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 その子供は5歳くらいより前の記憶はない。


 年齢も定かではない。

 先の国王陛下(現国王陛下の父)が、10年前に馬掛けに行った際、森の中で見つけた、と言って拾って帰ってきたのだ。


 もちろん城中大騒ぎ。

 更にその拾い子がこの国ではありえないような黒髪黒瞳。

 さらに魔力なく魔法も一切使えない子供。

 扱いをどうするか困っていた側近の者達を一蹴したのが、この国王にしてこの王妃の


「私、娘も欲しかったのよ!」


 この一言で扱いが決まった。


 この時点で国王陛下と王妃にはすでに3人の王子がおり、上から18歳、14歳、8歳と子育ても一段落ついていた。

 第一王子は婚約者もおり、結婚も決まっていた。


 ただ素性のわからない者をすぐさま養子縁組するわけにもいかず、とりあえず王宮で面倒を見ると言う事に決まった。


 まともに話す事もできず、読み書きなんてもってのほかだった子供を誰も使わずに空いていて勿体ないから、との理由で城内の離れに住まわし、衣食住の世話と、語学系の指導者をつけ、あっと言う間に年相応の、いやそれ以上の知識を身につけさせた。


 元々の素質か、乾いた土地に水が染み込む様に教えられた事を覚えた。


 ただ魔力系についてはやはり少しも発動できなかった。

 国のお抱え魔道士達が手取り足取り教えたがだめだった。身体の中に力は感じるらしいのだが、それを発動させる道が繋がらない、との魔道士達の見解だった。


 そこで国王は灯りや火をつけたりする生活魔法ぐらい使えないと不便だと、この国一番の魔力持ちに力を少し分け与えるようにと命じた。


 この国一番の魔力持ちで、もし竜化するなら彼だろうと噂されていた少年は快く承諾してくれた。


 ――第三王子 アルフォンス・ドゥ・リヴィアニアである。


 最初のうちは毎日会って、少しずつ魔力を彼女の身体に分け与えていたが、成長するにつれ、公務も増え、毎日会えなくなったため、魔力を貯めて渡せるようにと紫水晶を埋め込んだ耳飾りを少女の左耳に贈った。


 それでも彼は時間の許す限り少女に会いにきて、直に魔力を分け与えていた。


 元々魔力過多で少女に会うまでは度々魔力の暴走を起こしたり、抑えようとして身体や精神的な負担に苦しんだりしていた。

 まだ10歳にも満たない少年のその姿は本人も周りの者も辛かった。

 だが少女に出会い、自分の魔力を分け与えると、すんなりとその魔力を受け入れ喜んでくれたその姿に、なんともいわれぬ気持ちになり、ずっとこの姿を見ていたいと思ったのだ。

 その気持ちが何を表すのかはまだ幼すぎてわからなかったが、彼の心の中に何かが芽生えた瞬間だった。

 事実、少女に魔力を分け与え始めると暴走や身体的精神的負担が全くと言っていいほどなくなったのだ。

 少女は魔法が使えるようになり、彼は暴走がなくなり、お互いに助かっていた。


 初めて会った時から10年、その関係はずっと変わっていない。


 その拾い子は15歳になっていた。


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