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アルフォンスサイドです。


 マルクに案内され、父上の執務室に向かう。私だけに用事とはなんだろうかと考えていると、前を歩いているマルクが声をかけてくる。


「また少し背が伸びましたか?」


「ん?そうか?もう止まったかと思っていたが」


 190cm近くあるアルフォンスは父や三兄弟の中で一番背が高い。170cm近くあるレーツェルとは並んでいてもあまり気にならないが、母上や義姉上とはかなりの身長差になる。


「まさかアルフォンス様が一番大きくなるとは思ってもみませんでしたが」

 と笑いながらマルクが言う。


「私もそう思っていたよ、10年間でこんなに伸びるとはね」

 レーツェルのおかげかな、と冗談交じりに言うと


「そうですね、その影響は大きいかと思います」


 

 会話していると執務室前に着き、マルクがノックする。返事を確認して中に入る。


「あぁすまないな、来てもらって」

 執務室の奥の方の机の所にいるディートハルト公爵が目に入る。


「いえ大丈夫ですよ父上。用事とは何でしょうか?」


「まあそんなに大した事ではないんだが、とりあえず身体は大丈夫か、二人共」


 父上が立ち上がって執務机の前のソファに移動する。私も向かい側に座る。マルクがお茶を入れてくれた。


「今の所は私は何も。レーツェルも心配ないとは思いますが」


「なら良かった。ところでお前、単刀直入に聞くがあの離れに住むつもりか?」


 本当にストレートに聞いてきたな、と思いつつ


「そのつもりですが。何か問題でも?」

 レーツェルの竜化の解除を考えるとあそこ以外だとかなり難しい。竜化した者のための造りならば有り難く使わせていただきたいのだが。


「いや、住むことについては問題ない。むしろそうして欲しいくらいだ。ただ」


「ただ?」


「流石にお前が移るとなると人の手がいるだろう、あと一人か二人ほど」


 考えることは一緒だった。さすが父上。

 あてはあるのか?と。


「昨日ちょうどレーツェルとエルゼと話していました。移るとなるとお披露目以降になるので探し始めたところです」

 ちょっと特殊ですからね、と答えた。

「レーツェルやエルゼ並にとは言いませんが、それなりに動けて色々対応できる者でないと務まらないですし。私の影もいますからそこまでではないですが」


 そう聞いて顎に手をあてて考えている。



「よければ一人、あてがあるのだが……」

 まだ本人には聞いてないが断られる事はないと思うが……と父上が言ってくれた。


「……誰です?」


「レミリアだ」


「……いくつになりましたっけ?彼女」


「この前15になった。うちに来てもうすぐ3年か?それなりに色々、できるぞ?」


 父上の言う『色々』は本当に色々だ。表も裏も、と言うことである。

 それに彼女は身元においてもしっかりしている。テオの妹だ。確かにこれ以上の人材はいないだろう。



「でも、いいんですか?せっかく育てたのに」


「まあ、そのつもりで育てたからな」

 と爆弾発言が飛び出した。



「……父上は一体どこまで先を読んでたんですか?」

 やっぱりこの人にはかなわない。


「ん?これくらいまでだぞ。これ以上はない」

 あとは自分で頑張れよ、と。


 じゃあとりあえず確認だけはとっておくか、とマルクに何か指示を出すと彼は部屋から出ていった。


「あと必要なものはあるか?」


「今の所はないですかね。移動してみないとわかりませんが。自分も出来ることは自分でするつもりですし」


「何か必要になったら遠慮なく言え。対処するから」


「ありがとうございます、有り難く使わせていただきますよ」


 

 話をしているとノックの音がした。公爵が入室許可を出すとマルクと共にメイド服を着た女の子が入ってきた。


「レミリア、仕事中呼び出してすまないね」


「いえ、大丈夫です」

 と頭を下げて挨拶をする。


「久しぶりだね、レミリア。元気そうで何よりだ」

 と挨拶すると、兄に似た面差しでこちらを見る。


「お久しぶりでございます、アルフォンス殿下」

 と完璧な角度で礼をする。

 

