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一応記憶力には自信あるけれども、とても大事なことなので記録を取りたい、とすぐさま机に向かい、紙とペンを持ってきた。
まず今来ている三人の森の名前、キチャ、ミナチ、ハサカ。
そしてすぐにでも行ってあげなければならないのがタカス。
「そのタカスの森はどこにある?近くの街の名前か治めている爵家の名前はわかるか?」
アルフォンスが詳しく聞き始めた。
『ここから南の方。ヤーズの街の南のはずれ。すぐ近くに魔獣が住み着いてる場所があるから、どうしても他の所より魔獣が来やすい』
「ヤーズの街か。なんとなくだが分かった」
言われた場所を紙に書いておく。
「先に三人の森の場所も聞いておきたい」
と尋ねると一人ずつ近くの街名と方角を教えてくれたので紙に書き足していった。
「優先はタカスの森なんだな。君たちの所はまだ大丈夫か?」
『私達の所はまだ大丈夫。ゆっくりでいい。竜王の負担にならない程度で』
「分かった。なら……」
「すぐにでも行きませんか?」
私が言うとアルフォンスはびっくりした顔をした。だってそんな精霊主が動けないほどならかなり危険なのではないだろうか。
アルフォンスは三人の精霊主の方へ向き
「タカスの森は今すぐにじゃないとだめか?明朝でも大丈夫なのか?」
『明日でも大丈夫。反対に夜動くのは危険。竜王が危険になる』
「でも、一刻でも早い方が……」
「だめだ、精霊主達がレーツェルが危険と言っている。私も許可を出さない。今晩休んで明朝早くに出よう。エルゼやテオに連絡してそれこそ夜明けと共に行こう。それでいいな」
精霊主達も頷いている。
『タカスの精霊主は大丈夫、強い。ただ森を空けてくるだけの余裕がないだけだから』
「わかりました。無理しちゃ駄目ですね。精霊主達の言葉を信じます」
「よし、いい子だ。では明朝すぐ出られるように準備してくるからレーツェルはすぐ休む事、分かったね」
「はい、よろしくお願いします」
「精霊主達もありがとう。タカスの森が無事に終わったら君たちの所も順番に行くから」
よろしくね、と言うと皆笑顔で頷いて夜の空に消えて言った。
窓を閉めてカーテンも閉める。とアルフォンスがヨッと横抱きしてきた。
「あ、アル!?」
「はい、レーツェルはゆっくり休む。気が昂ぶっていると思うけど」
ちゃんと眠ってね、とベッドに優しく下ろされる。
「眠れる?」
「多分大丈夫です」
「今日も竜化したし、よく眠れるように魔法、かけていい?明日の朝ちゃんと起こすから」
「そこまでしてもらわなくても」
「だめ。深い眠りじゃないときちんと回復しない」
頬を両手で挟まれる。おでこにキスされる。
「おやすみレーツェル」
「おやすみなさい、アル」
目を瞑って、と言われた通りにすると口唇に柔らかく何か触れてきた。
キス?と思うと同時にフッと意識が遠のく。
「おやすみ、レーツェル。よい夢を」
身体が深い所に落ちていくのがわかった。
アルフォンスはレーツェルが眠りに落ちたのを確認して、一旦寝室を出てリビングに向かう。
「エルゼかレミリアいる?」
声を掛けると二人共、扉を開けて入ってきた。
「何かありましたか?」
「ああごめん、明日の朝のことなんだけど、急遽ヤーズの街の近くまで行くことになった」
「『加護』のお仕事ですか?」
流石理解が早い。
「そう。今さっき窓から精霊の招待を受けてね。そこの森だけ緊急みたいなんだ」
だから明朝すぐレーツェルと飛ぶつもりだからよろしくね、と伝える。
「わかりました。レーツェル様と飛ぶ時に少し荷物を持つ事は可能ですか?」
「私が背負えるなら大丈夫。手に持つのは厳しいな」
「わかりました」
「朝早いけど頼んだよ。私もテオに連絡したら休むから」
はい、と二人がまた扉から出ていく。
あとは、とテオに魔力で指示を飛ばす。急遽すぎて怒るかもしれないがこればかりは仕方ない。優先すべきは間違いなく『加護』だ。
テオからもわかりましたと返事をもらい、もう一度寝室に戻り、レーツェルの横に行き顔を見て確認する。
もう一度おでこにキスをしてアルフォンスも眠りについた。
「おはよう、レーツェル」
優しい声が身体に染み込んでくる感じがする。
「大丈夫、起きられる?」
目を開けるとアルフォンスがおでこをくっつけてきた。
「お、おはようございます、アル」
「よく眠れた?身体大丈夫かな?」
ああそうだ、昨晩魔法掛けられて……。
「大丈夫です。スッキリしてます。アルこそ」
私より後に休んで先に起きてるんですけど……。
「私はこれくらい平気だよ」
とりあえず着替えようか、とベッドから下りる。顔を洗って、服を着ようかという時にはたと気づく。
「アル、今日って私の背に乗って飛んでいきますよね?服って」
どうすれば、と考えていると
「今はお出かけ用のワンピース来て。途中で『竜化』解いても大丈夫なように、今着る服持っていくから」
「あ、はいわかりました」
着替えが終わるとアルフォンスがちょいちょいと手招きしてくる。椅子に座るとサッと髪の毛を整えていく。今日はすぐ『竜化』予定なので梳かす程度だ。
リビングに入るとエルゼとレミリアがすでに朝食の準備をしてくれてあった。いつもよりかなり早い時間なのにありがたい。
「おはよう、二人共。準備ありがとう」
「おはようございます、レーツェル様」
さっと食べ終えて、じゃあ向かおうかと庭に出ようとすると、エルゼがリュックを持ってきた。
「もしよければこちらをお持ちくだされば。簡単ですが昼食を入れてあります。『竜化』を解く余裕があれば、ですけど」
水筒も入ってますので、とアルフォンスに渡してきた。
「ありがとう、助かる」
アルフォンスが受け取って担ぐ。王宮の方から人影が来るのが見える。テオだ。
「テオ、急にすまなかった」
「いえ、こちらが一番優先でしょう。気をつけていってらっしゃいませ」
「ああ、あとはよろしく頼む。レーツェル、行こうか」
「はい!」
おでこをくっつけて、囁く。
「レーツェル、竜になれ」
難なく綺麗なひかりを放ち、輪郭が崩れ、黒竜が現れる。
「いい子だ、レーツェル」
一度羽根を伸ばしてから、アルフォンスが乗りやすいように地面ギリギリまで身体を下ろす。
服を小さくしてポケットに入れる。首元にひょいと跳び乗り定位置に着く。
テオとエルゼ、レミリアに
「じゃあ行ってくる。あとは頼む」
「気をつけていってらっしゃいませ。くれぐれも無理はなさいませんように」
「わかった」
黒竜もわかったというように尻尾をちょっと動かして、ゆっくりと浮かび上がる。
三人に影響がないくらいの高さまで上がると一気に羽根を羽ばたかせて南の方に向かった。
読んでいただきありがとうございます。
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