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名前の件は片付いた。次は森の件だ。
「ヴァイツェンと公爵邸に寄った後、父上から聞いたレーツェルを見つけた森に寄ってきました」
「公爵領になってる所?奥まで行けた?」
さすが陛下、話が早い。
「結論から言うと行けました。レーツェルの母上の女王狼にも会えました」
「女王?」
他の狼より大きいこと、あの森を魔獣から護ってきたこと、怪我をしていたので治したこと、話も通じること、10年前の狼に間違いないとこ、息子がいること、名前もつけてきたことを一気に説明した。
「それはそれは。良かったねレーツェル」
「はい、アルのおかげで助かりました。またいつでも来てもいいとお許しももらえましたし」
「やっぱり誰でも行ける訳ではないんだね?」
「はい、私が呼んだら道を作ると言っていました」
誰でも入れる訳ではなさそうだ。
「あとあの森に『加護』をしてきました」
「え!いきなりそれ?出来たの『加護』」
陛下もイーヴォ様もカール様もびっくりしている。
「やり方って知ってたの?どこにも書いてなかったでしょ?」
やっぱり陛下も資料読んで書いてないことに気づいていたのか。
「はい、レーツェルもやり方がわからないと言っていたらそこに『精霊主』が現れまして」
「『精霊主』?」
「はい。いつもレーツェルの周りにいる子らよりも大きく、話もきちんとできました。どうやら森ごとにいるようです」
へぇと頷いている。
「で、『加護』なんですが、『竜』と『契約者』、そして『精霊主』の三人が揃って行うものでした。ただその森ごとに名前などが違うため、書き残せなかったのかも知れませんね」
なるほどね、と理解してくれた。
「とりあえずレーツェルがいた森は『加護』が出来て、これで魔獣の心配はないんだね」
「そのようですね」
「じゃあ他の場所は行ってみないとわからないのか、できるかどうかは」
「そういうことです。もしかしたら精霊主の方からコンタクトがあるのかも。まあ毎日は行けないと思うのでニ、三日様子みます。一箇所したことによってどうなるのか」
レーツェルの体調も観ながらになりますので、と。
「そうだね。『加護』の力はレーツェルだけ?アルも力使うの?」
「命じるのは私ですが、その際自分の力が流れた感じはなかったので、レーツェルの力のみかと思います」
「そうか。ならアルはケアをよろしく頼むよ。レーツェル、ちゃんと酷い時は言うんだよ、痛い所とか少しでも変だと思ったら即報告すること!王命だからね!」
「はい。お気づかいありがとうございます。帰ってきてからも回復魔法かけていただきました」
「ん、その調子でどんどんかけて貰ってね」
軽くウィンクしてくる。
「あと、報告ではなくお願いというか確認なんですが」
「何?」
他に何かあったっけ?と思っていたら
「私とレーツェルで街に行ってもいいですか?」
ぶふっと思わず吹き出しそうになりました。確認するのが早いですね……。
「街に?二人で?何、それは視察とか?お忍び?」
「デートで」
「ぶふっ!」
今度は陛下がぶふっと吹き出しましたよ。そうですよね。
「……いや、だめとは言えないけど。まあ二人なら護衛はいらないか。どう思うイーヴォ」
隣のイーヴォ様に確認を取る。しばらく考えてから
「そうですね、そのままだとあれなので本来なら魔法で色だけでも変えて、とは思いますが」
でも、と続ける。
「多分、色だけ変えても姿形ですぐバレそうな気はしますので、ならもう発表もしたことですし、お二人に関しては街の皆は好意的ですのでこの際思いっきりみせつけてきてもいいんじゃないですか?」
「そうだね、へたに変装するより堂々と行った方がいいかも知れない」
「じゃあ行ってもいいということで」
良かったね、レーツェルと笑顔が振ってきましたよ………。
「レーツェルは街出たことないんだっけ?」
「はい」
「じゃあ楽しみだね。アル、ちゃんとエスコートしてあげてね、頼んだよ」
「もちろんです」
「行く日が決まったら一応カールに連絡いれてね」
「はい、了解しました」
これで全部かな、と確認してまた何かあったら連絡します、と言って執務室を出る。
離れに戻るともう既に夜食の準備が殆どできていた。
「あ、ありがとう。全然手伝えなくてごめんなさい」
「レーツェル様、今日は『竜化』なさったんですから手伝い厳禁の日ですよ」
と、エルゼが笑顔で言ってきた。そうでした、そういうふうに決めたんでしたね……。
四人揃って夜食をいただく。
「そういえばエルゼとレミリアって街に行ったりするの?」
いきなり過ぎて二人共キョトンとしていたが、すぐさま切り替わり、エルゼが
「そうですね、たまにですが買い物に行ったりとかはしますが」
「私もこちらに来てから何度か。小物や服などを買いに行ったり」
レミリアもあるのか。私だけか。
何かありました?と聞かれたので答えようとしたらアルフォンスが
「今度レーツェルとデートに行くんだけどどこかいいお店知らない?ここは行った方がいいとか」
隣でブッと吹き出しそうになるのを必死で押さえましたよ。
「ああそれでしたら」
と普通に流すエルゼとレミリアが流石です。
あそこと、こことかといくつかのお店を教えてくれました。
早いうちに行けるように調整するね、と約束した所で食事も終了し、片づけてはおまかせして、湯浴みに向かう。
あがってきて、部屋に戻るといつも通りアルフォンスが髪を乾かしてくれる。
私もシャワー浴びてくるね、とアルフォンスが浴室に向かったので今日借りてきた本を手に取りページをめくる。
読んでいると、窓の所から音が聞こえた気がした。ん?と思って本を閉じ置いて、立ち上がって窓の方に行こうとすると、浴室の方からアルフォンスが戻って来て
「レーツェル?どうかした?」
「あ、いえ、何か音がしたような気がしたので」
確認しようかと思ってと窓を指差すとアルフォンスもやって来て
「音?」
と言いながらカーテンを開ける。
「うわ!」
「あら!」
二人で同時に声が出た。
カーテンを開けると月明かりの夜空に大きい精霊が三人飛んでいた。
「……大きい子ですね」
「そうだね、精霊主クラスかな」
窓を開けるとスッと降りてきて三人並んで礼をしてきた。
『我らが竜王とその契約者、初めてお会いいたします私はキチャの森の精霊主』
『私はミナチの森の精霊主』
『私はハサカの森の精霊主』
三人順番に挨拶をしてきた。
「こちらこそよろしく、彼女が黒竜王のレーツェル・シュヴァルツ。私が契約者のアルフォンス・シュヴァルツだ」
「よろしくね」
三人共に可愛らしい笑顔を見せてくれた。アルフォンスが尋ねる。
「ここまで来てくれたのは『加護』のこと?君たちの管理している森に行けばいいのかな?」
ああそうか、今日シリスの森に『加護』を施した事がもう広まったのか。
こうやって精霊主が頼みに来るのか、と思っていたらキチャの森から来たと言う精霊主が
『私達の所にももちろん来て欲しいのですが、一番行って欲しいのはタカスの森』
「タカスの森?」
『そう』
「そこの精霊主はこうやって来ないのかい?」
『タカスの森の精霊主、弱っていて森から離れられない。だから代わりに来た』
「!」
アルフォンスが詳しく聞く。
「それは『加護』の力がもう弱まっていて、精霊主の力も弱まっていると言うこと?」
『そう。だからお願いしたい』
「わかった。もうちょっと詳しく場所とか聞かせてもらえるかい」
間違えてはいけないので机から紙とペンを持ってきた。
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