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10 王宮に行こう!

『エレガンス』が発売されて2ヶ月になる。


 ───まさかこんなことになるなんて……


 発売初日から連日、王都のマクレガー商会の雑貨屋には長蛇の列が。皆「ハンドクリーム」を3個、4個と手に持っている。その姿を遠くから私は見て、少し恥ずかしい気持ちと、嬉しい気持ちで妙な気分だった。


 そんな日が続いていたある日、突然お父様が、焦ったような顔をして小走りに私のところへやってきた。


 お父様が走るなんて!エレナの父アルデは典型的な紳士で、焦ったり、心配事があっても普段態度や表情に出ることは滅多にない。


「エレナ!居るかい?」

 普段のお父様とは別人のように、大きな声で私を呼んでいる。緊急事態?! と思い、私も急ぎお父様の声がする方に向かう。


「エレナ。大変なことになった! 実はお前の開発した「ハンドクリーム」が王妃様の耳に入って、是非とも使用したい!発案者のお前に是非会いたい!と、仰せである」


 え? 王妃様?


(一応はいらっしゃることぐらいは知っている。ただ、元の世界のようにテレビ中継などなく、国王夫妻を目にすることは滅多にない。ましてやデビュタント前の未成年の娘が、王族の顔を見る機会などはない。公爵令嬢と言っても未成年者が王城に上がることは許されていない)



「え? お父様、でも私は……」

 小さな声で言う。


 青い顔をしたお父様がゆっくりとした口調で

「3日後だ」普段よりも低い声で言う。



 王族からの呼び出しに断ることなんて出来ず、クロフォード公爵家は盆と正月がいっぺんに来たような忙しさだった。


 あっという間の3日間だったが、流石は筆頭公爵家である。急ぎ私のドレスを新調し、私の為の「謁見マナー教室」が連日開催された。



 当日の朝は、侍女長のメラニーを筆頭に、ルーシー、アンの3人かがりで準備された。


「お嬢様、とてもお綺麗でありますわ」

 三人が口々に褒めてくれる。


 金髪の髪はハーフアップに結われ、瞳と同じ色の薄い紫のシフォンを重ねたドレスと、瞳と同じ色のアメジストのネックスレスに揃いのイヤリング。


 うん。孫にも衣装! いやこの場合、侍女部隊の特殊メイクのおかげだろう。自分で言うのも何だが、シンデレラもびっくりの令嬢姿である。


 コルセットきつい………ヒール高いし………


 朝からソワソワしているお父様と違って、元はアラサーの私。夫の借金や浮気に癌宣告。

 数々の修羅場を潜って来た私としては「初めてのリアルお城」にちょっと興味がある。


 元いた世界では世界史にも興味があり、西洋の古城や教会、有名な〇ーブル美術館にも、一度は行って見たいと思っていた。



 お父様には申し訳ないけど、ちょっとワクワクしている自分に気づく。


 王宮までは馬車に乗って行く。

「初めての王宮見学だぁ!」

 もう少しで口から出そうになったが、間一髪のところでとどまった。









「最後までお読みいただき、ありがとうございます」

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