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前話後半部分のアルフォンス側、アルフォンス視点の話になります。
朝、レーツェルの髪の毛をセットして、自分の準備もして、彼女にハグをして王宮に向かう。
自分の執務室に入るとすでにテオがいた。
「おはようございます」
「おはよう、テオ。さっそくで悪いがベル兄上に、陛下に時間を貰えるよう調整してくれないか?レーツェルの事で話しておきたいことがあると言って欲しい」
一瞬、動きが止まったような気がしたがすぐさま、了解いたしました、と言って動き出す。
「あと、できれば母上にも話ししたいんだが……どうしようかな。行くのが早いか……」
うーん、連絡取って、と考えているとテオが聞いていたのか
「カールと連絡取れましたが、午後からルカリスティア公爵と夫人が来るそうですよ、ユーリア様のお見舞いに。その時なら陛下も時間空けてあるそうですが」
少し取って貰うようお願いしますか?と。
「よろしく頼む!父上と母上も一緒にと。と、なるとエル兄上にも言った方がいいか……」
これから先の事を考えると味方は多い方がいい。
「ヨルクにも聞いてみますか?」
「お願いする。一緒に話しした方が早い」
しばらくするとテオが
「エルヴィン様も大丈夫だそうです。では午後一に陛下の執務室で」
「助かる。よろしく頼む」
そのメンバーが知っていればレーツェルに対して心無い事をいう者はいないだろう。
レーツェルの不安と負担はなるべくなくしたい。
「……レーツェル様に何かありましたか?」
大丈夫なんですか?と不安げにテオが聞いてくる。
テオにとってはレーツェルは主の大事な方でもあり、小さい時から一緒に訓練した仲間でもある。妹みたいな感じでもあるのだろう。
「ああ、大丈夫だ。怪我とか病気じゃないよ。私と結婚することも変わりないから心配しなくていいよ」
「……それならよろしいのですが」
「陛下と話しする時、一緒に聞いてくれればいいよ。カールとヨルクも」
その方が後々助かるはずだ。
「了解しました。では午前中にできる事は終わらせましょう」
と、ドン!と書類を目の前に置いてきた。
………意外とあるな。仕方ない大人しく処理するか。
午前中は黙々と書類を片付けて、軽く昼食を食べてから、テオと共に陛下の執務室に向かう。
ノックをすると中からカールが扉を開けてくれた。
「陛下とルカリスティア公爵と夫人は今王妃様の所に。長居はせず、すぐに戻って来るとのことなのでこちらでお待ち下さい」
「わかった。ありがとう」
テオと共に中に入ると、更にノックの音が聞こえた。今度はエルヴィンが入ってくる。ヨルクも一緒だ。
「すみません、エル兄上。急にお呼びして」
「いや、今日は何もないから大丈夫だよ。何かあったの?」
「レーツェルの事で少し」
お話しておきたいことが、と言った時にさらに扉が開き、陛下とルカリスティア公爵と夫人が入ってきた。
「待たせたか?すまない」
「いえ、急にお願いして申し訳ございません」
皆、ソファや椅子に座る。
「で?レーツェルの事でって何?これだけ急にってことは大事なことなんでしょう?」
陛下がすぐさま本題に入ってくる。
「その当の本人はどうしたのです?」
と、母上が聞いてきた。
「本人は今、図書館に行っています。今からお話することは昨晩レーツェル本人から聞いたことです。皆に話しすることはレーツェルから許可を貰いました。義姉上には、陛下の判断に任せます」
「……重そうな話の感じだな」
父上が尋ねる。
「……そうですね」
楽しい報告ならどんなに良かったことか。
レーツェルの、16歳の少女の辛くて重い決断だ。
一人に課すには重すぎる。
アルフォンスは深呼吸して皆に向き合う。
「レーツェルが初めて『竜化』して二ヶ月ほど経ちました。この時点で判明と言うか確定したことですが」
と、前置きしてから一番重要な事を告げる。
「レーツェルは子を成すことができません」
皆の視線が集まり、動きが止まる。
最初に反応したのは母上だ。
「それは……どういう…こと?どうして?何で確定なの?」
そういう反応が普通だろう。
「レーツェルが図書館の資料を読んで気づいてはいたそうなんですが、今までの『竜化』した者に子供はいません。たまたまか、記載されてないだけ、かとも思っていたそうです」
昨晩聞いたことを続けて話す。
「確定したのはレーツェルの身体に変化が起こったからです」
「変化?」
陛下が聞いてくる。
「はい。月のものが無くなったと」
その事が何を意味するかわからない者はこの場にはいない。母上が
「……それは、遅れているとか、体調のせい、とかということはないの?心理的な要因もあるでしょう?」
同じ女性としてそう思うのは無理はない。
「レーツェルも最初はそう思っていたそうです。と言うか思いたかったらしい。でも身体がもう本質的に変化したのを感じるそうです。『竜化』のための力に使うために生殖能力が無くなるのだと」
