31 暗い夜道は気をつけて
【第一章完結】です。
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ダンスの後、お父様に連れられ、会場内を挨拶に周る。
その際、貴族家当主と、御子息達には、熱い眼差しと溜息、感嘆の声を向けられ「息子の嫁に」と多く言われたが、得意の営業スマイルで乗り切った。
一方、貴族家当主と、そのご令嬢の方々には、上から下まで、値踏みするような視線を向けられたが、筆頭公爵家のお父様と一緒の、私に何か特に言う者は、今日のところは居なかった。
概ね「うちの娘と友達になってくれ」と言われ「公爵家の権力」に預かりたい者が殆どだった。
何人かには「淑女ともあろう方が市井で商売の真似事をするなんて、はしたない」「公爵家では娘を働きに出さねば、いけないぐらいお金に困っているのか?」あからさまな嫌味をお父様に向ける者も居たが、お父様の『氷の微笑』により、事なきを得た。
一通り挨拶を終え、フラフラになりながら壁に一人向かう。お父様はまだ、友人達に捕まっている様子だ。心配そうに私を見るお父様に「大丈夫」と微笑みながら目配せする。
すると、ホールの中央に人集りが出来ていた。
視線を移すと、殿下が、ご令嬢達に囲まれていた。
フワフアのピンクブロンドで天使のような可憐な姿の令嬢や、身体のラインが、はっきり分かる豊満な肢体を顕にした妖艶な令嬢達の、黄色い声が響き、一際賑やかだ。
つい自分の、控え目な上半身を確認してしまう…
妖艶で大人の雰囲気の女性は、殿下の腕に白い手を絡めながら身体を近づける。ほんの一瞬だけ、私と目が合うと、女性は目線だけを殿下にゆっくり移し、僅かに口の端を少し上げ妖しく微笑む。
なんとなく自然に私は俯く。
「エレナ」と声がし、再び顔を上げると、殿下がこちらに向かって来ようとしていた。
思わず私は走り去ってしまった。
───ここは何処?
辺りは真っ暗で、誰も居ない。
え!どうしましょう。まだお城の敷地から外には出ていないようだけれど……
城の周りを警護する騎士の姿は無く、夜のしじまに、虫の音だけが小さく震う。
「困ったわ…迷子になってしまったわ」
明かりを求めて奔るが、闇夜に震え膝をついてしまった時、
「お手をどうぞ」と声がする。
!
声がした方に振り向くと、しゃがみこみ、私の目の前に手を差し出してくれた。
急ぎ手を重ねたら「へぇ~」っと愉しげに微笑む。
恥ずかしくなり一瞬、手を離そうとした瞬間、突然抱き寄せられる。
え?
その気持ち悪さに、思わずトンと突き放すと「ごめん、ごめん。冗談だよ」と笑いながら言う。
男性は上下、真っ黒の軍服姿。何処かの国の騎士様かしら?
年は殿下より少し若い感じ?
「さっきは悪かった。今にも泣きそうな顔をしていたんで、安心させたいと思って。ごめんね」
優しく微笑む。
誰かに似ている? でも誰だろう?
柔らかく心地よい声で「このまま真っ直ぐ50メートル程歩くと、噴水がある。そこを右に曲がると、城が見えるはずだよ。その辺まで行けば警護の騎士がいるはずだから」
「僕は、ここで待ち合わせをしていてねぇ。残念だけど、君を連れていってあげることができないんだ。ごめんね。」ニコッと笑う。
何処かアンニュイな雰囲気を持った男性は、私のドレスについた、泥を軽く払ってくれて「大丈夫?歩けそう?」と言いながら、再び手を差し伸べる。
「先程はごめんなさい。助けて頂いたのに。暗くて突然だったからビックリして…」小声で言う
「ごめん。ごめん。僕もビックリさせてしまったね」優しく微笑む。
再度お礼を言って「ごめんなさい。お父様が心配していらしゃると思うので、私はこれで…」
「本当にありがとうございました」深く頭を下げた後、
「おやすみなさい」別れの挨拶をする。
男性は、微笑みながら手を振る。
───「おやすみなさい。エレナ嬢」「僕のお姫様」
闇夜に誰にも聞き取れない程の小さな声が落ちた…
【次回から第二章】に突入です。王宮を駆け巡る、陰謀と愛憎のスペクタルの予感…
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