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 暗い、暗い場所に自分はいた。


 ――ここはどこだ?


 自分の瞳と髪の色のような、漆黒の中に立っている。


 前も後ろも、上も下もわからない。


 自分は今どこに立っているのか。



 普通なら目が慣れると何かしら見えてくるものだが、一切何も、本当に見えない。


 でも不思議と心は落ち着いているのがわかる。慌てることはないと何故か思っている自分がいる。



 それはいきなり目の前に現れた。小さな、ビー玉のような玉。

 それも周りと同じ様な漆黒な玉なのだが、輪郭が光っているため、それだけ形がわかる。


 思わず取ろうとして手を伸ばすと同時にその声は低く響いた。



『汝、我と契約する者よ。この……』


 よく聞こえない。


「……何て…?」

  

 

 もう一度、玉に向かって手を伸ばし掴んだ時、その暗闇は消えた。



 

 次にレーツェルの目が開いた時に飛び込んできたのはいつもの寝室の天井と、銀色の髪の青年だった。


「……レーツェル、おはよう。どうかした?」


 瞬きを数回したらしく、いつもと何か違う事にアルフォンスが気づいた。


「……おはようございます、アル?」

「何か疑問形だけど。変な夢でも」

 見たの?と頬を両手で挟んで引き寄せられた。

「いえ、よくわからなくて。夢?夢にしては」

 妙にリアルだった。


 『我、汝と契約する者よ』


 はっきりと覚えているその言葉。


 契約、とは?私が『竜化』してアルフォンスと『契約』して、ではないのか?

 私が誰と『契約』するのか?


 んーと悩んでいるとアルフォンスが

「どんな夢?」

 と聞いてきたので、覚えている事を話してみた。



「ふーん、暗闇と玉と契約か。全て関係している事と言えばそうなんだろうけど」

 わからないな、と。

「また見たら教えてね。ところでレーツェル」

「はい?」


 と答えた所でアルフォンスが顔を覗き込んできた。


「ん、大丈夫そうだ、目は腫れてないね」

「え?」

「昨晩はかなり激しく泣かせたからね」

 と、軽くウィンクしてきた。

 

 いや、言い方……。そりゃあまあ泣きましたけどね……。


 腫らした目で行ったらエルゼ達に怒られるからね、と。瞼辺りにキスをしてきた。


 まだ慣れないレーツェルは一気に顔が赤くなった。


 アルフォンスはクスッ笑って、ベッドから下りてレーツェルを横抱きにする。


「あ、アル大丈夫です。一人でいけますから。降ろしてください」

 と懇願すると

「私がしたいだけだから。気にしないで」

 

 取り合ってくれない………。


 


 リビングに入るとエルゼ達がすでに朝食の準備をしていてくれた。

 アルフォンスがレーツェルを椅子に下ろす。


「「おはようございます」」

「おはよう」

「おはよう、二人共。ありがとう、もしかして寝坊した?」

 と、思って時計を見るといつもより少し遅かった。


「今日はご予定もないのですから、もっと遅くてもいいくらいですよ。休める時に休んでいただかないと」

 と、エルゼが言う。


 

 皆で朝食をいただく。アルフォンスが確認してくる。


「今日、私は少し昨日までの残りの仕事をしてくるけど、レーツェルはどうする?」


 まだ後始末が残っているのか。


「なら、午後から図書館に行ってもいいですか?もうちょっと読み込みたいので」

「わかったよ。じゃあ夕方には迎えに行くから」

「はい、お願いいたします」

 

「明日、また『加護』に行こうかと思うんだけど、レーツェルは大丈夫?行ける?」

「あ、はい、行きたいです」

「じゃあ、エルゼ明日朝、準備頼めるかな?10時頃に出る予定で」

 と、エルゼの方に話しかける。

「はい、了解いたしました。前と同じように準備いたしますね」


「どちらに行きますか?ミナチかハサカか」

「とりあえず、ミナチに行こうかと。ハサカもレーツェルさえ問題なければ三日くらい間をあけたらすぐ行こうかと思っている」

「わかりました。そのつもりでいますね」


 朝食が終わり、片付けて、着替えて、髪の毛を整えてもらって、と朝の準備を終わらせたら、アルフォンスがじゃあいってくるね、とレーツェルにハグをして王宮の方に向かっていく。


