47 光と影
【第二章】完結です。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
次回からは【第三章】突入です。恋愛要素多め?
引き続き応援よろしくお願いします。
王宮の一室
先程から沈黙が続く…
「儂のせいだ。全て儂のせいだ」
「貴方…」そっと、女性は最愛の夫の肩に手を置く。
再び長い、長い沈黙が続く…
テーブルに汗が落ちる。
一人の老将が低いしっかりした声で言う。
「して、いかがなされますか?」
短い沈黙の後、王が発した。
「儂が会って話をしよう」
「なりませぬ!」
宰相、ステングレー侯爵の声が、静まり返った執務室に鳴り響く。
「国王陛下、いえ。父上。私にその、お役をお与え頂けませんか?」
『カイン?』 陛下と妃殿下の声が重なった。
「では、私もご一緒します」とヘンリーが立ち上がる。
「いや、これは儂の起こしたことだ」
「儂が、この手で…」
「父上! なりません!」「私に、時間を下さい!」
王太子 カイン・ステファノ・グレンシードは、真っ直ぐに、国王である父親の目を見た。
「わかった。お前に全てを任せる」
「有り難きしあわせ」 カインは頭を深く下げ、部屋を後にした。
───コツン、コツン、コツン
足音だけが響く
薄暗く長い廊下をカインは進む。その目に一切の迷いはない。
「ルディ!」
その声に、その宿主は、一瞬ギョっとした表情を浮かべる
「俺を殺しに来たんですか?」
「王太子殿下?」
冷たく、そして、遠くを見つめながら言う。
「お前が、エレナに対して、したことを俺は一生許すことはない!」
「だが、お前は俺の、大事な弟だ」
…………
どのくらいの時間が経っただろうか?
チャプーン、チャプーン…
天井から落ちる滴の音だけが小さく響く。
床には水溜りが出来ていた。
「俺はずっとあなたに憧れていた」
震える声で、黒髪の男が呟いた。
「ずっとあなたになりたかった」
頬から涙が溢れ落ちる。
「何故、俺ではない?と、何度も何度も何度も…自分を恨み、あなたを求め、焦がれた」
「決して手に届くことはない、あなたの姿をずっと俺は追い求めていたんだ」
「母上があなたにしたことは、決して許されることではないとわかっていても…」
黒髪の男は声を震わせ嗚咽している。
暫くの沈黙が続く…
「俺があの女を狂わせた」
「すまなかった」
消え入るような声で言いながら、床に頭をつけて泣き崩れた。
「お前には関係ないことだ」殿下が言うと、
「しかし!」顔を上げ、鋭い目で声を張る。
「もう過去のことだ」
「そして俺は生きている」
「エレナもな…」
優しい笑顔で鉄格子の向こう、隅の小さな黒い塊を見つめる。
「ごめんなさい。兄上……」
「う、うっ…」
黒髪の男は幼子のように、声をあげて泣き崩れた。
───「ルドルフ・クライム」お前には罪を償ってもらう必要がある。
低く力強い声でカインは、真っ直ぐに弟ルドルフを見て言う。
「兄上。最期に貴方に会えて良かった」
「ありがとうございました。そしてごめんなさい」
ルドルフは座り込んだまま、両手を胸の前で組み、ゆっくりと瞼を閉じて、
頭を床につけた……
剣が鞘から抜かれる音がする。
スッ!と空気を切り裂く音がした瞬間、
黒い髪の毛がハラハラと舞う。
「ルドルフ・クライム!勅命である!」
「心して聞け!」
「廃嫡し、平民となって来春、第一騎士団入団試験を受け」
「第一騎士団に入隊することを命ずる!」
「貴様に拒否権はない!」
力強いが、いつもよりも早口で言う。
それは、いつもの柔和なカインではなく、凛とした騎士、王太子の顔であった。
……「兄上?」
「必ず合格するように!」
「春までは蟄居を命ずる!」
「身体をつくり、学べ!」
「以上だ!」
カインは、剣を鞘に戻し踵を翻した。
コツン、コツン、コツン……先程よりも早い音だった。
音が段々小さくなって行き、暗闇に静寂が戻ると、
ルドルフは泣き崩れた。
「兄上。申し訳ございませんでした」
「ごめんさい。ごめんなさい兄上」と
何度も、何度も謝る彼の声だけが、
漆黒に沈む地下牢に、こだました。
「最後までお読みいただき、ありがとうございます」
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