20 100円ショップ(3)
紹介して頂いた酒屋は、立地条件も良く、とても良い物件だった。
建物自体は老朽化していたが、改築すれば問題ないと判断し、早速購入手続きを行った。
『エレガンス』の売上により、資金はそこそこあったのだが、お父様が「どうしても、土地と建物は私にプレゼントしたい!」と譲らなかった為、今回は甘えることにした。
『エレガンス』で、得た資金は、軌道に乗るまでの運転資金や、改築費用に回すことになった。
正直、そこそこの資金はあったが、全面改築となれば、かなりの額になるため、お父様の申し出は有難かった。
「お父様、大好き!」私が抱きつくと、優しく頭を撫でてくれた。
本当に良い夫婦の元に転生出来て良かった! 心から神様に感謝し合掌する。
「エレナ、どこか悪いのか?」心配そうな目で私を見つめる。
「いえ。違うの。本当に実現するのね……と思うと胸がいっぱいになって…」と言うと
お父様は、再び優しく私の頭を撫でながら「お嫁に出した気分だ……」淋しそうで、そして消え入りそうな声で言った。
こんなアラサー独女を大切に想ってくれるお父様に感謝しつつ、本当のことを言えず騙していることに罪悪感が溢れてきた……。
「お父様長生きして下さいね」
私が微笑んで言うと
一瞬、ちょっと不思議そうな顔をしながら
「私はずっとエレナの側にいるよ。心配しなくて大丈夫だからね。何ならお嫁に行かずに、ずっとお家にいても構わないんだよ?」
慈愛に満ち溢れた優しい笑顔で言う。
「お父様大好き!」再び私が抱きつくと「エレナは本当に可愛い子だねぇ」目を細めながらお父様が言う。
何となく微妙な空気が漂ったのを感じ、我に返ると……
ハッ! しまった! 二人っきりじゃなかった!
執事のセバスチャンことセバスと、改築や内装でお世話になる予定の大工の棟梁や、契約の手続きを担当してくれる管財人も居たことを、すっかり忘れていた!
私は恥ずかしくなり、頬に手をあてながら、モジモジしていると、みんな、慈しみの眼差しで私とお父様を見つめてくれる。
───嗚呼!これよ! コレ!
「決して贅沢でなくても良い。小さな幸せ」
私が前の世界で、切望し、焦がれ、夢にまで見た憧れの世界───
アラサー独女を隠し、前の世界の近代文明の知識により、ズルして活躍して、周りに褒められ、チヤホヤされている現状に、後ろめたさと、罪悪感で押しつぶされそうになることもあったが
「私がこの世界に来たことにはきっと意味がある」再度、強く決心したのである。
───絶対にこの人達を、私は幸せにする!
そして私も「平凡で安定した生活」をつかみとるわ!
両手拳に力が自然と入っていた…
そんな私の姿に、お父様をはじめとした『ファンクラブ・エレナ』の会員様達は、小首を傾げたり、目を細めたり、と三者三様だった。
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