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 馬車が王宮に着いて扉が開いた。迎えに来てくれた男性、王弟殿下の侍従の方(テオ様と言うらしい)が開けてくれたようだ。

「どうぞ、ストリア嬢」

 声を掛けられたので持ってきたカバンを手にして馬車から降りる。エスコートも流石である。


 デビュタントの時に一度だけ訪れた事がある王宮に圧倒される。


 本当に来て良かったんだろうか、やっぱり私なんか場違いじゃないだろうか、と思っているとテオ様が


「こちらです、ストリア嬢」

 と案内してくれた。

「あ、よろしければレーアと」

「では。レーア嬢、こちらへ」

 カバンも持ってくれると言う。やっぱり大丈夫なんだろうか、と考えていると


「そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ。今から行く所は王宮の中ではなく、離れになります。殆ど人に会いませんから。会えないと言った方が正しいかもしれませんが」

 と。


 確かに歩いていてもあまり人気がない。王宮ってもっと人がいっぱいいると思っていた。


「あちら側に行くとかなりの人が働いていますので、かなりの人とすれ違うのですが」

 と、一本向こうの廊下を指さしている。

「こちら側は離れに向かう廊下でして。離れには許可のない者は入れませんので、ほぼこんな状態ですね」

 歩きながら説明してくれた。


 庭に出ると素晴らしい花々が咲き乱れている。ここも人がいない。


「こちらも奥庭となりますので、あまりというか殆ど人はいませんので」


 その庭を抜けると建物が見えてきた。二階建てのようだが、微妙に違うか?と思って見ていると、何か膜?壁?のような紫色のモノが見える。


 何?あれ?通れるのかしら、と思って一瞬立ち止まるとテオ様が


「もしかして、防御壁視えてます?」

「え?あの紫色の……」

 見えてはいけないものだったのかしら……。

「凄いですね、流石です」

「あれは、何なんでしょうか?」

 危ないものですか?と恐る恐る聞くと

「我が主アルフォンス様が離れに張り巡らせている防御壁です。あれによってアルフォンス様の許可のない者は入れませんので」

 ご安心ください、と。

「今回はレーア嬢は許可されてますのですんなり通れますが次回許可のない時に通ろうとすると弾かれると思いますのでお気をつけくださいね」

「あ、はい、わかりました」


 防御壁?と呼ばれる紫色の所を通ると、黒髪の長身の女性とその隣に銀髪のこれまた長身の男性が目に入った。






  ~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 

 王宮の馬車止めに到着したとの報告を受けて、アルフォンスと二人、奥庭からの離れの入口辺りに向かった。


「無事に来られたようで良かったですね」

「ああ、これでほぼ大丈夫だろう」


 とりあえず、レーア様を家から出すのに成功した。流石にいきなりの王弟殿下とその婚約者からのお誘いを断るには時間もなく、何の対策もできなかったであろう。アルフォンスいわく「奇襲」だ。



 アルフォンスの張った防御壁(私には見えないのでわからないが)近くで待っていると、奥庭の方から二人の影が見えた。


 テオと、間違いない、レーア様だ。


 一瞬レーア様が立ち止まった感じに見えたが、またすぐ歩き出した。



 私達の目の前までやって来た。


「ようこそいらっしゃいました、レーア様」

 と、声をかけるとレーア様は慌ててカーテシーをして

「こ、この度は申し訳ありませんでした、私のために…」

「レーア様、堅苦しい挨拶は無しで。紹介しますね、我が国の魔道士部門トップで軍副総帥のアルフォンス殿下です」

 と、アルフォンスの方に手を出して紹介すると、

「アルフォンスだ。よろしくお願いする。ストリア嬢、レーア嬢と呼ばせていただいても?」

「あ、はい。レーア・ストリアと申します。是非レーアと呼んでいただければ」


 こちらへ、と離れの建物の方へ促す。


「あ、あの他の方々は……」

「ああ、他の四人の方ですか?あれ、嘘です」

「え?」

「今日ご招待したのはレーア様だけですので。すみません、ああ言った方がいいかと思いまして、テオに頼みました」

 と、言うとレーア様はあっけに取られた顔をしていた。

「昨日、精霊から伝言を聞きまして、少しでも早い方がいいかと思いまして私とアルフォンス様で準備いたしました。絶対断れない様にお呼びすると言ったでしょう?」

 私がそう言うとアルフォンスも付け加えて

「まあ、すぐにでもお会いしたかったのは本当だからね。あとどうしてもすぐに会ってみたいと言って駆けつけた人もいるけど、堅苦しく考えないでね。あの手紙が読めた時点で何もかもが合格点だから」

「…あの手紙?」

 不思議そうな顔をしているレーア様に説明する。

「朝、テオに渡されたレーア様しか読めない手紙です」

「あ、あれ。他の誰も読めなかった手紙」

「あの手紙、レーア様しか読めないのではなくて、高度な魔力を持っている者しか読めないのです。ちなみに私達も誰も視えないレベルです」

「……え?」

「アルフォンス様曰く魔道士部門でも部隊長クラス以上のレベルにしてあるらしいので我が国で読めるのは数人、十人くらいでしょうか?ねぇアルフォンス様」

「そうだね。それを普通に読んだんだろう?凄いよね」

「………え?」


 レーア様が驚いた顔をしている間に離れに到着した。


「今日は天気もよろしいので庭に準備させていただきました。こちらへ」

 と離れの庭に案内する。

 

 エルゼ達が準備してくれて、庭に10人掛けくらいのテーブルと椅子、お菓子にお茶、果実水など色々用意してある。

 ヴァイツェン様とライラ様もすでに座っていたが、私達が来たのがわかると立ち上がってこちらに向かってきた。


「レーア様のカバンは一旦中でお預かりしますね。ご心配なさらずに。誰も触れませんので。壊れ物とかは入ってますか?」

 テオがリビングに持っていく。

「あ、よろしくお願いいたします。ケースには入れてあるので大丈夫です」

「了解いたしました。では改めて紹介させていただきますね」

 私はレーア様の隣に移動し、アルフォンス達に向き合う形になる。


「先ほども紹介させていただきましたが、アルフォンス王弟殿下。我が国の魔道士部門トップで軍の副総帥であらせられます。そしてそのお隣がヴァイツェン様と奥様のライラ様です。お二人共今は退役なされてますが、前国王時代の魔道士部門トップと部隊長をなされてました。アルフォンス殿下の師匠でもあります」

「よろしく」

「よろしくお願いしますね」

 と、二人がレーア様と握手する。

「よ、よろしくお願いいたします」


「あと本日お迎えにあがったのがアルフォンス殿下の侍従でテオと申します。この二人はエルゼとレミリア。私の大事な方々です、よろしくお願いしますね」


 お願いいたしますとお互いに挨拶を交わす。


「ここでは、王宮内や貴族の方々と違って身分とか一切関係なく、皆一緒のテーブルにつきますがよろしいですか?」

「あ、はい。全然気にしませんし寧ろその方が」

「良かったです」

 とにっこり笑って返した。


「では、レーア様そちらに座っていただいてもよろしいですか。折角準備もしたことですし、まずはお茶会から」

 しませんか?と聞くと頷いて座ってくれた。


 八人でテーブルを囲んでレミリアが入れてくれたお茶を味わう。


 しばらく他愛もない話をしてから、アルフォンスが切り出す。




「では、本日の本題に入ろうか」



 アルフォンスとヴァイツェン様が嬉しそうに話し出した―――――――







読んでいただきありがとうございます。


明日も更新予定です。

読みにきてくださると嬉しいです。


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