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04

 昨日のことを思い返していると、部屋が勢いよく開けられた。



「アマリア!昨日のアレはどういうつもりなの!納得のできる説明をなさい!」



 そう声を荒らげて、血相を変えて飛び込んできたのは母であった。

 外聞を何よりも気にする母は、例え家の中であっても貴婦人であろうとする。というか実際、母は妹と婚約者の所業を聞いても表情すら変えず、「結婚してくれるというなら見なかったことにしろ」と私に言ったのだ。


 だから、母がこんなにもあっさりと取り乱した姿を見せるのは意外であった。ちょっと悔しい反面、少しだけ溜飲が下がったのも事実だ。



「おはようございます、お母様。ええと、昨日のアレ、とはいったい何のことでしょうか」



 鋭い痛みを訴えてくる頭を無視して、不思議そうな顔を作る。そんな私にイラだつ母の顔に、思わず笑みを浮かべそうになるのをこめかみを押さえるふりして隠す。



「言い逃れをするつもり!?貴女、昨日のパーティーで醜態を晒したことを忘れたわけじゃないでしょうね!」

「醜態、ですか。私は少々お酒をたしなんだ記憶しかないのですが」



 実際は何杯も飲んだが、私は嘘をついてない。何しろ昨晩、あろうことか帰りの馬車で寝落ちてしまったのだ。そのため、イルヴィスが我が家でどんな風に話をしたのかまったく分からない。

 あまり“計画”から乖離した行動を取るとは思わないが、細かい話でボロが出てしまってはまずい。



「少しだけ、ですって!?ふざけないでちょうだい!あんな姿になって……」

「ごめんなさい、本当に覚えてないんです」

「覚えてないというのなら教えてあげます!貴女は、ウィリアムという婚約者がありながら一人でパーティーに行ったのよ!」



 何が楽しくて妹と寝た婚約者とパーティーに行かなくてはならないのか。

 そもそも昨日のパーティーへの参加は現実逃避もある。私一人だから目立たず隅で酒を飲めたが、婚約者なんて連れて行ったら格好の的になっているだろう。まだ噂は広まっていないようだが、社交界はスキャンダルに敏感である。



「はしたなく何杯もワインを飲んで倒れるなんて、本当になんて恥知らずなのかしら!しかもそれだけに飽き足らず、公爵様の手を煩わせるなんて!」

「_____え?」



 頭痛で聞き間違えたのだろうか。今、母の口からとんでもない言葉が出たような気がする。



「貴女には婚約者がいるのよ!?それなのに公爵様を誘惑するなんてありえないわ!ああ、せっかくウィリアムがこのまま貴女と結婚するって言ってくれているのに、貴女はこんな時期に他の男と懇意にするなんて……あの女嫌いと有名な公爵様が貴女なんて相手にするわけないじゃない!」



 母のヒステリーは止まらない。

 じゃあ妹がその姉の婚約者と寝るのはいいんだとか、なんで私が誘惑したと決めつけるのとか、いろいろ言いたいのに思考がまとまらない。



(こうしゃく……公爵?あの公爵様?)



 この国に公爵は四人いるが、一人を除いたらみんな家庭を持っている中年男性か女性ばかりだ。しかも母は、「女嫌いと有名な」と言っていなかったか。



(女嫌いの公爵で、まだ結婚していない。……間違いないわ)



 婚約者に盲目だった私でも知ってる有名人だ。

 でも、なぜそんな人物が出てくるのだろうか。意識がある間に関わった覚えはないので、可能性があるなら私が寝落ちたあとしかない。


 だが、私が寝落ちたのは馬車の中だ。

 公爵なら他所の馬車を止めることもできようが、面識がない私を連れて帰るだけのためにそんなことするとは思えない。でも母が嘘をつく可能性はもっとない。



 ……面識がない?

 そういえば、公爵の名前は_____。



「ウィリアムが貴女と結婚しなかったらこの家はなくなってしまうのよ!?」



 勢いよく揺さぶられて、吐き気に襲われる。思考が中断し、母の手を振り払って頭痛が止まるのを待つ。

 もう少しで何か思い出せそうだったのに、邪魔をされてしまった。



「アマリア!貴方、どういうつも、」

「奥様!公爵様がお見えです!」


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