12、噂と班決め
「アンリ・ハント?君の方がよく……ああ俺らから見てってこと?そうだな一言でまとめるなら怖い。口調も顔も女子じゃない。でも最近大人しいな。」
「なんか女子にいじめられてるらしい。」
「ああーだから特進コースに入ったのか?」
「そうかも。同クラの女子に何か言われたって聞いた。」
「お前よく知ってるな好きかよ。」
「違うけどなんか特定の王子狙いの女子に何か言われてるって。」
「へーまあでも俺たちはもう仲直りして今は仲良いからな。勉強教えてもらったりしてて君も知ってるだろ。」
「女子の会議には呼びません。貴方も知ってるでしょ誰かが言ってたの。アンリ・ハントは王子を知ってて皆に黙ってアプローチしてるって。」
「そうよ独り占めする人とは相容れないわでも…。」
「ええ…あの噂の…先輩とお付き合いしてると噂になっててライバルにならないならそれなら別に良いかなって。前みたいに突っかかって来ないし。」
「…貴方は知ってるだろうけど…女子の間でもアンリは王子にアプローチしてる派と先輩と付き合ってる派と分かれてて、王子にアプローチしてる派の女子達はアンリをよく思っていないけどやっぱり家が怖いから強くは言えないみたい。」
「でも特にランバート様王子派の取り巻き女子達は無視したりしてるわ。ランバート様がアンリの事を何か言ってるみたいで。」
「……王子にアプローチしながら先輩と付き合ってるアバズレだって言ってるのを聞いた事があるの。それはさすがに酷いと思うだからその事は私達、信じていないの。」
「どうしてって…あのサロンでキッドマン様といる彼女は以前と違ってとても穏やかな笑顔で緊張してなくて何よりずっと笑ってるんです。あんな所見せられたら…ねえ?」
「ええ2人の世界に居るって感じでした。私達には見せない笑顔だったもの。」
「クラスで?うーんアンリ様はダンスが苦手でひたすらに相手の足を踏むから相手になってくれる男子が居なくて。ああ!よく気が付く!私がダンスの靴で靴擦れをおこした時もすぐに気が付いて絆創膏を貼ってくれました。」
「えっいじめ?アンリ様は高位の貴族ですしそれにテストの時男子相手に怒鳴りつけたのを見てた子が居て…そんな方をいじめる命知らずいるのですか?」
「ああでもそういえば他のクラス…あの王子候補が2人いるクラス…。」
「ランバート様とホルト様のクラスよね?」
「ええそこはあまり良くない噂を流しているみたいです。」
「いいえどういたしまして。私達は今のアンリ様は好きですよ。」
「ハンナ!お帰りなさい!」
「ただいまアンリ!どうだった講習は?」
「うん良かったよ!何よりタダやし!そっちはお家はどうやった?」
「うんゆっくりできたよ!婚約者にも会えたし。」
「ヒューラブラブー。」
「もうやめてよ2学期もよろしくね。」
「ええこちらこそよろしく。」
休みが終わって2学期が始まった。2学期の最初の行事は会長が言っていた通り校外学習からだった。
「ね僕とペアになってて良かったでしょ?」
「はい本当にありがとうございます。」
ペア作りの時間が始まると皆、私と目を合わせてくれなくなったのには笑った。ほんまに草。
「泣かなくても大丈夫見捨てたりしませんよ。仲間はずれされてる友達のいない可愛い恋人を。」
「胡散臭い会長ありがとう。愛してる。」
「はいはい。」
「おい。」
また体育館の隅でごっこ遊びをしているとグレアム兄弟が現れた。2人並ぶと圧巻だ。でかい。壁みたい。皆が居る方に立っているので私を守る壁みたいだと一瞬思った。
「ハント氏ー久しぶりでござる。」
「あーグレアム氏!寂しかったでござるよー!」
ひょろひょろとしているグレアム氏に抱き着く。グレアム氏が頭を撫でてくれる。なんかお兄ちゃんみたいだ。
「わー可愛い後輩にそんな事を言って貰えるなんて拙者感極まって泣いてしまうでござるー。」
「泣く気配ゼロで草。」
「とにかく班はできたし一件落着でござるな。後は高みの見物としましょうぞ。」
「おい聞けよ。」
「輩に絡まれてる。怖いお。ドライ氏助けて。」
「先輩いつもこんなのに付き合ってるんですか?」
いやに冷静に私とグレアム氏を見てると思ったら弟君が静かに会長に話しかけた。会長も冷静に、
「無視していいですよほっといたら飽きてやめるんで。」
と言った。
「嫌だ!嫌だ!ほっとかないで構って会長!寂しくて死んじゃう!」
「拙者も!拙者も!」
「うるせえから黙ってろ。」
「「ぴえん。」」
弟君に静かに言われて大人しく隅に2人で座った。会長と弟君は先生に決まったメンバーを言いに行った。
「グレアム氏気にかけてくれて嬉しかったです。ありがとうございました。」
体育座りで前を向いたままグレアム氏に言う。先生の所の列に2人が並んでいるのが見える。
「なんの事でござるか?」
「嘘が下手すぎでは?」
「拙者、誠実で紳士なので。」
「ええほんまに。弟君のおかげで休み中、嫌な思い1度もしなかったです。ありがとうございます。弟君にもお礼を言ったら俺は別にってほんまに紳士ですね。」
「ええドライは良い子なので甘えてればいいでござる。拙者や会長にも勿論トッド氏も…あまり来ませんが。」
「ありがとうございます。」
と列に並ぶサムが目に入った隣には王子候補のランバートが立っていて仲良さそうに笑い合っている。恐らく同じ班なのだろう。
「さあ行きましょうか。この後は班に分かれて作業ですよ。」
「「はーい。」」
と戻ってきた会長と弟君の後に付いていった。




