたいのか? のう? クロフォードよ?」
「ほう、そういうつもりか? クロフォード?」
「儂に隠し事するつもりかのぅ?」
ひや汗タラタラの公爵様は、小さな声をやっと絞りだし
「滅相もございません。決してそのようなことは、ございません。」
「何分、急に決まったことでございまして。当家の不備でございます」
「ご招待状のお届けが遅れているようでございます」
「誠に……」最後のほうはもう聞き取るのも辛いほどの小さな声だ。
「あい。分かった。妃と共に参る」
「そのつもりで」
「はっ。有り難き幸せ」
平身低頭の公爵は部屋を後にし、抜け殻のようになって頭を抱えていた。
───その頃屋敷では
「急げー」「早く運べー」
「これは何処に?」と怒号が飛び交い準備が進められていた。
続々と並ぶ料理や酒類。庭と、屋敷のツリーに灯りが点った。
控る楽団の音合わせも盛んだ。
招待客もチラホラ現れ、食前酒を手に取り雑談中だ。
そこに、セバスから声がかかる。
「カイン・ステファノ・グレンシード王太子殿下がお見えになりました」
給仕の者だけを残し、出迎えに行く。
「エレナ!」「会いたかったよ!」
大きな花束を抱えたまま抱擁される。
実は準備が始まって以来、入室禁止にしていたのだ。
サプライズの為に。庭にもハンスがしっかり布を被せる徹底ぶりだった。
「すごいねぇこれは。圧巻だ!」
「こんなの見たことないよ!」殿下も興奮気味だ。
「門を潜った際に広がる庭の、光り輝く木々にも驚いたけど、これはもっと凄いねぇ」
長身の殿下が、エントランスホールの特大ツリーを見上げている。
このツリーは公爵家渾身の出来だ。褒められて侍女達やハンス達も、みんな誇らしげだ。
「中へどうぞ」殿下の腕に手を絡ませ案内する。
ホール入った瞬間、殿下は固まっている。
いつも余裕がある優雅な殿下にしては珍しい。
「あ、あの服は?」
給仕の侍女を見ている。
「ああ、あれでございますね。あれが『クリスマスパーティー』の制服です」
「可愛いでしょ?」
「エレナも着るの?」
「いえ。私は…」俯く
「なんだ…残念だ」小声で言う。
「え?」
「いや。エレナが着たら、凄く可愛いだろうなぁ…と思って」
「ちょっと想像してしまったよ。ごめんごめん」はにかんだ様子で言う。
ええぇーーーーー殿下ってまさかのコスプレ好き???
ロリコンでコスプレ好き? 嘘でしょ?
「あ! 変な意味じゃないよ!」
「エレナは何着ても可愛いけど、ちょっとあんな姿も見てみたいなって思っただけだから…」
なんとなく最後の方はシドロモドロだ。
「決して変な意味じゃないからね! 安心して」
うん。コスプレ好きじゃないことを祈ってます…
「エレナ。こんな素敵なパーティーに招待してくれてありがとう」
殿下が優しく微笑みながら、胸に手をあて騎士の礼をとる。
「いえ。今日は殿下も楽しんで行って下さいね」
「あぁ。そうさせてもらうよ。ありがとう」
ニッコリ微笑んだ顔は、ライトに照らさてキラキラ感倍増だ。
「あ、ちょっと待って」殿下に呼び止められる。
振り向くと、突然頬に軽くキスをされてしまった。
え? 誰も見てないよね? 顔が赤くなった私に、
何もなかったように「さあ、みんなが待っているよ、行こう」
ウィンクし手を差し伸べられる。
え? こんなこと普通にする人だったの?
私の心臓大丈夫かしら?
頬が未だに熱いのを感じながら、ホール中央に向かう。
殿下は何ごともなかったように招待客のみんなと雑談しながら笑っている。
ドキドキしているのは私だけかしら?
と、少し複雑な気持ちになった…
「最後までお読みいただき、ありがとうございます」
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