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21、先輩とあの人


「先輩あの人に入れ込み過ぎじゃないですか?」


「んーそんな事ないよ。今回は僕のミスだからサポートするって話し合ったでしょ。あの王子は少し厄介だし彼女がなるべく傷つかないようにって。本来ならたくさんの付き人がいて周りから幸運をもたらす存在だと崇められていじめとは無縁だったのに僕のせいでアンリの中に入ってしまったから。」


「本当にそれだけですか?」


「本当にそれだけだよ!どうしたの急に改まって。」


先輩がこちらを向く。あの腹立つニヤケ顔で。


「…俺知ってるんですよ。あのアンリの中の転移者、猫丸がって言ってましたけどちゃんとあんたが選びましたよね。わざわざ15歳じゃないあの人をあんたが選んだ。それにいじめに関して言えばいじめを受けやすいのは転移者ですよ王子の寵愛を受けるんですから。」


「えぇー違うよぉー。知らないもん。」


口を尖らせて言う。こんなにつついてもいつもの先輩のままだ。


「あんたあの人の事ずっと見てたんでしょ。あの人がボロボロになっていく様を見ていた。だからあの人の記憶をいじってわざわざアンリの中に入れたんでしょ。あの人にどんな形でもいいから幸せになって欲しいって思って。アンリなら貴族に嫌われているけど権力はあるからある程度、自由がきいて自分の意見が通る。転移者になれば意思関係なくほぼ100%で王子に選ばれて王家に縛られます。それに本来のアンリの望みは王子と結婚する事だったから一石二鳥ですしね。まあ記憶は消えてますけど。」


「ええ考え過ぎだよ!ニコッ。」


口で言われると余計に腹が立つ。


「でも残念でしたね運命は変えられない。可哀想にアンリを犠牲にしてあの人を変わった形でこの世界にねじ込んだのに。ああでもアンリは可哀想ではないか今とてもいきいきと生活してるし元来チヤホヤされるのが好きな女性でしたからね。王子に愛されないからいじめも受けないし。」


「運命?」


先輩の頭にアンリの事など存在しないようだ。確かにアンリは酷い女だたくさんの人を傷付けた。


「転移者は絶対に王子に選ばれるそれがこのシナリオの筈だった。だけど王子は偽物の転移者に惹かれる事無くまっすぐあの人に近付いてきたじゃないですか、アンリの皮を被った本物の転移者にね。王子に選ばれたらどんな結末になるか分かってるんでしょ?このままいけばあの人は先輩が1番恐れている籠の鳥になってしまう。残念でしたね先輩。」


「そう?まだ分からないよ彼女はしっかり自分を持っている女性だからね。決められた運命なんてきっと跳ね除けるよ。僕はそう強く信じている。それに会長だっている。」


「それは願望ですか?随分、意地らしいですね。それもそうかだって先輩はあの人をあい…。」


先輩が俺の言葉を遮って叫ぶ。


「言うな!口に出すな!出さなければ真実にはならない。」


「先輩?」


「嘘だって強く信じれば真実になる。チル様が最後に担当した転移者、いや転生者かその女性に最後にチル様が言った言葉、完全に嘘だったけどその言葉は転生者の中で真実になった。あの希望が産まれた日、僕はその瞬間を確かに見た。だからきっと君の言う運命も言葉にさえしなければ強く信じなければ真実にはならない!」


あの軽薄な先輩が思い詰めた表情で言う。入れ込み過ぎるなと昔先輩が言ったのに。もう既に先輩は底なし沼に両足を突っ込んでいるようだ。


「あれは偽物なんかじゃない!手違いでもない本物の転移者なんだ!チル様が…あの人は正しい。」


先輩が俯き声を震わせて言う。子供が怒られた後みたいに泣くのを我慢し意地を張って。


「チル様ってあの上司の。」


「そうだ。あの人は正しいんだ。」


「俺に嘘ついてその正しい上司に許可を取らずここまでやってる。俺達はもう既に取り返しのつかない程話に関わっているそれこそ上司になんて言われるか。それでもやるんですね?」


「うん、やる。」


「分かりました。最後まで付き合ってあげます。」


先輩が今にも消え入りそうな声で、


「…頼む。彼女を絶対に1人にはしない。もう二度と。」


と絞り出すように言った。


今から2人で乗り込む船は故障船だ。進めば進む程沈んでしまうに違いないそれでもこの人に付いて行く程に先輩が心配だった。




「会長!名案が浮かびました!」


「なんですか?」


今は2学期終了後の休み期間で2度目の資格講習の日だ。あれからホルトが毎日のように話しかけてきて少し収まっていたいじめっぽいものがまた再開し始めた。それ故に思考は馬鹿まっしぐらだった。


「結婚しましょう!私と!そしたら誰も私に求婚してこないしハッピーハッピーウィンウィンです。」


「ぶふっ。」


会長が紅茶を噴き出した。ハンカチで口元を拭きながら私を睨む。ええ、怒っているぅなんでぇ。


「貴方ね!付き合うと結婚じゃ全然違うでしょ!分かってます?脳みそ入ってます?」


「やっぱり駄目か…。じゃあどうすれば良いんですか?今は休みで落ち着いてますけど2学期の終業式の日、体育館の靴も上履きもダンス靴も全部無くなりましたからね!」


「もう裸足でいればいいんじゃないですか?」


「そういう問題じゃない!その前は教科書がトイレのゴミ箱に捨ててあって。その前は階段の上から誰かに突き飛ばされてもうイライラする!」


「怒ればいいんじゃないですか?今回のいじめは貴方の過去関係ないですから責任取らなくて良いですし。」


「うわぁいじゃあ片っ端からシバいて良いですか?」


「良いですよ。この学校の番はればいいんじゃないですか。」


「うわぁいじゃあまずは会長からですね。会長タイマンステゴロですよ。」


「やですよ。馬鹿ですか?僕が病院送りになったら貴方本当に孤立しますよ。」


「……。クソが!」


「わあうるさ。とにかく休み期間は前回と同じでドライ君に付きっきりで一緒に居てもらってください。彼は貴方の用心棒だと噂は出回ってますからさすがに手は出してこないでしょ、午後からは僕が一緒に居ますから。休みが終わって女子だけで合同がある日はあの方を頼りなさい。」


「組長?」


「ええ。彼女は今は完全に貴方の味方ですからね。」


「組長本当に可愛いですよね。私が男だったら彼女にしたいですもん。」


「はいはい。彼女も割と上位の貴族ですし僕の事以外では礼儀正しいですから彼女に楯突いて来る馬鹿は居ませんよ。」


「分かりました。」


「この休みはすぐに終わります。多分貴方への仕打ちが消える程の期間ではない。3学期覚悟して望みなさいね。」


「はい。片っ端からシバきます。」


「おい。」






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