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前話から少し時間が戻ります。森から帰ってきて、テオがお迎えに行くまでの部分になります。


 ミナチの森から帰ってきて離れの庭に着いて、『竜化』を解いたあと、レーツェルとアルフォンスの元に一人の精霊が近づいてきた。

 離れにはアルフォンスが無駄に強い結界を張ってあって、侵入者はまず入ってこないため、精霊達もレーツェルの事は大丈夫だからと、よっぽど用事がないと入ってはこない。


 レーツェルはその子を見て気づいた。


「レーア様の!」

「ああ、お茶会の時の」

「はい」

 レーツェルが手を差し伸べてもっと近くに来るように誘導する。


 すーっと飛んできて、レーツェルの手のひらの上に来る。


「レーア様からの伝言かしら?教えてくれる?」


 精霊は頷いて、ゆっくりと話し出す。


『おふたりにあいたいです。おねがいします。このいえからでたい』


「え?」

 レーツェルは思わず声を出した。アルフォンスは真面目な顔で聞いていた。

「やっぱりか」

「え?アル、やっぱりって何か知ってるんですか?」

「少し調べさせたんだが」

 と前置きしてから

「まあ、アメリ嬢と同じ感じだな。母が違うらしい。今のストリア子爵夫人は後妻で妹の母親らしい。レーア嬢の母親は亡くなっている」

 

 なるほど。相変わらず貴族社会のモヤモヤ感がする。


「多分、レーア嬢はあの家での立場はよくないものだろうな。引きこもり、との噂だが、好きではなく無理矢理だろう。視えすぎるのだから」


 普通の魔力しか持たない者が殆どのこの世界、突出する力はその扱いによっては英雄にもなれるが、化け物にもなる。

 家族の誰も視えないものが視えるその力は、隠されてきたのだろう。


 さらにアルフォンスは続ける

「よほど隠したいのか、妹の方が大切なのかは知らんがレーア嬢に婚姻の話も出てる、というか決まったとも聞いている。ヨリナス男爵と」

「ヨリナス男爵って、もうかなり年配の方ではなかったでしたっけ?」

 レーツェルは絵姿を思い出す。

「そうだな、体のいい厄介払いか、金か」

「そんな!」

「……貴族社会の嫌な所だな、まったく」


 そんな……まだ18歳ですよねと、レーツェルが呟くとアルフォンスが


「そうだまだ18歳だが、もう18歳でもある」

 と、にっこり微笑む。ん?と思っていると


「さて、彼女の方から家を出たいと言ってくれたのであれば好都合だ。レーツェルちょっと一緒に私の執務室まで来てくれるか」

「あ、はい」

 と、エルゼに担いでいたリュックを渡しながらアルフォンスが

「エルゼ、レミリア、明日午後からここでお茶会開くがいいか?」

「お茶会…ですか?何人ほど?」

 アルフォンスは顎に手をあて考えて、

「八人くらいかな」

「それならば大丈夫かと。ではそのつもりで準備しますね」

「頼むね。じゃあレーツェル行こうか。ちょっとだけ忙しくなるからね」

「はい、わかりました」


 アルフォンスと二人、王宮に向かう。アルフォンスの執務室に入るとテオがいた。


「おかえりなさいませ、お二方」

「ただいま。テオにも手伝って欲しいんだが」

「何をです?」

「レーア嬢の家出」

「?はあ?」


 訳のわからない顔をしているテオ。はい、私もわかりません。アルフォンスは何をする気なのかしら?


 アルフォンスが執務机に座って、紙とペンを取り出す。


「明日、私とレーツェルでお茶会を開こうと思う。先日のリリエスタ公爵家のお茶会でレーツェルと親交があったご令嬢と私が会いたい、との名目で」


 ペンを走らせながらアルフォンスが話す。


「流石に王弟と竜王の誘いを断るとは思わないが、妹を押し出してくる可能性はある」

「なるほど」

「表立って出したくない娘ならなおさら、ここで私達に誘われたとなったら噂になるし、こっそり男爵に嫁がせるのもできなくなる。だから奇襲が成功するとすればこの一回きりだと思う。次回はない。この一回で連れ出してそのまま保護したい」

