6、授業と顧問
「うわぁ女が2人もいるじゃん最悪すぎ!」
「別にいいんじゃねその分俺ら上に行けるし。」
「ああー、まあせいぜい分母になってって感じか。」
「あはははははまじウケる。」
はい処すー。あいつら絶対に処す。
あいつら腹立つからa,b,c,dって名前にしよー。赤髪、青髪、胡瓜、童貞って覚えよ。絶対に名前覚えんとこー。でも他の男子達は別に何も言わずに教科書を読み進めている。入学したばっかりやしもう友達ができたっていう子も少ないんかもな。てかほんまに女子2人しかおらんやん。私とさっきから一切話さない黒髪ロングストレートのクール系女子。化粧かな?少しだけきつい印象を受ける。
特進コースと一般教養コースは午前中の4時間は分かれてコースで授業を受けて、午後からはクラス毎に体育やダンスの授業が1時間そこで学校は終わり。その後クラブ活動となるらしい。入学式の後皆は説明を受けたけど私は今聞いた。
特進コースは国語、数学、理科、政治という科目を毎日4時間行うようだ。というか本当に字も日本語やし教科書を見ても前の世界で習ってた事と同じやん最高!
席はどこでもいいらしいのでクール系女子の横に座り話しかけた。
「おはよう。女同士仲良くしてね!」
と言うとその子はノートを取り出しスラスラと書いて私に見せる。
よろしくね。私は病気で話す事ができなくて筆談だけどたくさん話しかけてもらえたら嬉しい。
「うん。よろしく!」
私は笑顔で頷く。ていうかクール系女子じゃないめちゃくちゃ良い子や。うるさいテンションで話しかけても嫌がらずに笑顔で返してくれたぁ天使。
私はサマンサ・タウンゼント。サムって呼んで。
「うん!私はアンリ・ハント。アンリって呼んで!」
サムは笑顔で頷いてくれたぁ。天使。ハンナももちろん可愛いけどハンナはまだ心を許してくれてないから悲しいかな笑顔がぎこちなくて…でもサムはめちゃくちゃ可愛い笑顔で…きゃわわって感じ。
「はーいじゃあ席について。はい出席はみんなしてるねじゃあ授業始めまーす。」
かるーい先生が入ってきて国語が始まった。なんというかさっぱりしている見た目も授業もさっぱりしている。さすがに教科書の話は聞いたことも無い話だったが読解の方法は結局一緒なのでまあ別に困ることも無く授業は理解できた。国語は現代文と漢字が主になるみたいだ。
次は数学。国語が終わり5分休憩そして数学。数学はホストみたいな先生でびっくりしたがめちゃくちゃに分かりやすい先生だった。白いスーツの中にツルツルの生地の紫のシャツを着てたまに前髪をファサッとさせるのでいつシャンパンコールに合いの手をいれないといけないのかヒヤヒヤしたが一度も始まらなかった。残念。内容としては数II数Bから始まるようだ。まあこちらも特に困る事はないかなぁ。
そしてまた5分休憩の後、理科。理科は生物、化学が主になって3年からは物理も始まるらしい。黒縁メガネの少し小柄なお父さんと同じ位の年齢の先生が担当だ。少し気難しそうな先生っぽい。シャツもズボンもパリッとしていて授業の進め方もきちっとしている。
最後の政治、政治って何?と思ったけど。政治の歴史と法律を学ぶようだ。これは一から始める事になるなぁ。また語呂作りの日々が始まる…。まあ得意ですけどね。頭いいんでうち。後輩にも不思議ですけど確かに覚えやすいですね。語呂は馬鹿っぽいですけどって褒められたし。先生はTシャツにジーンズにサンダルというラフな格好の近所の年齢不詳なお兄さんみたいだった。何故サングラスをしているのか?後ずっと雑談している。政治の話も交えつつ雑談している。ギャンブルならこれがおすすめとか料理したとか。
やっと4時間が終わり昼食の時間。ハンナと約束していたので食堂の前で待ち合わせて一緒に列に並んだ。
「そういえばアンリはサロンには行かないの?」
「サロン?」
サロンって?美容サロン?美容室って事?
「そんな髪伸びてる?切った方が良い?」
髪を触りながら話すとハンナが笑いながら言う。
「違う違う。貴族の人達は大体そこで専任の料理人のご飯を食べるんだよ。だからアンリも行かないのかなって。」
「いやいやいいよ別に。私は貴族ちゃうし。」
メニューを見ながら言うとハンナがめちゃくちゃ大きい声で叫ぶ。
「いや貴族だから!!」
「わあうるさっ!びっくりした。そうなん?やばぁ。」
「そうだよ!何を言ってるの?王の次に身分が高い貴族のお家だよ。」
「ええっ!そうなんやばば。あっ順番や。何にしよー。」
と前に行く。ハンナは呆れながら笑っている。
「アンリって本当に不思議。」
「そう?あっ昨日のお姉さん!今日のおすすめはなんですか?」
「今日はチキン南蛮!これ一択!」
「わーいうちチキンだーいすき!じゃあそれご飯大盛りで!」
「はいよ!」
「私はパスタAで。」
「はいよ!」
パスタA!なんだそのオシャンティな食べもんは…タラコスパ……。Aとは?ああ日替わりで味が変わるのか!納得!