誰も声を出さない。出せない。
「今までの『竜化』した者が王族並みの地位と権力が与えられてきたのは一代限りと分かっているから。子孫がいるとその子の地位はどうなるのか、という問題が起こりますができないのなら関係ない」
「それは…そうだが…」
父上が口元を押さえながら肯定する。
「昨晩、レーツェルが泣きながら私に告白してくれました。隠し通すこともできただろうに、私の王族としての立場を優先させる為に身を引くと」
――――――子を成せない自分では、と。
どれだけの葛藤を乗り越えて、その言葉を口に出したのかは想像に難くない。
アルフォンスはもう一度深呼吸して
「私はレーツェルと結婚します。この事は絶対に譲れません。他の女性を娶る事はない。子供が出来なくても構わない。レーツェルと共に、二人で生きていきます。もしそれが立場的に駄目だというのであれば全てを捨ててでも構わない覚悟です。私はレーツェルを失うことなど、レーツェルが隣にいないことなど考えられないし、考えたくもありません」
一息で言い切る。誰がなんと言おうとレーツェルを手放す気はない。
静かな時が過ぎる。皆口元や目元に手を当てて無言だ。
最初にその沈黙を破ったのは母上だ。
「……それは二人の同意なのね?アルフォンス、あなただけの考えではないわね?」
「はい。レーツェルも私だけいてくれればと言ってくれました。二人で生きていきたい、と」
母上はふぅと息を吐き
「なら私はあなた方の味方です。まわりがなんと言おうと二人で幸せになるのですよ。なるべく五月蠅く言う者は抑えるつもりですが、それでも心無い事を言う輩は必ず出てきます。一番近くにいるアルフォンス、あなたが必ずレーツェルを守り抜くと誓うのならば、協力は惜しみません」
と、心強い言葉が返ってきた。
「私も何も反対しないし協力は惜しまない」
父上と、エルヴィン兄上も手を挙げて賛成を示してくれた。
あとはベルンハルト陛下だ。
「……ユーリアに言う判断を私に任すと言ったのはそういう事か……」
口元に手を当てて、溜息をつく。
「……義姉上の事で気づいた、というのもあるらしいです。レーツェルとしてはどちらかというともう吹っ切れてはいるので……義姉上が気にしないでくれるのが一番いいのですが」
「……それでもまだ16歳のレーツェルにはかなり重い、辛い話だろう?かと言って今のユーリアには言えないな」
「はい。ですのでもう少し後か、産まれてからでも構わないですし、なんなら伝えなくてもいいくらいかと思います」
「……それは、この国の王妃としては知らない訳にはいかない話だろう。まあ折を見て話すよ」
「よろしくお願いします」
頭を下げた。
「レーツェルとの結婚に関しては私も反対はない。そのまま予定通り進めて行けばいい。大丈夫だ、このメンバーでお前にレーツェル以外を勧める者がいるはずがない。子供に関してはお前達二人が納得しているならそれでいい」
陛下も賛成を示してくれた。これでとりあえずは安心だ。
「レーツェルの精神的なケアもちゃんと頼むわよ」
母上に念押しされる。
「それはもちろん」
「ならいいけど」
「私のレーツェルに他の女性を勧められた時の精神もヤバかったですよ……」
思い出したくもない、と告げると
「レーツェルの方がもっと大変なの!」
と、お叱りを受けました。ごもっともです……。
「まあベルンハルトに三人いるし、お前達は二人で仲良くしてくれるならそれでいいんじゃないか」
父上が言うと陛下も
「そうだね、それならまだまだユーリアにはがんばってもらわないとだめかな」
と、明るく言ってきた。
「その調子の対応でお願いします」
あくまで明るく、軽く。その方がレーツェルも気にしなくて済むだろう。
「そうね、ユーリアにはあと二人ぐらいがんばってもらってもいいかもね。エルヴィンもさっさと申し込んでお許しもらって結婚してしまいなさいな!身分なんて気にしなくていいから早く連れてきなさい」
と、皆が驚く爆弾発言を母上がしてきた。
「………知っているんですか?母上」
エルヴィン兄上が目を丸くしている。
「私の情報網をなめないでくれるかしら?」
そうですね…はい……。
では、この話はこれで、とお開きになった。
自分の執務室に戻ると、テオが
「エルゼ達はこの事知っているのですか?」
「いや、まだ言ってはないと思う。レーツェルが折を見て話すとは思うが。まあ知らなくてもいいことと言えばそれまでなんだがな」
「それは、そうですが……」
アルフォンスはふと気づく。
「私達に子供が出来ないからって、お前達は気にしなくていいからな。寧ろ沢山産んで兄上の子供達に仕えてくれ」
「……っな!」
「エルゼももういくつだ?そろそろしないのか?結婚」
「……まだ…です」
「一緒にするか?」
「考えさせてください…」
残りの書類仕事をさっさと終わらせて、図書館にレーツェルを迎えに行った。
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