表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/557

39

 

 アルフォンスがレーツェルのそばを離れた途端、その二人はやってきた。


  ワナズア男爵とその娘ベアタ嬢だ。


 そこまでこちらの思い通りにならなくてもいいのに、とテオと二人で無意識に溜息が出る。



「……繋げますね」

 と、テオがレーツェルにだけ聞こえるように話した途端、彼の左眼が一瞬光る。


 レーツェルとテオが何も喋らず立っていると、自分達の事を知らないと勘違いしたのか


「初めまして、私はワナズアと申します、男爵位をいただいております。こちらは娘のベアタ。是非レーツェル様とお近づきになりたいと思いましてな」


「初めましてレーツェル様、ベアタ・ワナズアと申します。よろしければ少しお話しさせていただいても?」


 この二人がアメリ様の父親と姉か。姉とは似てないなと思っていると、隣のテオが小さな声で

「……始めていいですよ」

 と許可が出た。ならさっさと終わらさせていただきますか。



 わざとらしく、ふぅ、と大きく溜息をつき、二人を睨みつけ、抑揚のない声で言い放つ。


「……名を呼ぶ事を許した覚えはありませんが?」


 近くにいた他の貴族達からも一斉に視線が飛んでくるのを感じた。


「………っ」


 こんな年下の、小娘からいきなり言われるとは思ってなかったのか二人共動きが止まる。


 それでもなんとか気を取り直したのか父親が

「…いや、是非これから仲良くさせていただきたいので、なあベアタ?」

「そ、そうですわ!私のほうが年も上ですしお教えできる事もありましてよ、是非」

 暗に自分の方が上だ、と含みを持たせてきた。

 

 レーツェルは少し微笑み、

「申し訳ありませんが、お二方から教えて頂くことなどないかと」

 

 周囲がざわめく。


 そりゃあそうだろう、今日デビュタントの16歳の小娘が男爵とその令嬢に対して取る態度ではない。

 ざわめきが大きくなるが誰も止めには入らない。


 さて最後の仕上げに入るかとレーツェルがさらに言い続ける。

「他に何か?なければ下がっていただいても?」


 こちらは動かない、そちらが動けと言っているも同然のレーツェルの態度に男爵がキレる。


「……なっ!このっ!下手に出てやったのに図に乗りやがって!私は男爵だぞ!爵位もない身分もないただの小娘のくせに!」


 本当にこちらの思い通りに動いてくれますね、とレーツェルが呆れ顔で見ているとさらに騒いでくる。


「お、お前なんて弱いくせに、王妃の警護も私の娘になるからなっ!」


「私に、勝てたら、でしょう?」


「やれば勝てるわ!」

 と、ベアタ嬢も叫ぶ。アメリ嬢に聞いてないのか?

と考えていると


「お前なんてたった三人の侵入者にやられて怪我するほど弱いくせに!そんなくらいでよく警護だなんて言えたな!」

「そ、そうよ!顔を怪我したくせに!殿下に治してもらったのかしら?勿体ないわあんたみたい小娘にアルフォンス殿下のお力を使うなんて!」


 ベアタ嬢が言い切ったところで横からテオが


「そこまでです」

 と左眼の横を押さえながら言ってきた。


 しかしワナズア男爵は止まらない。

「お前は誰だ?まったくこの小娘といい、上の者に対する態度がなっとらんではないか」

「そうよ!アルフォンス殿下やエルヴィン殿下にちょっと構ってもらったからって!こんな知らない男といるなんてやっぱり身分のない小娘はこれだから…」


 二人共止まらない、がそこに声が響いた。


「何を騒いでいるのかな?」


 ベルンハルト国王陛下である。横にアルフォンスもいる。


「へ、陛下!この者が上の者に対して余りにも…」

「そ、そうですわ、私が教えて差し上げようと」

「ふーん、何を教えてくれるかな?侵入者の手引の仕方とかかな?」


 「「!!」」


「いや、ね、この前、王宮内に不届き者が現れてね。どうやっても誰か内部からの手引がいるはずなんだが。知らないかな?ワナズア男爵」


「い、いえ、私は何も……」

 一気に二人共血の気が引いた顔色になっており、半分認めているようなものである。


「そうか知らないか。そういえば三人侵入者がいたんだけど、その内一人をわざと逃してみたんだよね。そしたら雇い主の所に戻って嘘をついてきたみたいなんだ。顔をひどく怪我させてきたって。レーツェルが返り討ちにして彼女は傷一つ負ってないのに」