「回りくどく言っても仕方ないから、ずばり聞くけどレミリア、君、私とレーツェルの所に来てくれないか?」


 少し眉が動いた気がしたが、さすが公爵家の教育、ほとんど動かない。


「その問いは無意味ですね。私がレーツェル様の所と聞いて断るとでも?」


 ――そうなのだ、レミリアはレーツェルに心酔しているのだ。エルゼもだが何故かレーツェルには皆心動かされる何かがあるらしい。やはり竜王の何かだろうか。


「だよね。では父上、この件はよろしくお願いいたします。レミリア、私が離れに移る前後からでいいから日程はまた追々連絡するけど、準備だけはしておいてね。部屋は離れ内に用意するから」


 レミリアが承知致しましたと礼をする。


「どうする?時間が許すなら今からレーツェルにも一緒に伝えに行く?」


 レミリアはマルクの方を見て伺いを立てる。マルクが頷いたのを見て


「是非とも挨拶させていただければ」

 じゃあ一緒に戻ろうかと、言うと父上が


「ちゃんとノックして、アレクシアの許可が出てから入れよ」

 と不思議な事を言う。何故わざわざ?と思っていると


「レーツェルと二人で話したいから時間を作れと言われたんだ。だからお前だけを呼んだんだ。そうじゃなきゃ二人一緒に呼んで話したさ」


 

 

 ――やっぱりそうか、なんか感じた違和感が解けた。



「女同士で話したい事があったんだろう、許してやってくれ。まあレーツェルに悪いことはしないだろうし」

 そろそろいいとは思うが、と許可がでたので執務室から出て、レミリアとともに母上とレーツェルがいる部屋にむかう。



 先程の部屋の前に戻り扉をノックする。入っていいわよ、と確かに返事が聞こえたのを確認してレミリアと共に入る。


 何故かいくつかの箱に囲まれたレーツェルが目に入る。よく見ると目が赤いような気もするが。母上も赤いし、何事もなかったのようにしているし、これは聞いたらだめなやつかな。


「あ、アル。お話しは終わったのですか?あら?レミリア?」

 とレーツェルが彼女に気づく。


 元々この邸にいた時期に一緒に訓練をしていたし、テオの妹ということもありエルゼとともに仲が良い。


「お久しぶりでございます、レーツェル様」


「久しぶりね、元気そう!どうしたの?」

 何かあったの?と聞いてきたので


「父上が私達の離れにレミリアを、と言ってくれてね。私としては大歓迎なんだが」

 レーツェルの意見は?と聞く。


 びっくりしたように目を開けて

「本当に?私としては願ってもないことですし、エルゼも喜ぶし助かりますが」

 いいんですか?と母上の方を見る。すると母上も


「いいのよ、ディートハルトもそのつもりでレミリアを育ててたのだし。彼女ならどこに出しても恥ずかしくないと思ってるわ、ねぇカリア?」


「もちろんです。私達の自慢の教え子です」

 よろしくお願いいたします、と頭を下げられた。


「……何から何まで、本当にありがとうございます、お母様。レミリア、よろしくね。あなたが来るのを楽しみに待っているわ」


「こちらこそ、誠心誠意務めさせていただきます。よろしくお願いいたします」

 レミリアが頭を下げて挨拶した所で母上が


「レミリアの事も伝え終わったし、あとはこれだけね。カリア、レミリアと共にレーツェルをお願い。アルフォンスはしばらくここで待機ね」

 と、ウィンクして微笑む。そして、え?となったレーツェルを3人が隣の部屋に連れこむ。



 これは……待つしかないな、と諦めて、心の中でレーツェル、頑張れと思いつつ、ソファに座ってお茶を飲んだ。











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