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よくわからないまま、抱っこでリビングまで運ばれ、椅子に座らされて、隣にアルフォンスが座る。
「回復魔法かけたからもう大丈夫だとは思うけど、どう?夜食食べられそう?おなか空いてる?」
お腹に手をあててみる。うん、身体は正直だ。
「はい、空いてます。食べたいです」
「なら、準備してもらおうか。エルゼ、レミリアよろしく頼む」
「「はい」」
自分も手伝おうとして立ち上がろうとすると、アルフォンスに手を引っ張られて座らされる。
「でも、手伝いを」
「今日はだめ。私がするから」
「もう治りましたし」
「だめです」
そうしてアルフォンスが立ち上がり、手伝いに行く。
三人の手であっという間に目の前のテーブルに食事が並ぶ。
普通は食事は侍女達と別々にとるものだが、ここは人数が少ないのとそういう区別などないので、エルゼとレミリアも一緒に食べる。
アルフォンスが来てもそれは変わらずにと、伝えてある。
四人で食べ始めるとアルフォンスが
「明日、アメリ嬢来るから話聞いてあげてくれるかな?」
「明日ですか?」
「うん、急で悪いけど、早い方がいいかな、と思って。カイルとも話してね」
「こちらは大丈夫ですけど。お迎えとかは?」
なんせ普通の来方じゃ入れない。
「ああそれはテオにここまで連れてきてもらうから。10時に奥庭って言ってあるから」
「わかりました。アルは」
こちらに?と聞くと
「私は執務室にいるよ。女同士の方がいいだろうし。エルゼとレミリアもよろしく頼むね」
「「はい」」
食べ終わって、片付けようとするとそれもエルゼに止められた。
「元々私一人でも出来ましたし、今はレミリアもいます。レーツェル様は身体の回復のため、これから手伝い無しでもよろしいのでは?」
「え、でもそれじゃあ二人に悪いし」
そこまで疲れてはないと思うのだが………
「それじゃあ『竜化』した日はお休みで、ってのはどう?」
と、アルフォンスが提案してきた。
「何もしないってのもレーツェルには性格的に無理だろうから、ね?」
「そうですね、それなら」
頼みやすいです、とエルゼも了承してくれた。
湯浴みをして寝間着を着て部屋に戻るとアルフォンスがちょいちょいと手招きする。
隣に座ると髪の毛を魔法で乾かしてくれた。
「今日兄上に提案されたんだけど、今度解除して戻る時に一つ魔法を試してみたいんだ。うまくいくかわからないけど、成功すればこれから先、色々行けるようになるかな、と思う」
「服のことですか?」
「そう。解除と同時に戻せればと思って」
「それは助かりますね」
「だよね」
確かに大きなシーツ必須な今はここでしか戻れない。というか戻りたくない。
解除しても服を着てるとなると非常に助かる。ありがたい。
「いくらでも協力しますのでよろしくお願いいたします」
「うん、がんばるよ。いくつかの掛け合わせになるからやってみないとわからないからね」
本当にアルフォンスが『契約者』で良かったと思う。魔法の掛け合わせなんて普通の魔道士だったらそう簡単にはできないだろう。
サラッと言ってのけるアルフォンスに感謝である。
「それができると本当に嬉しいですね。今だと行ける範囲が結構限られますけど、途中で解除して休めるのなら、国中どこへでも行けそうですね」
離れに戻ることが前提となると一日の移動距離は限られるが、途中の街で休息が取れるとなると移動距離はほぼ無限になる。
色々な場所の保護や点検、強化に行けるようになる。
「協力は惜しみませんので、是非よろしくお願いいたします」
と頭を下げた。するとアルフォンスが頬を挟んで顔を上に向けさせる。
「珍しいレーツェルからの頼み事だ。叶えない訳にはいかないな。頑張るよ」
と、最高級の微笑みが降ってくる。
「お、お願い」
します、と言おうとした口をアルフォンスの口唇が塞いでくる。
黒い瞳を全開にしたまま固まっていると、離れたアルフォンスが
「うん、これで頑張れる」
と、手を離して立ち上がる。固まってるレーツェルに
「私もシャワーしてくるね。もしあれだったら先に横になってていいからね」
と、もう一回軽く口を合わせてくる。
「ほら『動いて』レーツェル。今日からはキスは遠慮なくするからね」
慣れてね、と浴室の方に歩いていった。
しばらく動けなかったレーツェルだが、正気を取り戻し、立ち上がって寝室に入る。
ぽすんとベッドに座り考える。
(そうだよね、お披露目も無事に終わったし正式な婚約者だし、ベッド一緒だし)
一緒……一緒、ということを思い出し、顔がボンッと赤くなるのが分かった。
昨日も一緒だったけど、はっきり言って覚えてないのでノーカウントだ。
でも今日は………。
――――慣れるしかない……ガンバレ、私。
とりあえず、今しなきゃいけない事を考えよう、と自分で自分の頬をパチンと叩き、立ち上がる。
明日の着る服の準備としなくちゃいけない事の確認と、何やかんやしていたら扉が開いてシャワーから戻ってきたアルフォンスが入ってきた。
「起きてたの?大丈夫?」
無理してない?と聞いてきたので
「だ、大丈夫ですよ。アルこそお疲れでしょう」
ニッコリ笑ってそばに寄ってくる。フッと気づいたら横抱きにされている。
「あ、アル?」
「そんなに警戒しないで。何もしないから」
しばらくは、と。
ベッドにスッと降ろされアルフォンスも隣に横たわる。
「こうやって一緒に寝るだけ。レーツェルの負担になることはしたくないし」
とおでこをくっつけてくる。
「こうやって心臓の音を聞き合いながら眠ると癒されるんだ。レーツェルは?」
と胸元に寄せられる。アルフォンスの心音が聞こえる。トクン、トクンと規則的な音だ。
「……癒されます」
「良かった。婚約したけど結婚まで間があるし、無理強いはしたくない、ゆっくりね」
こくん、と頷く。
「でもキスは許してね。慣れてくれる?」
「……がんばります……」
昼間あれだけ眠ったのに、アルフォンスの胸に抱かれると心地よい音が眠りを誘う。
目を瞑るとスッと落ちていきそうだ。
「……おやすみ、レーツェル」
その言葉とともにおでこにキスが降ってくる。
「……おやすみ…なさ…い、アル」
先程までの緊張が嘘のように緩んでいる。あっという間に眠りに落ちた………。
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