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今朝目が覚めた後は停止することなく動くことができた。
びっくりしなかったわけではなく、理解することが早かっただけだ。
「おはよう、レーツェル」
「おはようございます、アル」
よく眠れた?と聞かれたので
「はい。アルも眠れましたか?」
「うん、レーツェルの寝顔見ながら眠れて、起きたら寝顔が見られる、いいね」
幸せだ、とおでこにキスをしてくる。
ヨイショと起き上がり、ベッドから降りてカーテンを開けてリビングに移動する。
「おはようございます」
エルゼが声をかけてくる。
「おはよう」
と、二人で返す。レミリアが朝食を運んできた。
「おはようございます」
四人で準備し、一緒にいただく。
「アルは今日は執務室ですか?」
「しばらくは。午後から魔道士の訓練に出るからお昼は向こうで食べるよ」
「わかりました」
「時間的によければアメリ嬢もお昼食べていけばいいと思うよ。今日一日休みのはずだから」
何か他に予定があれば優先してあげればいいけど、と。
エルゼとレミリアも頷く。
片づけて服を着替えて、アルフォンスの横に行き髪の毛を整えてもらう。
今日の予定はアメリ様とのお茶会的なものだけなので、ハーフアップで下の方はそのまま下ろしてある。
左耳が出てるのは当たり前ということで………。
「じゃあ行ってくるね」
当然のようにレーツェルの頬にキスをする。
「い、いってらっしゃいませ」
と、どうにか声を出す。ガンバレ私。
アルフォンスが王宮に向かって姿が見えなくなったことを確認し、振り返るとエルゼが
「幸せそうで何よりです」
「……っん?」
「ですよね。オーラが凄いです」
とレミリアも同調する。
「オーラ?」
自分には見えないので聞いてみた。
「はい。なんとなく見えるものなんですけど、最近のアルフォンス様のオーラの色、凄い幸せな感じがします」
まあ間違いなく幸せなんでしょうけど、と。
ヘぇ~そんな風に見えるのか。私のも見えるのか聞いて見ると
「レーツェル様のはあまり見えないんです。前からキラキラした感じは見えてたんですが。多分それが精霊達なんですよね。その子達の色が強いのか、守っているから見えないのか」
レミリアも頷いている。
「あ、でも、あの『気』の時は凄いです。綺麗な黒いオーラが」
「綺麗、なの?」
「凄く綺麗ですよ。まあ味方だからかも知れませんが。敵だったら……考えたくないですね」
と、エルゼの意見にレミリアも何回も頷く。
そ、そんなに出してるつもりはないのですが……。
部屋の準備をして簡単にだけどお菓子を焼いて。
そうこうしているとそろそろ10時だ。
窓の外を見ると執事姿の男性と普段着のワンピース姿の女性がこちらに向かってくるのが見えた。
入口まで行き出迎える。あちらも気づいたようだ。
「いらっしゃいませ、アメリ様。テオもありがとうございます」
「こ、この度はお招きありがとうございます」
と、よい姿勢で礼をする。
横にいたテオが
「では私はこれで。あとはよろしくお願いいたしますレーツェル様。エルゼとレミリアもよろしく頼みます」
「はい」
エルゼとレミリアも後ろで頷くのを確認すると、テオは来た道を戻って行った。
「さて、こんな所でなんですし、お入りくださいね。少ない人数で管理しておりますので、アメリ様のお家のようにはいきませんが」
と、目の前の彼女に声をかけて、中に入るよう促す。
「お邪魔させていただきます」
と、ニ、三歩踏み入れたアメリ様が足を止めて館の中を見渡す。
「……すごい、綺麗。天井が高い…」
「……ちょっと特殊でして、ね」
リビングに招き入れ、ソファに座ってもらう。
「失礼します」
と、座る仕草もやはり美しい。今日のアメリ様は16歳らしい、薄い水色のワンピースだ。茶色の髪もハーフアップで後ろに流している。
こうやって見ると騎士部門に入っていると言われてもすぐには信じられない。普通の可愛らしい男爵令嬢だ。
エルゼとレミリアがテーブルにお茶やお菓子を並べてくれた。
ありがとう、と声をかけて、アメリ様の方を向く。
「今日は貴重なお休みなのにお越しいただきありがとうございます。ここに人を招くのは何分初めてなので不手際があったら申し訳ありません。先に謝っておきますね」
と、正直に述べた。本当にこの離れにお客様が来るのは初めてなのだ。来ても陛下や王妃、エルヴィン様か公爵達だけなのだ。
まあアルフォンスが認めないと入れないというのもあるのだが……。
「い、いえ、こちらこそ、お忙しいでしょうに私なんかのためにお時間を」
「私なんか、は無しですよ、アメリ様」
クスッと二人共に笑った。
「かしこまらずに行きませんか?せっかくですし」
「よろしいのですか?」
「よろしいも何も私に爵位などないですし、ただちょっと変身できるだけですから」
「ちょっとって……」
そんな簡単に、とクスクス笑った。
「ではここからは友達としてよろしくお願いします」
「こちらこそ」
せっかくなのでエルゼとレミリアも一緒に座ってもいいか尋ねると、是非とのことなので。
――――四人でお茶会開始です。
「すみませんが最初に一つだけ」
と、アメリ様が言うので、どうぞと促すと、頭を下げて
「この度は父と姉がご迷惑をおかけ致しました。寛大な処分に感謝致します。本来なら当主となる兄が挨拶に伺うべきなのですが」
「ああその事ですか。気にしないでください、怪我した訳でもないですし。寧ろ当主交代などバタバタさせて申し訳ないくらいです」
お兄様も忙しくさせて申し訳ないです、と伝えると。
「本当は今日、兄も一緒に来たがったんですが、カイル様が無理だと。一人で、と」
カイル様わかってらっしゃる………。
エルゼが横から
「そうですね、アルフォンス様が不在の時にレーツェル様に面会できるのは女性のみですね」
「陛下でもだめなんじゃないですか?」
とレミリアも追いかける。
「そ、そんな事はないと思います……?」
と最後のほうが疑問形になる。アメリ様は微笑んで
「大切に守られておいでなのですね」
少し顔が赤くなるのがわかる。
アメリ様がお茶を一口飲みカップを置くと
「私、今まで友達と呼べる方がいなかったんです」
だから、こんな話をすることもなかったんですが、と膝に手を置いた。
「恥ずかしい話なのですが聞いていただけますか?」
と、アメリ様が姿勢を更に正して向き合ってきた。
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