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32、やり返す


「王、結婚を許していただきたく戻って参りました。」


「ほう、よかろう。連れてまいれ。」


「ははっ。ランバート!」


「は、はい。」


先程、城に着いたばかりのアンリを連れて来たランバートが目を泳がせたまま白いドレスを着た彼女を僕の隣に立たせた。ベールまでしてさながら結婚式のようだ。

第二王子、あいつはいつも僕の物を欲しがるんだ。だからあいつには見せたくなかったが、先に手に入れてしまえば関係ない。


「王!私はこちらの女性と結婚します。さあベールをあげてください。」


「ええ!」


ん?この声は?


「おおそちは!転移者のテチカ・イダ!サミュエル、しきたり通り転移者と!」


「なんだって!違うぞ!」


ベールをあげたのはあの転移者だった。アンリじゃない!なんで?どうして!


「王様、これからよろしくお願い致します。私の全てで王子を支えますわ。」


転移者は嬉しそうに僕と父上を交互に見て言う。


「ああ、幸運をもたらす存在のそちがそう言ってくれるなら安泰だ。これから一緒に王家を繁栄をさせておくれ!最初、あの悪名高いアンリ・ハントの名を出した時は驚いたがやはりお前も王族だな!よく決心した!」


「王!違います。」


父上には僕の声が全く届いていないようだ。テチカと話をしている。婚姻届を取り出してテチカの名前を書かせている。既に僕の名前は書いてあるのだ。


「ええ勿論ですわ!ねえ王子!」


名前を記入し終えて嬉しそうに言う。


「ランバート!!」


ランバートはもうそこには居なかった。あいつ、裏切ったな!

そうして僕は転移者と結婚させられた。




「これで良かったのでしょうか?」


ランバートが慌てて城から出てきて結婚したと告げてまた城に戻った。僕と彼女は馬車で学校に戻る。その道中どうしても気になってしまった。

あの後ランバートから全てを聞き出しアンリをこのまま城に連れて行き王と謁見するという話だったので急いで転移者に会いに行き王子と結婚したいなら今すぐについてきてと言ったら素直について来たのでランバートに預けた。思いの外上手くいったようだ。


「良いんですよ。だってじゃあなんの為に転移者は転移させられたの?ってなるでしょう。転移者は元の世界の全てを捨てて呼ばれるのに呼んだ方が放ったらかしとか有り得へん!だからこれで良いんです。自分らで呼んでんから自分らで落とし前をつける。それが世の常、人の道理ちゅうもんです。」


アンリは怒りながら言う。確かにそうだ彼女は痛いほど気持ちが分かるだろう。


「まあ貴方が言うならそれで良いか。そもそも僕と貴方は結婚しています。王は重婚なんて認めません。」


「そうですね。だから会長は結婚を急いだんでしょ。」


「ええそれもありますが、早く貴方と一緒になりたかったんですよ。単純な男なんです。」


「ふふ帰りましょう。学校へ。」


「ええ。」




「チル様良かったんですか?」


「何が?」


「ここまで肩入れして。」


「いいよぉ。だって面白かったし。」


「そう、ですか。」


「それに多分あの子は………いやなんでもない!じゃあ次行こうか玉ちゃん。」


「はい組長。じゃなくてチル様。」


「うん玉ちゃん。」


「チル様、いい加減玉ちゃんはやめてください。」


「にゃはは、いいじゃん可愛いから。」


「チル様!」




「先輩は良かったんですか?」


「何が?」


「好きだったんでしょ。あの人が。」


「僕にそんな権利ないよ。」


「今度は誤魔化さないんですね。まあ確かにそうですね。俺達にそんな権利ないです。でも報われないっすね。」


「報われてるよ。あの笑顔を見られただけで僕は充分、幸せだよ。」


アンリがキッドマンの隣で心から笑っている。それだけでいい。


「今日、飲みに行きます?付き合いますよ。」


「僕はお酒飲めないから、それに次の仕事がもう入ってるし。転移者を王子と結婚させるまでが今回の僕らの仕事だったもんね。」


「そうすか。無理しないでくださいね。」


僕は結局何も出来なかったあの時も今も。君は自分でちゃんと運命を切り開き自分で幸せを勝ち得た。おめでとう今度こそ自由に幸せになってね菖蒲。



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