3、同室の女の子
寮母さんが案内してくれた部屋に慌てて入る。
「間に合ったー!」
いや何に?何も間に合ってない。1人部屋だと思っていたけど中にはもう既に女の子が立っていた。同じ制服を着た140センチ位の小柄な黒髪おかっぱの可愛らしい女の子だ。
「えっごめんねノックもせんと開けて!入り直そうか?」
「だっ大丈夫です!」
「良かったありがとう。あなたも1年生?」
「はい、そうです。ハント様ご存知では?」
やばぁ知り合いやったかぁ。
「あのぉごめんね友達よね?」
「違います!恐れ多いです!」
友達を全否定。つら。
「ええ?とりあえず名前を教えてもらってもいい?」
「ハンナです。ハンナ・ローズです。」
と頭を下げる。私は慌てて、
「えっやめてやめて顔上げて!後敬語もやめて!普通に話そ!私はアンリ・ハント。アンリでいいよ!」
「いえ、使用人の身で。」
「えっ使用人?まあとにかく敬語もやめて!普通に話して!」
強引に手を握ると青ざめながらハンナが頷いた。私そういえば鏡見てないけどめちゃくちゃ怖い顔してたらどうしよう。鏡見てみるか?
「ハンナ鏡持ってる?」
「は、う、うん。はい。」
とバラの鏡を貸してくれた。お礼を言って受け取り鏡を見た。
鏡の中に居たのは透き通るような白い肌にブルーの瞳で緑がかった金色のセミロングの髪の女の子が居た。
「嘘やん!これ私?めちゃくちゃ可愛ない?やばば。何より目よ!猫目大好き!ちょお聞いてくれる?前は垂れ目やってんけど後輩に先輩の馬鹿さがその垂れ目によって余計に馬鹿に見えますね、垂れ目馬鹿ですって言われて!それからほんまに猫目を願ってた!いやーめちゃくちゃ嬉しいんやけど!ひゃっほーいいえーい!」
目の前にいたハンナがキョトンとした後吹き出し笑い出した。
「アンリ様、お、面白い方なんですね。ふふふってあすみません失礼な事を!」
と慌てて謝るのでこちらも慌てて返す。
「いや笑って笑って!仲良くやって行こうね3年間!」
「ふふふはいありがとう。って3年間?5年間では?」
「あははははは、そうだ私が何組かご存知?」
「ええ同じクラスの2組だよ。」
「ありがとう!明日一緒に行ってもいい?」
「私はいいけどアンリ様、アンリはいいの?」
「逆にお願いします。連れて行ってください。」
「うん分かった。というか入学式の後何してたの?」
うっ痛い所を。
「ひ、昼寝を。」
「昼寝!アンリ様ってあのアンリ・ハント様で合ってるよね?」
「多分?たくさん居るの?」
「いいえこの学校には1人だけ。」
「ならさっき名札貰ったからほら!」
と制服に付けた名札を見せる。ハンナがまじまじと見た後小声で言う。
「貴族様からの噂と全く正反対の人だ。」
「噂?」
「気にしないで!さあもう寝ようか!」
と言いハンナが奥の小さな部屋に歩いていく。
「どこに行くの?」
「私はこっちアンリはこっちだから。」
と指さすハンナの部屋は2畳程しかなく私の方は20畳位あるそういえば生徒の部屋にしてはでかない?しかもキングサイズのベッド。ハンナはシングルなのに。
「いやそれはあかんな。ちょっと寮母さんに話付けてくるから待ってて。」
と部屋から出て何でもお申し付けくださいと言っていた寮母さんの部屋のドアをノックする。
すると寮母さんが部屋からすぐに出てきてくれた。
「これはこれはアンリ様如何なされました?」
「すみません。急な話で申し訳ないですが大きいベッドをもう一つ私の部屋に置いていただけますか?」
「あれはお気に召しませんでした?」
「いえいえあれと同じ物でいいのでもう一つお願いします。」
と頭を下げると寮母さんが慌てて言う。
「顔をあげてくださいアンリ様!すぐにその通りに!」
と言いおとうさーん!と奥から旦那さんを呼んで私の部屋にもう一つ超特急でベッドを組み立ててくれた。シングルのベッドを片付けてもらって全て終わった後もう一度頭を下げる。
「無理を言って本当にすみませんでした。ありがとうございます!」
と言うとまた慌てて、
「いえいえとんでもない!お易い御用です!」
と叫んで出て行ってしまった。ハンナはハンナでずっと黙っている。そんなハンナに言う。
「ハンナ、この線からこっちがハンナの陣地でこっちが私の陣地。この奥の部屋は物置にします。いい?」
「…えっ…ああ!うん分かった。」
「よーしじゃあ寝よ。昼寝もしたけどベッドもええね。」
と横になった途端すぐに眠ってしまった。