48 前を向く
【第三章】突入です。
今後共よろしくお願いします。
序盤、甘口な感じです。
新興貴族派の制裁と、ルドルフ様の処遇も決まり、もう直ぐ冬支度の装いの王都近郊には、平穏な日々が戻りつつあったのだが…
王都の貴族街にあるタウンハウスの一角にだけ、大混乱の場所があった。
「旦那様ーーお早くお着替え下さい!」
「もう、お時間がございませんよ!」
「お嬢様、いつまで食べてらっしゃるんですか!」
「早く、参りますよ!」
怖いよ…セバスチャン婦人
「真珠のネックレスでよろしいですか?」「靴は、黄色の?」
「違う、違うわ! 白のリボンのついた、ほら! そこの箱の」「あぁもう! 落とさないで!」
侍女が早足で駆け回り、公爵夫妻と、その長女も、朝から、あっちへ呼ばれ、こっちに引っ張られ…
「あ! 馬車が着いたようでございますよ」
「さあ!」
「参りましょう!」
大きな玄関のドアをセバスが開ける。
グレンシード公爵家全員が一同に並び、馬車から降りて来る美丈夫を待つ。
抱えきれない程の大きな赤いバラの花束を両手に抱え、颯爽と歩き出す。
金色の髪は、初冬の風に靡き、その周りだけが、緩やかな時間が流れ
まるで別世界のよう。
皆の息を飲む音が聞こえる。
「ようこそいらっしゃいました」「王太子殿下!」セバスの声を合図に、
公爵家の皆が一斉にお辞儀をする。その姿は壮観だ。
凄いわね。息ピッタリ! 予行演習でもしたのかしら?
あ、ダメダメ、ついいつもの癖で…
自然とセバスチャン婦人の顔を見てしまう自分が情けなく思ったことは
バレてないよね?うちのくノ一に?
公爵家当主アルデ・フォン・グレンシードが、応接間に案内する。
「エレナ!」涙が出そうなぐらい切なく、甘い声で私の名を呼ぶその人は…
将来、私の伴侶となる方だ。
「クロフォード公爵様、お嬢様と結婚させて下さい」と彼が跪き、父を見る。
「で、殿下…おやめください」「お立ちください」と、お父様とお母様が慌てる。
殿下はすっーとゆっくり立ち上がり、手を胸にあて騎士の礼をとり、再び
「必ず幸せにします。何があろうと、私が全力でお守りします」
力強い声で言う。
その瞬間、廊下で待機していた、侍女達から一斉に拍手が沸く。
セバスとメラニーは肩寄せ合って泣いている。
お父様の目の端が赤くなり、お母様はお父様の胸に顔を寄せながら
「本当に良かった」二人とも繰り返す。
「エレナ。承諾してくれてありがとう」
大きな羽を背負った天使のような笑顔で微笑まれた。
こんなに幸せでいいのかしら?
少し不安になる。
その気持ちが顔に出ていたのか、殿下がそっと私の肩を抱く。
「何があっても君を守るよ」
優しく、そして真剣な声で囁いた。
この温もりを私は守り続けて行く。
そして、この人を支え、その美しい笑顔を守り続けよう!
この日誓った。
フォンターナ侯爵が起こした騒動の影響もあり、正式な婚約は来年の春「婚約披露パーティー」を
催すことになった。
それまでは自由に過ごして良いと言われた。
ん? それまでは???
いえいえ? 私はいつでも自由よ!
頭の中で思っていたら
鬼軍曹から「お嬢様、明日からは『パート』と? やらはお控え下さいませ!」
と、言われた。
えぇ!
「当たり前でございます!」
「そもそもで、ございますよ? 公爵家のご令嬢ともあろう方が、市井で~~~」
長くなりそうな予感がして、殿下の方を向くと
苦笑いしながら
「大丈夫だよ? エレナは、エレナのしたいようにすれば良いのだからね」
と、菩薩のようなお顔で微笑まれた。
なんと、尊いんでしょう!
「殿下が甘いから、お嬢様はこんなで~~~」
長くなりそうなんで、再度殿下の方を向くと、殿下は楽しそうに目を細めた。
逃げたな…
それから私は、鬼軍曹の説教を、呪文の如く聞きながら、迫り来る眠気と格闘したのだった。
「お嬢様!ちゃんと聞いてますか?」
定期的な合いの手を入れられながら。
その間中、ずっと殿下は楽しそうに微笑んでいたのだ。
フォローしろよ!とジト目で見ても、菩薩様の慈悲は得られなかったのだ。
て、いうかー、王太子殿下の前で、未来の花嫁を説教する身内ってどうなのよ?
心の中で、悪態つくと
「何かおっしゃいましたか?」メラニーの瞳がキランと。
エスパーか! あんたは…
エスパーで、くノ一! 最強か! お主!
そんなこんな感じ? で無事に? 私の婚約の報告が終わり、
殿下はお城へと帰られた。
王太子妃殿下かぁ…
私につとまるのかなぁ…
ううん! 考えても仕方ないわ!
当たって砕けろ!よ。
いや、砕けるのはマズイだろ…
と、一人突っ込みをし
いや。考えるのはもうやめた!
得意の、忍法【現実逃避の術】を発動した。
いえ。これは逃げてるんじゃないわ。
前に進むためよ。
やる前からクヨクヨ考えているのは、
せっかくやり直せるチャンスを与えてくれた、神様に失礼だわ。
私は、私に出来ることを精一杯やることにしたのだ。
「最後までお読みいただき、ありがとうございます」
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