30 デビュタント
先日、誕生日を迎えついに15歳! 成人となりました。
この世界に来て、早5年。ここ最近では、念願の自分の店も持つことが出来、前の世界に比べたら、その充実ぶりは著しい。
本当に、みんなに感謝の気持ちしかない。
こんな私にいつも優しくしてくれて、アラサー独女にもかかわらず受け入れてくれて……
一人ベッドの上で感慨に耽っていると……
「お嬢様ーー!」とバタバタと足音が。 もうこの光景にも慣れて来た。
侍女レンジャー登場!だ。
ただし最近、編隊に変化が現れた。青レンジャーのアンが抜け、新たに侍女見習いとして2ヶ月程前から、うちで働きだしたジニーが後任となった。
アンは100円ショップ『トレ・ゾール』の店長に就任したのだ。
そして、馬屋のトムは、『トレ・ゾール』の用心棒兼、荷物運び兼、倉庫管理、内職さんの仲介役など、ようするに雑用係だ。女ばかりの店だと、無用心なのと、大きな荷物の運搬には男手があったほうが助かるので、トムにお願いした。
彼は持ち前の人懐っこさと、何でもこなす器用な性格で、みんなに信頼されていた。そしてなんと、初代パート従業員のうちの一人の、フィニーとお付き合いしているらしい。アン情報だ。
そして、今日は私の成人式とも言える「社交界デビュー」の日だ。
朝から侍女レンジャーに揉みくちゃにされている。
今日は立食パーティーなので、お腹の虫の心配はない。
実は、初めての王宮料理人の料理に楽しみでワクワクしている。
「お嬢様、大変お美しいですわ。とてもよくお似合いです」「本当に素晴らしいドレスでござますね」「宝石もとても良く似合っていますわ。どこを取っても立派な淑女です!」赤レンジャーメラニーは涙ぐむ。
先日の誕生日に王太子殿下から突然ドレスの贈り物が届いたのだ。
王族からの贈り物を送り返すわけにもいかず、恐縮しながらも受け取った。
その紺碧色のドレスは、金の繊細な刺繍が丁寧に施されていて、真珠を散りばめた豪華だけど清楚なドレスだ。歩く度にキラキラと光る。深い海のような色のサファイヤのネックレスとイヤリングも殿下から一緒に贈られて来た。
店でお会いした際にお礼を言うと「気にしないで。何なら毎月でも贈るよ?」と訳のわからないことを言われた。やめて下さい。心臓に悪いですから……丁重にお断りした。
残念そうにシュンとした殿下の顔が、仔犬のようだったことは内緒だ。
お父様にエスコートされて、久々の王宮だ。
今日は、大ホールの扉の前で案内を待つ。爵位の低い子女から順に名前を呼ばれる為、臣下としては最高位の私は最後の入場となる。
「クロフォード公爵ご息女、エレナ・フォン・クロフォード令嬢と、アルデ・フォン・クロフォード公爵の入場です」案内役の声が響き渡る。
ゆっくりとカーテシーを終え姿勢を正すと、会場のあちらこちらで溜息や、感嘆の声が漏れる。
無事お父様とダンスを終えると、会場から大きな溜息と、盛大な拍手で迎えられた。ひと安心だ。
その後も、次々と貴族家の子息からダンスの申し込みが続いたが、特上の営業スマイルで丁寧にお断りし続けた。後ろに控る、迫力美丈夫の、氷のような無表情の笑顔により、皆そそくさと去っていった。
キ〇チョー〇も真っ青の虫除け効果だ。
暫くすると、会場の音楽が止まり静寂が広がる。
国王夫妻と、王太子殿下が入場してきた。今日の殿下は、白に金糸の刺繍を施し、胸には数多くの勲章を携え、背中に鷲と剣の刺繍が施された白く長いマント、ゴールデン・イーグルの正装姿だ。
自然とバラの花が背景に浮かぶ。
「素敵~」「美しすぎる」と黄色い声が、そこら中から聞こえ、中には「神様の降臨だわ」と手を合わせる者もいた。「キャー」っと失神する令嬢も数名見られた。
わかります。わかりますよ。あのキラキラビームで攻撃されたら、ローマ軍も、太平洋艦隊も瞬殺だったはず。
最近は、その攻撃に慣れつつな私でも、今日の殿下を見ると、あまりにもの眩しさに目がくらみそうになる。
国王陛下御一行が席に着くと再び音楽が鳴り始めた。
すると殿下がゆっくりと、ホールに向かって歩き出し、私の方へ向かって来る。
「レディ、私と一曲お願いします」片膝をつき、手を差し出される。
会場中から、どよめきの声と刺さるような視線が一気に私に集中した。
お父様の顔を見上げると、にっこり微笑んでいる。
恐る恐る殿下の手に自分の手をゆっくり重ねると、そっと触れるか触れないかギリギリで殿下のピンク色の唇が落とされる。
その瞬間再び、どよめきの声と、多くの溜息と、「キャー」っと黄色い声が響きわたる。
直立不動で硬直した私に、再び優しく慈しみの目線を向け、少しだけギュッと力を入れられた手で握られる。
殿下のエスコートでホールの真ん中へ。
頭の中が真っ白になり、音楽が止まり無になる。
殿下の右手が私の腰に回された瞬間、背筋が伸び、握った手に思わず力が入ってしまうのを感じると、甘い優しい声で「僕に任せて」今日一番のとろけるような笑顔で言われ、自然と頬が赤く染まる。
緊張のあまり、息をするのも忘れそうになりながらも、殿下の足を踏まないようにだけ集中し、なんとか一曲踊り終えたが、まったくその時間の記憶がない。
割れんばかりの最大な拍手の音で、我に返り、お辞儀をするのが、やっとだった。
───エレナのHPは残りわずかです。
脳内にテロップが流れた。
あぁ。短い人生ありがとう…
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