 ほんの数mmだけ負いましたけどね……。


 どんどん顔色が悪くなっていく二人。そこでテオが

「先程、男爵がレーツェル様に『三人』の侵入者にやられて、と令嬢の方が『顔』を怪我したくせに、とおっしゃられてましたよね?」

 と、確認する。


「そ、そんなこと言った覚えはない!勝手に言うな!陛下、そんな知らない男の言うことより、男爵である私を信用してくださいますな?」


「知らない男?誰が?彼はアルフォンスの侍従だよ、小さい時から知っている。男爵より全然付き合いは長いんだが」

 今度は男爵から変な汗が流れているのがわかる。


「それに彼は今、アルフォンスと左眼が繋がっていてね、彼の見聞きした事は全て彼にも聞こえていたんだ」

「そ、そんなことがっ……」

「できるわけない?うちの弟の魔力と魔法を舐めてもらったら困るね。それぐらい簡単にやってのけるよ」


 もう二人共、声すら出せないくらい青ざめている。


「他に言いたいことある?ないならこちらは聞きたいことだらけでね、ちょっと二人共大人しく彼等についてきてくれるかな」

 二人の周りを騎士が取囲み、連れられ、広間から退出していった。


 少し静かだった広間もまたもとの喧騒に戻っていく。


 

 アルフォンスと陛下が近づいてくる。

「レーツェル、テオ協力ありがとう。これで解決できそうだ」

 陛下がにっこり笑って言ってくるとアルフォンスが

「レーツェルを囮に使うのは辞めてくださいよ」

「すまないね、一番手っ取り早いと思ったから」

 そりゃあ怪我の心配があるならしないけど、彼等相手なら大丈夫だろう?と。


「しかし、レーツェル流石だね。アルに頼んで私も繋いで貰ってたんだけど、煽り方が凄かったよ」


「……見てたんですか……?」

「うん、テオには負担かけたけど」

 大丈夫だよね?と、聞いている。

「二人までならどうにか。主の力のおかげですが」


 先程のことを思い出しながら、目を瞑って答えた。

「恥ずかしいので、忘れてください……」

「なんで?格好良かったよ」

 と、アルフォンスに素で言われて、また体温が上がる。テオも

「本当に。隣で聞いていて鳥肌が立つくらい素晴らしい煽りっぷりでした。流石としか」

 

 いや、もう止めてください……。


 そういえば、と思い出し聞いてみる。


「あの、ワナズア家はどうなるのでしょうか?」

 アメリ様は……?と


「ああ、そうだね。男爵は王宮内に手引した罪とレーツェルを狙ったこと、娘も加担しているだろうから、二人共二度と王宮には上がれないだろうね。まあ爵位は今回の事には関係してない息子に譲って、田舎に引っ込んでもらおうかな。娘は修道院。妹は今回は無関係なのでそのまま騎士部門にいてもらうつもりだ」


 陛下の言葉を聞いて安心した。ホッとしてのがわかったのか、アルフォンスが

「アメリ嬢も親と姉がこうなると気にするだろうから、早めに呼んで説明しないとね」

「そうですね、よろしくお願いいたします」


 アルフォンスがジッと顔を見てくる。

「何か?」

「いや、レーツェルにそんな心配されてるなんて、何か妬ける」

「………っ!」

 いやいや、女性相手ですよ?そこまで?


 隣で陛下がクックッと笑っている。


「アルフォンスよ、流石にそれは……」

 と言葉になってない。


「……大丈夫ですよ、私の最優先はアルフォンスですから……」

 と、勇気を振り絞って言ってみた。

 

 最高級の微笑みが降ってきて、周りの令嬢方の悲鳴?歓声が響いてきた。



「さて、惚気けてるところ申し訳ないが」

 と、陛下が遮り、

「今日の仕上げと参りますか。二人共準備はいいかい?」


 「「はい」」

 同時に答える。


「よし!じゃあ行こうか!」


 アルフォンスの腕をとり、陛下に続いて広間中心に向かった。







本日も読んでくださりありがとうございます!

評価、ブックマークよろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