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9、偽の恋人と過去のアンリ


「ホルトが?」


「うんそう。ほんまに殴りそうやったわ…。会長が来てくれなかったらきっと殴ってた。」


「君にそんな事を?」


「うん。セクハラですな。」


ジョンと夕食をとりながら今日の出来事を話す。あの後会長はサロンへ私は食堂に行ったので会長には部活中に散々愚痴を聞いてもらったけどなんだか気が収まらずジョンにもついついグチグチと話してしまった。


「ああでも、ごめんこんな話。」


「ううんそう。ホルトが…。」


とジョンが考え込んでしまった。話した事を少し後悔した。もしかして友達やったのかも?それやったら悪口に聞こえたかな?どうしようと思いながら寮に帰った。



「は?なにこれ?」


私は思わず声をあげた。朝から順調に授業が終わり食堂でいつも通り昼食をとり午後の授業も終わった時いつも座る机の中から手紙が出てきた。封筒には大きく果たし状と書かれている。恐る恐る開けて手紙を読む。


アンリ・ハント殿

授業終了後、体育館裏に来られたし


「ええっそれだけ?」


そして私は真っ直ぐに漫研に向かった。



「ええっハント氏行ってないの?いいの?」


「ええーだって面倒臭いし何より名無しっていうのがちょっと無理です。」


「良いんですよ。こんなんでも一応女子ですから。危ない事には首を突っ込まない方が賢明です。」


「おい殴るぞ。」


「先輩ですよ。」


「お殴りますわよ。」


「一緒だよ。」


「うわぁーんグレアム氏ぃー。会長がいじめるよー。何か何か血の制裁与えられる物を四次元ポケットから出してよー。」


私はグレアム氏に泣きつくフリをする。


「よしよし。しかし四次元ポケットとはこれ如何に?」


「仕方ありませんね。そこのうるさい子供に何かお菓子を買い与えてあげましょう。」


会長が本を閉じて立ち上がり言う。私はサッと顔をあげて右手でガッツポーズをしながら繰り返す。


「やったー!チョコクッキー!チョコクッキー!チョコクッキー!チョコクッキー!チョコクッキー!」


「うるさいガキだなぁ。グレアムは?」


「拙者はラムネをお願いするでござる。」


「やったー!ほら早く行ってこいよ。」


私が椅子にどかりと座り言うと会長が私の制服の首根っこを掴んだ。


「お前も来るんですよ。」


ズルズルと引っ張られるのでグレアム氏に助けを求める。


「うわーんグレアム氏!グレアム氏!」


「はいはい夕飯までには帰るのよ。」


そう言って漫画を読んでいる。


「草。」


パタンと漫研のドアが閉まった。




「それにしても会長はおなごと歩くのを極端に嫌がっていたのに。購買まで一緒に買い物とは。アオハルでござるな。」




「会長このデラックスカツサンドも買ってください。」


私が調子に乗って色々言うと会長が呆れたように、


「貴方ねさっきからあれ買ってこれ買ってって。」


と会長が話すのを遮って購買のおばちゃんがふざけて言う。


「いいじゃないの恋人が買ってって言ってるなら買ってあげなよ。」


私もふざけて会長の腕を掴み、


「そうよそうよ買ってあげなよ。」


と言うと会長が大きく心底面倒臭そうにため息をついて、


「はいはい分かりましたよ。」


と言った。結局チョコクッキーとカツサンドとフルーツジュースを買ってもらい腕を組んだまま歩く。購買から出たのでそろそろ離そうとすると会長が腕を組みなおした。


「ほら恋人なんでしょ?このまま帰りますよ。」


完全に悪どい笑顔で会長が言う。っべーわこれは完全にっべー。意外と校舎に残っている生徒が多く皆振り返ったりこちらを見てヒソヒソと話をしている。


「会長、何を企んでるんですか?」


「失礼ですね。せっかく可愛い後輩を守ってあげてるのに。」


「守る?」


「果たし状が気になるんですよ。貴方、今まで散々人に嫌われて生きてきたでしょう。恨んでる人なんて星の数程いますよ。」


「わーお全然嬉しくない情報。この前、友達に王子の会議の話聞いたらほんまに私以外の1年生の女子全員いるんですって。その子もめちゃくちゃ気をつかってくれたらしいっす。ほんまに草。皆、私が話しかけると無視するかめちゃくちゃ怯えるかで全然友達出来ないんですよね。ほんまに草。」


