表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

36/84

36 追憶

 トムから話を聞いた日の夜、お父様に念のため、フォンターナ領での話をしておいた。


 最近、力をつけている、新興派とフォンターナ侯爵領について、注意しておくように宰相様にも、お父様からお話してくださると言われたので安心した。








───その時、前の世界で平和ボケしていた私には、ジワジワと忍び寄る影を疑う余地もなかったのだった……







 最近は時々、時間が取れるようになり、店にも顔を出せるようになっていた。


 私が店に行くと、最近は必ずと言っていいほどの確率で、黒騎士様にお会いするのだ。

 いつも、にこやかに会話を少しした後、ペット用の玩具や、食器などを買って行かれる。


「いらっしゃいませ」私が声をかけると、

 にこやかな笑顔でこちらを向きながら、「これは?」酒の空瓶を手に取り、たずねて来た。


「こちらは、お城の近衛騎士様達からの、寄贈品なんですよ」私が答えると、


「ほぅ」と一言、言って


「では、ここにあるのを全部頂きたい」笑顔で言う。



「え?全部でございますか?」驚いた顔をすると、

 開店から月日が経って、在庫が少なくなってきているとは言え、まだかなりの量だ…


「大丈夫ですよ。何せ、ここの品物は安いですしね」笑顔で言う。



 いや、そっちじゃなく、荷物の方の心配です!と、心の中で呟く。


「お荷物は大丈夫でしょうか?」

「ご自宅に配達も出来ますが?」

「先日のお礼に、配達のお代は是非サービスさせて下さい」

 とお願いすると、


「いや、心配には及びませんよ。そこの通りに馬車を待たせておりますから」


「ありがとう。レディ」と、ウィンクする。


 クシャッと笑った顔が、なんとなく殿下に似ている気がした。


 顔はまったく似ていないのだが…



 そういえば、最近殿下をお見かけしないわね…?


 と、ふと思ったが、直ぐに店員を数名呼び、棚の瓶を店員数名で梱包作業をしたあと、トムを呼び、馬車に空瓶の箱を積む。



「ありがとうございました」挨拶すると、ニコッと笑顔で手を振り、消えて行った。


 あんな、お顔もされるのね…


 と、少し温かい気持ちになった。










───とある屋敷の離れの裏庭で

「ガッシャン! ガシャン!」と何かが割れる音が鳴り響く。


 けたたましい音が繰り返される。


 庭の一角には、ガラスの欠片が飛び散り、ガラス屑の山が出来ていた。



 その、一欠片を手に取ると、軽く握る。赤い血が手から滴り落ちる…


 その血を、薄いピンクの唇にあて、

 ペロリと舐める。


「やっと。やっとだ…

やっとここまで来た。母上」


 小さな声で呟く。





───「私から全てを奪ったように、今度は、()()が全てを失う番だ」


 再度小声でつぶやきながら、近くにいた子猫を抱き、撫でた。




「面白ければブックマーク、評価をして頂けると作者は泣いて喜びます。よろしくお願いします」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