 レーツェルも午前中は掃除や洗濯など一通りの家事を終わらせる。


 昼食を軽く取り、エルゼとレミリアに行ってきますと告げて、レーツェルも王宮の方へ向かった。



 奥庭から王宮に入る。

 

 兵士や騎士達が挨拶してくれる。元々余所余所しさはあったが、さらに距離ができたような気がする。

 まあ仕方ないか。気にしない。


 図書館の方に向かって歩いていると前の方に見知った顔が見えた。

 ジュリア様とアメリ様だ。あちらも気づいてくれた。


「レーツェル様、こんにちは。どちらに?」

 アメリ様が声をかけてきた。

「図書館まで行こうかと。お二人は揃ってどちらに?」

「今から王妃様の部屋前の警護に入ります」

 ジュリア様が答えてくれた。

「それは。よろしくお願いいたします」

 とレーツェルは頭を下げた。


「レーツェル様はあれから体調は大丈夫ですか?」

「私は全然。よく寝ておりますから」

 と言って、三人でクスッと笑った。


 方向が同じなので途中までご一緒させてもらう。


 アメリ様が

「レーツェル様には王宮内では基本護衛はつかないのですか?まあ誰も敵わないとは思いますが」

「そうですね。自分の身くらいはとりあえず守れますし、一人の方が気が楽です」

 また三人で笑った。


 ジュリア様が

「今日も短剣(ナイフ)を?」

 と、聞いてきたので

「はい、もちろん」

 と太もも辺りをさすって答える。


「一度聞いてみたかったのですが」

 と、ジュリア様が言ってくる。

「何でしょう?」

「レーツェル様もですが、陛下や王弟殿下方の侍従の方々の短剣(ナイフ)捌きを拝見したことがあるのですが、あの捌き方というか、命中率の凄さというか。あれはやはり小さい時からの訓練の賜物なのでしょうか?」

 ああ、見たことがあるのか。

「あの御三方は凄いですよね。私も敵いませんし」

「レーツェル様でも、ですか」

「はい、とくにエルヴィン殿下の侍従のヨルク様が一番凄いかと思います。外したことも、ちょっとのズレも見たことがないですし」

「そんなに」

 と、アメリ様も驚いている。


「訓練的なこととしては小さい時から玩具代わりに短剣(ナイフ)で遊んでましたね。もちろん刃は潰してあるので危なくはないのですが」

「……玩具代わりですか……?」

 頷いて

「とにかく指で触れて形を手に馴染ませて、挟んだり投げたり。まずは思った通りの所に百発百中で当たるようになるまで」

 暇さえあれば触って投げていました。と笑いながら言ってみた。

 二人はあっけに取られた顔で見ていた。


「まあ、騎士の訓練とはまた違った訓練内容だと思います。向き不向きもありますしね」

 と、話しながら歩いていると分かれる所まできた。

「ではまた。王妃様のことよろしくお願いいたします」

「はい。レーツェル様もまた騎士部門の方に来てくださいね。是非お手合わせ願います」

「はい、必ず」


 では、と二人と別れて図書館の方に向かって歩いた。


 図書館に入り、奥まで進み、ヘルミーゼとヘンリック姉弟に挨拶し最奥区まで入る。

 

 まだ読み終わってない資料や、今まで読んだ本をもう一度読み込んでいると、いつの間にか夕方になり、アルフォンスが迎えに来てくれた。



 片付けて、挨拶をして、二人で離れに向かって歩きだした。





 

読んでいただきありがとうございます。


評価、ブックマークポイントを押していただけるととても嬉しく、励みになりますのでよろしければポチッとお願いいたします。


明日も更新予定です。

よろしくお願いいたします。

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