「だから僕が守ってあげますよ。僕上下に顔も広いし貴方より人気者なので友達も多いですし。」


そう聞いて余計に離れようとする。


「ちょっと急に暴れない。なんですか?怒ったんですか?」


「違います!人気者なのに嫌われ者といたら絶対に色々言われますって!だから離れて!」


「なんだそんな事ですか。大丈夫です貴方に心配して頂かなくても。それにホルトの事も少し気になってるんです。だからちゃんと引っ付きなさい。」


会長が珍しく優しく言うのでその申し出にのる事にした。


「会長ってたまに優しいですね。」


「いつもの間違いでは?」


「稀に優しいです。」


「はいはいもういいです。」





そして翌日また同じ時間に果たし状が入っていた。


アンリ・ハント氏

何故昨日は来なかった

今日こそは体育館裏に来られたし


そしてまた同じように漫研に直行する。


「会長、グレアム氏!どうしましょう?」


「うーんハント氏行ってみますか?」


「そうですな。やはり行って相手を確かめるしか…。」


「じゃあ3人で行きますか?」


「ありがとうございます。私の代わりに会長が1人で行くと言う事で。」


「舐めてんのか?貴方も行くんですよ。」


「ドュフフフ。コ、コ、コミュ障なのでちょっと。」


そしてまた昨日と同じように首根っこを掴まれ連れて行かれる。グレアム氏が後ろからひょこひょこと歩いてくる。


「完全に猫で草。」


「自分を猫だなんて猫派に刺されますよ。」


「つら。」


3人で体育館裏に行くとそこに居たのはあの写真の…あれ…王子候補1位の…えっとぉ。

と考え込んでいるとグレアム氏が耳元で、


「ランバート・ルード氏ですよ。」


と教えてくれた。


「良かった。アンリ・ハント来てくれたのだな。そっちはダニエル・キッドマン司書番の息子。そちらは知らないなすまない。」


「いえいえ。サウス・グレアムと申す。」


「私はランバート・ルードだ。」


「でこの子に何か?」


会長が私の首根っこを掴んだまま前に立たせる。その扱いは恋人か?おいコラ。


「ホルトが君に惚れていて。それであんな事をしたのだ。だから許してやれ。」


「えっとはあまあ分かりました。」


「なんだその態度は?私がわざわざ時間を取って謝っているのに。やはりアンリ・ハント、高慢が服を着ているだけ。あいつもきっとお前のような女遊んで捨てるだけに決まってる。はっじゃあもう良い話は終わった。司書番の息子もせいぜい付き合う人間は選んだ方が良いぞ。」


ドカドカと足音をたてて行ってしまった。


「嫌われすぎ草。」


「ハント氏泣いていいよ。」


「ぴえん。」


「じゃあ行きましょうか。とにかくホルトやランバートとは関わらないようにしなさい。」


「はいママ。」


「じゃあ帰っておやつにしましょう。」


先輩2人が私を真ん中にいれてくれて3人で手を繋いで帰った。



「ジョンも私と関わらない方がいいよ。」


今日あった事を話す。以前の私はとんでもなく嫌な女だったようだ。それなら関わるといじめられるかも。

しょんぼりしながらジョンに言うとジョンが私の両手を握り目を見て話してくれる。


「アンリ僕は自分で見た物だけを信じるようにしているんだ。だから今ここにいるアンリがとても優しく誠実な女性だと知っている。僕はそのアンリだけを信じるよ、過去のアンリの話は信じない。だからそんな事言わないで僕とこれからも夕食を一緒に食べて欲しい。いい?」


なんだか嬉しくなって笑顔で返す。


「ジョン、ありがとう。これからもよろしく。」


「うん。さあもう帰ろういつもより遅くなってしまった。」


「うんおやすみ。」


「ああおやすみ。」




「可哀想に余計な事を言わなきゃよかった。」


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