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朝起きて目を開けるとカーテンの隙間から入る朝日と共に銀色のサラサラとした髪が目に入る。
今日は私の方が目覚めるのが早かったみたいだ。まだアルフォンスは目を閉じている。
アルフォンスの腕がレーツェルを抱き包んでいるため、彼が目覚めるまで動けない。
動くと間違いなく起きてしまうだろう。そのことがわかっているため、レーツェルは先に目が覚めても、動かずにこの時間を楽しんでいる。
閉じられている瞼を
(睫毛、綺麗で長いな)
と思いながら眺めている。触りたい衝動をグッとこらえて、アルフォンスの端正な顔を見ている。
しかし今日はかなりレーツェルが早起きだったみたいだ。ここまでゆっくり眺めていられるのも珍しい。
(私ったら、よっぽど今日のお出かけが楽しみで目が覚めてしまったみたいね)
と、一人で苦笑していると、アルフォンスの目が開いて綺麗な濃紫色の瞳が見えた。
「………ん?レーツェル…?おはよう」
「おはようございます、アル」
と少し上に動いて、軽く口と口を合わせてみた。
アルフォンスの目が大きく見開く。
初めて自分からしたので、胸がはちきれんばかりにドキドキしている。
さり気なくしたつもりなんだけれども。
「…………レーツェル」
「はい?」
返事が終わるか終わらないかの所で、ガバッとアルフォンスの胸に抱き寄せられた。
「あ、アル?」
「………ねぇ、レーツェル、も一回」
して?と胸板に押し付けられていた頬をアルフォンスの両手が優しく包み、彼の顔の近くまで引き寄せられている。
改めて言われると顔が真っ赤になるのがわかる。
「………っん」
「ねぇ、お願い」
仕方ない、覚悟を決めて。先程と同じようにちょっと首を伸ばして、軽くキスをする。
「……おはようございます、アル。目は覚めましたか…」
天使のような最高級の微笑みで
「おはようレーツェル。一瞬で覚めたよ」
と、もう一度ギュッと抱きしめられた。
心地よいこともあって、そのまま、されるがままに抱かれていると
「毎日よろしくね、レーツェル」
「…え!?」
私が驚いて固まっていると、アルフォンスは起き上がり
「朝から嬉しいよ、レーツェル」
と、ウキウキな顔をしてアルフォンスが上からかぶさってきた。
そして私がした軽く口と口を合わせただけのキスとは違い、長くて深い口づけが降りそそいでくる。
レーツェルの息が荒くなった頃、やっと離れていく。
「……こんなキスで起こしてくれてもいいからね」
と満面の笑みで言ってくるが、レーツェルは
「……む、りです…」
と答えるのが精一杯だった。
よっと言いながらベッドから下りたアルフォンスはカーテンを開けて、まだ少しぼんやりしていたレーツェルを嬉しそうに横抱きにしてリビングに向かう。
レーツェルはもう諦めていた。大人しくされるがままに運ばれる。
リビングの定位置の椅子に下ろされるともうすでに朝食の準備が整っていた。アルフォンスが
「おはよう二人共」
と声をかけると
「「おはようございます」」
と、返ってくる。レーツェルも
「おはよう、エルゼ、レミリア。ごめんなさい、最近準備手伝えなくて」
「いいんですよレーツェル様。元々そんな量ではありませんし、身体休めてくださいね」
そうエルゼが言ってくれるとレミリアも
「そうですよ、元々そのための私ですから、休める時に休んでくださいね」
レミリアも同調してくれる。
ありがとうと伝え、四人で朝食をいただく。
食べ終わり片付けて、さて着替えて、と思ったらエルゼとレミリアが
「アルフォンス様、今日ってレーツェル様の髪形どうなさいます?下ろされます?結ばれますか?」
聞かれたアルフォンスも?な顔をしながら、
「そうだな、全部下ろしていくのもいいけど、二つにわけて三つ編みとか?」
どうかした?と聞くと
「いえ、レーツェル様の今日着ていかれる服をどちらにしようか、とレミリアと悩んでおりまして。結ぶのでしたら背中の部分がかわいいものにしようかと」
「じゃあそっちで。それに合わせた髪形にするよ」
――――私の意見は無しですか?
まあおまかせした方が絶対いいのはわかってますけどね。
じゃあレーツェル様こちらへ、とレミリアに案内されて衣装部屋に向かう。行ってらっしゃいとアルフォンスが軽く手を振っているのが見える。
衣装部屋に入ると確かに二着壁にかかっているのが目に入った。どっちも紫色が基調なのは一緒だ。流石のチョイスである。
では、と二人に手伝ってもらって着替える。
膝下ぐらいまでの濃紫色のスカートと白色のブラウス。そしてスカートと同じ色のベスト。
確かに背中の部分に銀色のリボンが編み込まれている。
「スカート、短くない?」
と私が二人に聞くと
「大丈夫ですよ。街ではこれくらいが普通です。ブーツも履きますし」
「そうです。私としてはもう少し短くしてレーツェル様の綺麗な足を見せたいくらいですが、それはアルフォンス様が許してはくれないと思いますので」
諦めました、とレミリアが言う。
ブーツを履いて、立ち上がって確認して。
もちろん左足の太ももあたりに短剣三本セットされたベルトをして。
「はい、こちらは完了ですね。あとは帽子を準備してありますので」
髪形を整えたら、と。
リビングに移動するとアルフォンスもいつもより簡単な格好に着替えていた。
入ってきた私を見て、にっこり笑って
「うん、可愛い」
ボッと顔が赤く、熱くなるのがわかる。まだ慣れない。
「エルゼとレミリアもありがとう、バッチリだね」
「お気に召して頂いて良かったです」
じゃあこれなら髪形は、と言いながら、椅子に座るように促される。大人しく座る。
「帽子あるんだよね?」
エルゼに確認する。
「はい、こちらをと思って準備してあります」
と、エルゼが白色でつばの広い帽子を手にしている。
「了解。じゃあ上の方は何もしない方がいいね」
と、櫛で髪を梳きながら答えている。
黒髪を真ん中で分けて、肩から前に流してゆるく三つ編みにしていく。両サイドから前に全て持ってきてるので、確かに背中のベストについている編み込んであるリボンが全部見えるようになっている。
ササッと結んで整えてくれた。流石である。魔法は使ってないはずなのに、レーツェルから見たら魔法のようにしか見えない。
「はい、完了。これでどう?」
と鏡を見せてくれた。
「ありがとうございます」
「流石ですね、アルフォンス様」
「本当に。バッチリだと思います」
エルゼとレミリアも大絶賛だ。
「じゃあ行こうか」
アルフォンスが手を差し伸べてくる。その手を取り
「はい、よろしくお願いいたします」
微笑みあって確認する。
帽子をかぶり、じゃあ行ってきます!と二人に挨拶して、アルフォンスと共に王城から街に向かう出口へと歩き出した。
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