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蜘蛛VS蜘蛛

「次は私の番ね」


「おい、アナベル。言っておくが魔法はダメだからな」


 意気揚々と名乗りを上げた妖怪魔法少女。魔法少女と宣うからには、当然ながら魔法が得意なのであって、格闘術には長けていないはずだ。蜘蛛の歩脚を駆使したとしても、接近戦特化のハガタの敵ではないだろう。


「………………ダメ…、なんですか?」


「ダメだ。周囲に被害が及ぶ。モチョロンは拳で勝ち取れ」


「魔法の糸は、アリなんですよね?」


 よほどモチョロンが欲しいのか、しつこく食い下がるアナベル。魔法の糸って何だよ。よく分からんが、まあ糸ならいいだろう………。


「いいだろう。その代わりハガタには槍を許す。スズ、こいつらが大怪我しそうになったらしっかり止めてくれよ」


「よかろ」



 よし。試合開始だ。

 ハガタが適度な間合いを確保しつつ、槍を構える。しかし見事な槍だな。年代物なのだろうが、素人の俺にも相当な業物であるのが見て取れる。妖しい輝きを放つ謎の金属の地肌は、夕陽を虹色に反射しながら、その強度と鋭さを誇示している。何百年も使い込まれた割には、まるで劣化を感じさせない。

 地球の現代技術で本気を出せば、あれを凌ぐ槍が作れるのかもしれないが、あの星は武器としての刃物にそこまで気合を入れない。戦場で槍を振るうなんて事は、未来永劫ありえないからだ。


「大した槍だな………」


「そうですね。意匠からして古シンバリの槍かもしれません」


 ザック君が、細い目をさらに細くして呟く。その線みたいな目でよく見えるな。


「ハルオミ銘の槍である可能性が高いです。直に手に取って観察してみないと断言できませんが、いずれにせよ素晴らしい槍である事に間違いありませんね。譲って頂きたいくらいです………」


「名槍か………。で、どっちが勝つと思う?」


「レベルはアナベル様の方が高い。しかし、仙鬼のスキルが気になります。新たに覚醒したと思われる<超硬金属骨格(アダマンタイト)>の性能によりますが……。その熟練度も考慮すると、やはりアナベル様か……。お、仙鬼が動きます」


 妙な動きだ。

 ハガタは移動せず、その場に留まったままで忙しなく槍を振るっている。

 縦横無尽に飛び回る、いつもの戦闘スタイルと違うせいで違和感が……。

 …止まった。

 最後に槍を振った位置で、ハガタの動きが完全に静止する。まるで時を止められたかのように、不自然なポーズで固まったまま動かない。


「おい、魔法は禁…」


「そこまで! 勝者アナベル!」


 魔法は禁止だと言いかけた所でスズのジャッジが入る。何? どうなったんだ?


「なるほど。糸ですか………。おそらく魔法で見えなくした糸で雁字搦めにしたんでしょう」


 えええ? そんな事あるぅ? ちょっとずるくないかそれ………。


「超硬度の不可視の糸を絡めたまでですが。つまらない勝負にしてしまいましたね、ごめんあそばせ」


「オイラは悔しい!」


 ハガタが地団駄を踏んでいる。分かるぞその気持ち。なんか腹立つよな。

 (うやうや)しくスズからモチョロンを受け取ると、お上品な手つきでちゅうちゅう吸い始めるアナベル。いくらお上品に吸ったところで、それ肛門だからな………。


「あら。おいしい…」


 イケるクチかよ。逞しいな……、妖怪魔法少女。



「ようしっ! 次は俺に挑戦させてくれ!」


 やけに男らしい声が響く。え? 嘘でしょ? ベムラー君がやるの? 無理無理無理無理。その男気は買うけど、さすがに生身の人間じゃ相手にならないよ。


『オラたちだ!』


「そう。俺たちだ!」


 なんだなんだ? 俺たち? よく見ればベムラー君がその肩に、半透明に透けて見える子供を乗せている。可愛らしい男の子だ。

 んんん? 人間じゃ……ないよな。あの子供、あんな魔物見たことがないぞ…。


「土蜘蛛ですね」


 うおっ、びっくりした! コトか。

 背後から唐突に現れた美少女に驚く。ふむ……。土蜘蛛。確かあのロックな蜘蛛だよね。


「ビジュアル違うくね?」


「精霊体なので。何故ひとり歩きしてるのか分かりませんが、あれが土蜘蛛の中身です」


 中身………………。


「……そう言えば妖怪だって言ってたね」


「嫌な予感がします。あの子の事ですから、絡新婦を羨ましがって、あの男に憑依するつもりかもしれません………」


 はぁ…。人間との合体ブームか? あまり歓迎できない流行だな。ベムラー君も何を考えているのか…。

 肩に乗せていた土蜘蛛をそっと地面に降ろし、彼の耳元で何かを囁いている。

 作戦会議か? 土蜘蛛が素直そうな顔で肯く。その背後でベムラー君がナイフを抜き、兵士らしく腰を落とした姿勢で叫ぶ。


「胸を借りますアナベル様! 二対一で挑戦する事をお許しください!」


「私も似たようなものですからね。構いませんが、合体はしませんの?」


『妖の魔女如き、オラひとりで十分だ! この人間はおまけだ!』


「コラ、おまけとか言うんじゃない。さ、気合入れていくぞ!」


 なんか仲良さそうだな……。人間と魔物って、一見いがみ合ってはいるものの、お互い素直になれば案外うまくやってけるんじゃないのか?

 ほんのり淡い未来への希望を抱きつつ、お決まりの質問をザック君にしてみる。


「どっちが勝つと思う…?」


「アナベル様が負けるかも…。あの子供………、レベルが330もあります」


修正が完了いたしました。

この度は申し訳ありませんでしたm(__)m

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