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04 ハンドクリームを作ろう(1)

「お父様お願いがありますの」

 父親の執務室に向かい声を掛ける。


「ん? どうしたんだ? エレナ?珍しいね。お前がここに来るなんて」

 父アルデが言う。


「定期的に来ている商会のマクレガーさんを私に紹介して欲しいの!」


「ん? マクレガーをかい?」


「次回いらした時に是非紹介してください。お父様」


「紹介するのはかまわないが、何の用だい?」

 父アルデが不思議そうな顔をして私の顔を見る。


「実は、先日私の侍女より、最近手荒れが酷く辛いとの話を聞いて、なんとか力になれないものかと思いまして」

 私は父の顔を懇願の目でじっと見る。


「それなら薬師殿をうちに呼べば良いのでは?」

 アルデが怪訝そうに眉を寄せる。



「いいえ。お父様。薬師様の調合する高価なお薬ではなく、普段から毎日使えるクリーム、お薬ではなく手指を保護できる皮膜のような軟膏を作りたいと思って」

(言ってしまった……)




 父の顔が固まる。




 暫く沈黙が続き父が問う。


「それは、新たに作ると言うことなのかい? エレナ」


「はい。お父様。現在あるのはお父様もご存知なように手荒れや切り傷など、傷が出来た際に塗布する薬草を用いた軟膏です。しかし私が今考えている物はお薬ではなく、普段から毎日使用できるような安価な保護クリームの開発です。マクレガーさんなら、色々な外国にも行き来しており、珍しい物を見る機会も多く、そしてあの方は薬草や植物の知識も豊富です」


(確か蜜蝋を使用したら出来たはず。蜜蝋に植物から抽出した精油と蒸留水を混ぜれば。

 過去に元の世界の本で読んだことがあるのだ)


 ちなみに何故、薬師が調合する軟膏が高価かと言えば、この国では『薬』と呼ばれる物は

 国の試験を合格した薬師の手によって作成した物であり、一定基準を到達した物(国家認定を受けた物)のみが販売、処方することができるのだ。


 従って臨床実験や試験などを何度も繰り返す手間と、国家試験を突破した薬師の希少さにより、おのずと高価になってしまうのだ。



 でも私が作りたいハンドクリームは、元の世界でもそうだったように『薬』ではない。


 あくまでも美容用であり治療の為の物ではないため、薬師の免許がなくても作成できるのだ。

 そしてそれに薬草を混合して作成することは違法ではない。


 だが作り方は知っていても、実際に商品化させ、流通させるとなれば専門の商人の協力は不可欠だ。


 きっとこの大陸一の大商会のマクレガーさんなら実現してくれるはずだ。

 そう思いエレナは、父アルデに真剣な目でお願いする。



 アルデはじっとエレナの顔をみながら頷く。


「お前の話はわかった。ただお前はまだ子供だ。何かを始めるにはまだ早すぎる。マクレガーを紹介するのは、かまわんが、お前がそのクリームとやらを作ることは許可出来ない。作るのであれば工夫を紹介する」


 アルデは強い口調でエレナに言った。


「わかりました。お父様。マクレガーさんに私の話を聞いてもらい、クリームを作成できる道をお願いしてみます」



 はぁ。


 ついに自立への第一歩ね。


 楽しみだわ。


 絶対に成功させてみせるわ!



 それで、私は絶対に、



 安定した平凡な暮らしを、もぎとるわ!



 見てらっしゃい…




 あ、お腹が空いたわ。


 色々考えたら疲れたみたいね。


 先ずは、腹ごしらえからだわ。



「ルーシー居るかしら? ルーシー? 何か食べる物用意できる?」




 ……自立には、まだまだかかるようなエレナさんだった。

「最後までお読みいただき、ありがとうございます」

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