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 陛下と入れ替わりに広間にいた貴族達が次々と庭に出てくる。

 アルフォンスに話しかけたいのだろうが、何せ黒竜の迫力が凄いため、皆遠巻きに見ているだけとなっている。


 アルフォンスはその場に落ちているレーツェルのドレスや下着を拾ってから

「じゃあ、帰ろうか」

  と、アルフォンスが黒竜の首元を撫で、促す。


遠巻きに見ている貴族達に手を上げ、挨拶をし、奥庭の方へ向かう。

 アルフォンスの歩く速度に合わせ、黒竜もふわふわと浮きながら移動している。


 しばらく行くと、離れが見えてくる。

 

 エルゼとレミリアが先に戻っていて、窓を開けておいてくれている。

 中に入るとレミリアがシーツを準備してくれていた。アルフォンスがありがとうと言ってシーツを貰い、黒竜に一言かける。


「レーツェル、戻ろうか」


 その言葉を聞いた途端、また光に囲まれた。


 すーっとレーツェルに戻る瞬間、シーツを巻き付け抱きしめる。


「おかえり。お疲れ様レーツェル」

「アルこそ。レミリアもありがとう。エルゼは?」

 先程からエルゼの姿が見えないが……。

「湯浴みの準備をさせていただいております、よければそのまま入られませんか?」

「あ、ありがとう、そうしようかしら」

  確かにシーツだけ巻き付けているだけで、裸だ。


「そうだね、その方がいいね」

 と、アルフォンスも言ってくれたので入らせていただくことにした。


 

 髪もほどき、お湯につかる。


 ふぅと一息つく。とりあえずは無事に終わったかな、と考えながら洗い、身体に変化が無いことを確かめて、あがる。


 用意してくれていた寝間着に着替え、ストールを羽織り部屋に戻ると上着を脱いでラフな格好になっているアルフォンスが何か書類を見ながら待っていた。


「お待たせしてしまいましたか?すみません」

「いや、全然。こっちおいで」 

 と、ソファの隣に座るよう促してくる。


 言われた通り隣に座ると髪の毛に触れてくる。フッと優しい風が巻き起こりあっという間にレーツェルの黒髪が乾く。有り難い魔法である。


 エルゼが目の前の机に何かを持ってきた。


 果実酒だ。グラスも並べている。あと軽食も。よく見ると、エルゼとレミリアの他に執事服に着替えたテオもいた。何?何があるの?


 訳わからない顔をしていると、アルフォンスが


 「一回言ったけど、改めて。お誕生日おめでとうレーツェル。16歳は特別だからね」

「おめでとうございます、レーツェル様」

 と、エルゼ、レミリアとテオも言ってくれた。

「あ、ありがとうございます。アルフォンスもおめでとうございます」

「私のはどうだっていいよ。で、これを」

 渡したかったんだ、と目の前に小さな二つの箱が並べられた。

 紫色と黒色の箱だ。アルフォンスが紫色の箱を手に取り蓋を開ける。


 鮮やかな紫色の宝石が見える。いつも紫水晶とは少し違うような、なんだろう。


「これね、紫蒼石ヴァイオレットサファイア

 紫水晶もいいけど、これもいい色だったから、と。


 ………いい色ですけど、一体おいくら……?


「本当は指輪にしたかったけど、つけたり外したり大変かなと思って」

 耳環にしました、と。

「これなら『竜化』してもついたままだしね」

 と、左耳の紫水晶を触りながら言う。


「できれば左耳につけたいんだけど、二つは重いかな?」

 なるべく軽くしてもらったんだけど、と左耳につけてくれる。


 重さも感じず、大丈夫そうだ。そう告げると

「良かった。痛くなったりしたら言ってね、調整するから」

 で、こっちは私用、と言って黒色の箱を開ける。


 黒い、とてもキラキラしている宝石がついた、お揃いの形の耳環が見える。


「これ、金剛石ダイヤモンドですか?」

 おそるおそる聞いてみた。


「うん、黒色金剛石ブラック・ダイヤモンド


 ……簡単に言ってますけど、一体おいくら…?


 顔に出てたのか、アルフォンスが手に持って

「私の魔道士と副総帥としての給料で買える程度だよ」

 にっこり笑っておっしゃいました……。


「こっちはレーツェルが私の右耳につけて欲しいんだ」

 紋様の方につけたいんだ、と渡されたので、ちょっとかがんでもらって着けてみました。


「ありがとう。これは私からの誕生日プレゼント。婚約指輪的な感じだけどね」

「あ、ありがとうございます、大事にします」 


 じゃあ乾杯ね、明日もあるから一口だけね、とアルフォンスが果実酒を手に取る。


「これ、エルヴィン兄上からの誕生日プレゼント」

「え?」

「是非って。レーツェルの誕生年のらしいよ」

 エル兄上らしいチョイスだよね、開けるねと言いながら栓を抜く。

 グラスを渡されて、少しだけ注がれる。

「初めてだし、ね」

 アルフォンスもグラスを持つと、テオが瓶を持ち、注いでいる。


「せっかくだし、皆で乾杯しようか」

 テオとエルゼにもグラスを渡し、果実酒を注ぐ。レミリアはまだ15歳なので、果実水で。


「では、レーツェルの誕生日と成人をお祝いして」

「アルの誕生日もです」

「ありがとう。じゃあ乾杯!」


 五人でグラスを合わせると音が鳴った。


 とりあえず一口飲んでみた。甘い?ような、果実水ジュースとは違うな、やっぱりと思っていると、

「無理しないでね」

「大丈夫、だと思います」


 軽食を口に運びつつ、そういえばと思い聞いてみる。

「アルがこちらに来るとなると、テオもですか?お部屋要りますか?」


「ああ、テオは基本王宮だからいらないよ」

「はい、私は基本あちらにおります。私までこちらに来てしまうと緊急時に中々連絡が取りづらくなりますから」


 ああ、そうか、この離れ、簡単に人入れないんだった……。


「アルフォンス様となら『繋がって』おりますので王宮と離れぐらいなら意思伝達できますし」

 ちなみにエルゼとレミリアとも繋がってますので何かありましたら、と。


 やっぱり魔力と魔法は便利だな、とか思ってしまう。


「まあレーツェルも何かあったら精霊達に話しかけるといいよ、私にはすぐ伝わるから」

 そうですね、私には彼等がいました。


「で?私はどこの部屋に来ていいの?」

 と、目線を合わされました。顔が一気に赤くなるのがわかりました。いつもより体温も高くなっているような気がします。


「……私の部屋、準備しました……」

 顔真っ赤だと思います。

「ありがとう、じゃあ少しずつ移動してくるね」

 と、最高級の微笑みが降ってきます。


 恥ずかしくて、グラスに少し残っていた果実酒を飲み干すと、胸の辺りが温かく感じます。


「レーツェル、大丈夫?」

 アルフォンスが心配して覗き込むと


「だい…じょ…ぶ…ですよ」

 なんだか身体が熱いです……私、大丈夫か…な…。


「レーツェル大丈夫?レーツェル?」


 アルフォンスの慌てたような声が遠くに聞こえるような……。


 


 レーツェルに次の日の朝までの記憶は一切無かった。

 そしてレーツェルがお酒(アルコール)禁止になったのは言うまでもなかった………。





本日もご覧いただきありがとうございます。

明日もがんばります。

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