「え、そこまで?」

「多分、これで家に戻るとすぐにでも嫁がせて、もう構うな、というスタンスを取ってくると思うよ。それぐらいするだろう、今まで隠してきたことを思えば」

 テオも頷いている。


「よく、この前のリリエスタ公爵家に出してきましたね……妹だけでもよかったのに」


 そのおかげのようなものなのだが。


「あの時はとにかく招待した家の女性全員を、と書いたからな。レーツェルに顔見せしたいから」

 確かに全て覚えてますよ、とアピールするために頑張りましたが。

「絵姿があるのに連れて来ないと後で勘ぐられるから仕方なしに連れてきたのだとは思うがこちらとしてはラッキーだったな」


「で、どうするおつもりで?」

 テオが聞いてくる。


「明日朝一番で招待状を持って行って欲しい、午後からまた迎えに行くと。その間に持ち出したい物を準備させたいのだが……どう伝えるか」

「父親や妹に見られないように伝えたいですよね、バレたら阻止してくるでしょうから。どうしましょうか。精霊達にお願いしてもそこまでの細かい事は無理でしょうし…」

 精霊主クラスならいけるだろうが。考えているとテオが


「アルフォンス様の魔法でどうにかなりませんか?手紙に魔法かけてレーア嬢以外見られないようにするとか」

「……なるほど。その手があったか。ついでに魔力も測るか」

「?」

 不思議な顔をしているとアルフォンスが

「レーア嬢以外見られない手紙、ではなくて、魔力が高くないと読めない手紙を書けばいいんだろう?」

「なるほど。でもレーア嬢も読めなかったらどうします?そこまでの魔力がなかったら」

 テオが尋ねる。

「まあ精霊が視える時点で高いとは思うが。普通のも持っていって、テオの目の前で開けさせて、もし、読めなかったら普通の渡せばいいか。それはまず無いとは思うし、そうなったら部屋で読むように言うしかないか」


 まあそれはないと思うが。念には念を入れて、だ。


「あと、色々父親が会わさないように、断りを入れてくるとは思うがことごとく潰せよ、お前にかかっているからな、テオ」

「……がんばります。どんな感じできますかね?」


 アルフォンスが考える。私も考える。


「ドレスがない…とか?」

「そうだな、そんな感じできそうだな、体調がとか」

「ドレスについては気にしないで、そのままで、こちらで準備しますから、でいいですかね?」

 テオが確認する。

「そうだな、体調については……尚更来たらこちらで治すとでも」

 他に考えつく断りをいくつか言い合い潰して行く。


「ああ、あとテオ、絵姿見ていけよ、まあ十中八九、妹をレーア嬢として出してくるだろうから」

「わかりました。レーツェル様、二人は似てますか?」

「いえ、全然。レーア様は薄い金髪に薄い紫色の瞳ですし、妹は明るい金髪の青い眼でした」

 流石にわかるだろう、とは思うが会ったことのないテオなら騙せると思うかもしれない。

「了解しました。絵姿は確認していきます」


 アルフォンスが手紙と招待状を仕上げる。手紙の方は本当にただの白い紙にしか見えない。


「何て書いてあるんですか?」

 レーツェルが尋ねると

「このまま、こちらでその身を保護したい、これからの事は心配しなくていい。魔力に関しても全て任せて欲しいと。どうしても持ち出したい物、残して行きたくない物を準備して持って来てほしい。衣食住に関しては準備するから心配はいらない。家には戻れないと思ってほしい、その覚悟があるなら午後の迎えまでに準備を、と書いた」

 これでいいか?と聞いてきたので

「はい、大丈夫だと思います。ちなみにどのくらいの魔力量だと読めるんですか?」

「んー部隊長クラスかな?大丈夫でしょ」

 簡単に言ってはいるが、そのクラスって軍でも数人しかいないんじゃないですか?

「でも、家に帰らないとなると父親がうるさくありませんか?」

 とレーツェルは疑問も聞いてみた。

「そこで18歳がと言う事が生きてくる。成人してるんだから、本人の意思で出たんだから大丈夫。それに王宮で働くようになるんだ、反対する親がおかしいとみなされる」

 と、にっこり微笑む。なるほど。



「ああそうだ、ヴァイツェンにも来てもらおうと思ってたんだ。たまにはこっちまで来てもらおうか」

「来てくれますかね?」

 テオが聞くと

「訳を話せば飛んでくると思うよ。ライラにも来てもらおうか」

 と笑っている。

「ちょっと連絡してみるか」

 と、言って目を瞑った。しばらくすると


「明日午後一時に来る、とライラも一緒に。そのまま離れに行くように伝えたからレーツェル頼むね。エルゼ達にも言っておこう。これで八人だな」


 そういえばエルゼに八人ぐらいと言っていた。なるほど。


「よし、じゃあ明日の時間を作るために少しでも仕事を片付けるか。レーツェルも手伝って」

「はい、わかりました」

 

 仕事を片付けながら、夕方には離れに戻り、明日の準備をしつつ、慌ただしく一日が過ぎていった。



 次の日朝、テオがストリア子爵家に向かい、一度帰ってきた時に手紙が読めたと聞き、アルフォンスが魔法伝達でヴァイツェン様に報告すると、約束の時間より速く、凄く楽しそうにヴァイツェン様とライラ様が離れにやってきた。


 そして二度目のストリア子爵家から帰ってきた馬車が王宮に着いた。





本日も無事に更新完了しました。

明日も更新予定です。

読んでいただけると嬉しいです!


もしよろしければ評価、ブックマークポイント、お願いいたします。

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