19
ヴァイツェンとライラの館を馬車で出発してから数分、ルカリスティア公爵邸の門前に到着した。
ここでも御者と門番が会話をし、また動き出し馬車止めまできた。
馬車から降りると正門前に公爵の侍従であるマルク様が2人を待っていてくれた。
「お久しぶりでございます、アルフォンス様、レーツェル様。お元気そうで何よりです」
「マルクも変わりないようだな。父上と母上の事、いつもありがとう」
「お久しぶりでございます、マルク様。中々顔を出せず申し訳ごさいません」
マルク様は10年前、公爵と一緒に森の中で私を見つけてくださった方だ。あれ以来、何かと気にかけてくれている。娘みたいなものですから、と言ってくださる優しい方だ。
「話は聞いておりますが、二人共変わりないようでほっといたしました。何かありましたら力になりますので遠慮なくお申しつけください」
と玄関ロビーから部屋までの道すがら会話をしつつ、すれ違う使用人達にも挨拶をする。
この邸の使用人達は私のことも奇異な目で見たりせず、普通に扱ってくれる(指導が行き届いているのだが)ので大変居心地が良いのである。
そうこうしているうちに応接間に着いた。ノックすると中から声が聞こえ、マルク様が扉を開ける。
中に入るとアレクシア公爵夫人がすでに待っていた。
「すみません、母上、お待たせしてしまいましたか?」
「いいのよ、私の方が楽しみすぎて早く準備してしまったの」
アルフォンスそっくりの微笑みでこちらを見る。
「先にヴァイツェンの所に行ってきたのでしょう?今日はもう予定はないわよね、ゆっくりできるのでしょう?」
「母上のお願いなら断われませんね…」
アレクシア様に勝てる人は多分いない。横で笑いそうになるのをなんとか堪えた。
「レーツェルもおはよう。今日は無理言ってごめんなさいね。体調悪くなったりしたらすぐに言ってね」
「おはようございます、お気遣いありがとうございます。私の予定などほとんど無いに等しいのでお呼びいただき嬉しいです、公爵夫人」
と言うと夫人とアルフォンスの2人が同時にこちらを向く。夫人が口を開く。
「レーツェル、今日この場には事情を知らない人はいません。よろしい?」
言いたい事は分かるわよね?とにっこり(悪魔の微笑みとも言う)と圧力がかかる。
と同時にアルフォンスからも圧力がくる。
「そうだね、この場には『家族』しかいないよね?」
と見目麗しいお二人からの同時圧力。屈するしか選択肢はありませんね……。
「……お呼びいただき嬉しいです、…お義母様」
満面の笑みで、よろしい、とお言葉をいただきました。……が、がんばります。
まあ座ってとソファに促され、やはり護衛として立っている事は許されず、アレクシア様の向かい側、アルフォンスと並んで座った。
夫人付の女官がお茶とお菓子を用意して下がっていった。
アルフォンスとレーツェルがいるから大丈夫よと、警護の者も下げさせる。
部屋の中にはアレクシア様とアルフォンス、私とお義母様に昔から付いている女官長カリア様の4人だけになった。
カリア様にアレクシア様が何かを持ってくるように命じると、少し後ろのテーブルに置いてあった宝石箱のような物を持ってきて、私達の前に置いた。
「開けてみてちょうだい」
言われてアルフォンスの方を見ると、レーツェルが開けて、と言われたので恐る恐る蓋の部分に手をかける。
スッと蓋を開けると中に3つの宝石が見えた。
――紫水晶だ。かなり大きい物が一つと少し小さめの物が二つ。かなりの価値の物だと詳しくない者でもわかる。
それにしてもこの色―――
「気づいてくれた?アルの瞳の色と同じよ。生まれて瞳の色が分かった時に用意させたのよ。3人ともね」
見事に色の濃さまでほぼ一緒だ。
「将来義娘に渡して付けて貰おうと思って準備したの。もちろんユーリアにもベルンハルトの色の石を渡したわよ。彼女はネックレスとイヤリングにしたんだけど。まあエルヴィンのは渡せるのはいつになるかわからないけどね」
と、溜息と共に少し諦めたようにも聞こえたが。
「本当なら加工までして渡したかったんだけど、レーツェルにはそれがあるでしょう?」
と左耳に目線が動く。
そうですね、これまた同じ紫水晶で同じ色の濃さの石がここにありますね。それも外せませんし。
「だから裸石のまま渡すから好きに加工してくれる?どうするか決まったらいつものお店に言ってくれればちゃんと加工してくれるように手配はしておくから」
アルはあの店わかるわよね?と。
「そうですね、この耳飾りは外せないし外させる気もないので。でもこの石もいい色ですね、流石母上です。ネックレスと指輪とか、髪飾りでもいいですね」
と親子で会話が進んでいってます。
「2人に渡すからちゃんと相談してね。大切にしてくれると嬉しいわ」
「あ、ありがとうございます、本当に頂いても……」
「良いに決まってるじゃない!もういつ渡せるか渡せるかと。早く渡したくて仕方なかったのよ!」
「遅くなってすみませんね、エル兄上より早かったんで許してください」
と、アルフォンスが話していると、コンコンとノックの音が聞こえた。カリア様が確認に行くとマルク様が入ってきた。
「公爵よりアルフォンス殿下にお話しがあるから執務室まで来てくれないかとの事です、そんなに長い話ではないからと」
「父上が?レーツェルも?」
「いえ、アルフォンス殿下だけで。レーツェル様はアレクシア様とお過ごしくだされば」
2人で顔を見合わせるとお義母様が
「はいはい、アルフォンスいってらっしゃい。レーツェルの事は任せて。たまには女同士で楽しませてよ」
そう言われると従うしかないですね。じゃあ行ってくるよ、とマルクと共にアルフォンスが退出して行った。部屋には女3人だ。
お茶を一口飲んだアレクシア様が口を開く。
「……今日は来てくれてありがとう、レーツェルあなたにお礼とお詫びを言いたくて」
そう言ってレーツェルの顔を見るアレクシア様の表情が変わった感じがした。
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