「はいどうぞ!」
おばちゃんがすぐに出してくれたので端末をピロリンしてトレーをもらう。
「「ありがとうございます!」」
昨日のテラスに座る。今日は天気がよく風が心地いい。
「アンリは王子を狙わないの?」
ハンナが初めて話しかけてくれた話題は王子関係の事だった。
「うん私はいいかな。両親がどう言うかは知らんけど。ハンナは?」
「そっか。私も別に王子は特に…。その…もう…婚約者がいるから。」
「ええっ!そうなん!どんな人?優しい?」
「うんとっても優しい人で5歳上なの。だから彼の為にお料理とか家事が上手くなりたいなぁって思って一般教養コースにして家庭科部に入ったの。一般教養コースは料理や洗濯とかも学ぶから。」
少し照れながら言うハンナはとても可愛い天使。
「そっかじゃあ卒業したら結婚するの?」
「ええ。多分殆どの生徒がそうなると思う。女子も男子もきっと。」
「そうなんや。15歳で入学20歳で卒業して結婚か。」
遊ぶ暇なしやな。やっぱり学校では遊び倒さないと!新たなる決意を胸に私はチキン南蛮を頬張る。まじ美味い。
数日後に初めて受けたダンスの授業は相手の足を346回踏み学校で最多記録という数字を叩きだし誰も相手をしてくれなくなったので30分座って皆が優雅に踊るのを見ていた。つら。その話を漫研ですると爆笑された。毎日通っているのでだいぶ打ち解けてきている。
「ハント氏…ぶっ…ははは…ワロタ。」
トッド氏は本当に息もできない位笑っている。
「分かるよ拙者もダンスは不得意でござる。」
グレアム氏は笑わずにお茶をいれてくれる。私はそのお茶を飲みながら漫画を読む。あまりにも馬鹿にしてくるので腹立たしい。
「ふふふっ天下のアンリ・ハントもダンスは下手くそと。」
会長は笑いながらメモを取っている。メモ魔のようだ。処す。絶対にだ。
「会長ダンス得意でしょ。ハント氏に教えてあげなよ。」
グレアム氏が会長にお茶を渡し言う。
「ふむじゃあ少しだけ。相手役が不憫ですからね。」
「何その理由。つら。ぴえん。良いですよダンスなんてできなくても死にはしません。」
「ふふふっでもこれから舞踏会も増えますしずっと壁の花は辛いのでは?」
会長が授業風景を見てきたかのように言う。笑顔の胡散臭さが200%である。
「大丈夫です。サボるのは得意なので。」
「流石入学式をバックれただけある。」
会長が不敵な笑みを浮かべ言う。何故それを?入学式は1年生と先生方のみだったはずなのに…。何故てめえが…それを!ぐ、ぐぬぬ。
「おやどうしてそれをと考えてます?どんな生徒が入ってくるか何事も情報は得ておく事が大切ですよ。」
「うわぁ。引くわぁ。」
マジトーンで返すと会長がコホンと咳をして言う。
「ほらとにかく手を出して大体舞踏会では決まって最初に開会のダンスがあるんですそれだけは覚えておいた方がいい。本来は6歳程で習い始めるし天下のハント家ならダンスは完璧では?」
他の2人は飽きたのかもう漫画を読んでいる。私も漫画を読みたいが会長がブツブツ言いながら手をもう既に出しているので仕方なくそっと手を置く。
「はい、右足引いて、手は肩より上。背はまっすぐ。」
「はい、はい。無理。人間の動きじゃない。」
「泣き言言わない。本来はヒール履いて踊るんですよ。今はローファーでしょ。ほら、はい。」
会長は本当に。こいつ処す。30分も踊っている。わざと足を踏んでやろうとしてもサッと避けられるのが余計に腹立たしい。
「会長そろそろ勘弁してあげて。ハント氏死んじゃうから。」
グレアム氏が優しくストップを促してくれてやっと解放された。
「もう無理。うちグレアム氏の子になる。会長は無理。」
「おおーよしよし。うちの子におなり。」
グレアム氏が家族ごっこにのってくれて頭を撫でてくれる。会長も負けじと、
「アンリ帰るわよ!よそはよそうちはうち、全く今日は夕食なしです!」
と言い私を引っ張った。なんだか馬鹿馬鹿しくなり3人で笑っているとそこにホストが現れた。
「あれ?新しい子?入ったの?」
「ホストだ!」
やべっ思わず口走ったけどこの世界にはホストという職業はないらしくただ首を傾げているのでセーフ。
会長が私が入会した事の経緯や正規会員だと話してくれている横で漫画を読んでいるとホストが絡んできた。
「えっとアンリちゃん数学取ってくれてるよね?何か分からない事あったらいつでも言ってね。ここは男ばっかりだし不安に思う事とか困ってる事があったらいつでも言って。じゃあね子猫ちゃん。」
ホストはウィンクをして去って行った。
「あのホストまじやばい。」
あれはやばい。お金落としてまうわ。ロレックスとか買っちゃう。
「あれが顧問ですよ。びっくりしましたか大丈夫ですか?あらあら。」
会長が覗き込んで心配してくれる。顔が赤い気がする。あの子猫ちゃんはやばい。
「貴方はああいうのが好みですか?」
「違いますよ!だけどさすがに子猫ちゃんは言われると赤くなるでしょ。」
「あらあら案外初心なんですね。ハント家なら色んな男に言い寄られるでしょうに。」
「私は純情なんです。少女漫画を愛し少女漫画に愛された女。それが私アンリ・ハント。」
「はいはい。もう良いですよ。」
会長が呆れたように言って本を読み始める。あいつゥ!処す。絶対にだ。