11、グレアム氏の弟
「ちょっと聞いたんだけど学校で…いじめられてるの?一般教養の方まで噂が流れてるんだ。」
「ああーうんまあーうんどうだろう?陰口とか位だし。」
「そっか。友達は?」
「居ると思う……でも私が怖くて言う事聞いてくれてるだけかも……。」
「そっか。あの僕は何があっても味方だから!僕も休みは家に帰るし心配だなぁ。とにかく気を付けてね。」
「うんジョンありがとう。」
ジョンが噂を聞いたらしく私に聞かせてくれた。テストをカンニングしてると、期末テストも1位だったのでその話が特に出回っているらしい。他にもある事ない事。
「じゃあそろそろ戻ろうか。」
「うん。」
「サムおはよう。今日のペアよろしくね。」
うんこちらこそよろしく。
「なあちょっといいか?」
珍しくaが話しかけてきた。
「何?どうしたん?」
「…あのさ…ここ…教えて欲しいんだけど。」
と数学の教科書を開きページを指さす。照れているのか顔が赤い。
「ええよ。勿論。」
a,b,c,dとはそこから急に仲良くなった。有り得ないが漫画が好きらしく話が合いびっくりだった。そして1学期が終わり1ヵ月の休みに入った。
学校でタダの講習がほぼ毎日あると聞いて私は家には帰らず学校で休みを過ごす事にした。それにしても同室のハンナには頻繁に両親から手紙が来ていたのに私には来ない辺り家族関係が上手くいってないようだ。ハンナとジョン、サム、グレアム氏は家に帰り会長は学校に残るようだ。
午前は通常の特進コースの振り返りと予習、午後からは資格取得の講習で司書資格もあり全ての学期休みの5年かけてとるらしいので私も取る事にした。司書資格は実習メインで1年生から5年生まで合同だが人気がないらしく5人程と会長が言っていた。座学は専ら個人で勉強しろというスタンスらしい。人気の講習はやはり料理と刺繍と声楽で女子も男子も20人以上のようだ。
会長と一緒に資格取得の教室に行くと既に男女が3人座っていた。という事は私も含めて5人か。
「それにしても貴方が司書資格なんてびっくりです。」
「えっだって前も持ってたし良いかなって。資料探す時やっぱり便利ですからね。」
「前?まあそうですね。それにしても上級生が卒業したら僕1人で受ける事になっていたので1年生が2人も入ってくれて良かったです。それに彼は……。」
「2人?」
「背の高い男の子。あれはグレアムの弟ですよ。貴方と同じ特進コースです上位10名にいつも入っていますよ。」
「グレアム氏の?」
私の声が聞こえたのか背の高い男の子が振り返りこちらに歩いてきた。
「ええそうです。ああほらこっちに来ます。」
「どうも。」
「こんにちはアンリ・ハントです。いつもお兄様にはお世話になっています。お名前を聞いても?」
「ドライ・グレアム。」
確かにドライだ。特進コースにこんな子居たかな…?いや居た確かに午前中の講習に居た1番後ろの席に。私は1番前の窓側の1番端に座っていたので接点はないがもしかしたらいつもの授業も1番後ろの席なのかな?それならあんまり後ろは見ないし分からんかも。出席も端末だから名前呼んだりとかもないし。
「ドライ君、君は何故司書資格を?」
「……別に……何となくっす…。」
会長の質問に無愛想に私をチラッと見て答える。背が高く全体が長めのスポーツ刈りでグレアム氏と少し雰囲気が違うがやはり顔は似ている。
「へえ、そう。」
会長が流し目で弟君を見た。何かを試すように。なんだこのただらなぬ雰囲気は!
こわ、関わらんとこ、とそっと会長から離れようとするとまた首根っこを掴まれた。
「なぁに逃げてるんですか?この空気は多分貴方のせいですからね。」
「私?どうしてですか?何もしてないのに!」
「とにかく座りなさい。君もなるべく近くに居ろと言われてるんでしょうほら横に座りなさい。」
「っす。」
と素直に会長の右隣に座り私は左隣に座らされた。なるべく近くに?会長の?ああ会長は優秀やしそうね。納得して私も講習に真面目に取り組んだ。
講習は2時間程で終わり上級生の男女2人は付き合っているのか手を繋ぎ颯爽と先生よりも早く帰ってしまった。
「そういえば1、2年生でペアを組む校外学習のペア決まってるんですか?」
「何の話ですか?」
「ああ不良の貴方は入学式バックれたんでしたっけ。」
「おい。」
「じゃあ優しい僕が組んであげます。」
「うわぁーい、すぇーんぷぁーいお菓子私の分までおねげぇしやすねぇー。」
「はいはい。君はお兄さんと?」
「っす。兄貴が知らねぇ奴は怖いらしいんで。」
「じゃあ班も一緒に組みましょうね。どうせ彼女は誰も組んでくれないので。」
「おいコラシバくぞ。」
と会長に殴りかかると弟君が突然ふきだした。
「ふっあんた本当に可笑しい奴だな。兄貴の言ってた通りの女だ。じゃあこれからよろしくなアンリ。」
そう言って弟君も行ってしまった。
「やだぁ急に優しい笑顔とかぁ。少女漫画みたーい。」
「貴方がヒロインの少女漫画なんて終わってますね。」
「おいコラ黙れ胡散臭男。」
「それにしてもああいうのが好みですか?」
「うー、うーんギャップ萌えですね。好みとかは分かりません。」
「あああのギャップ萌えね。まあこれで安心ですね僕もさすがに授業中は助けには行けないので。」
「?なんて?」
「貴方、馬鹿みたいですね。」
「出たぁ馬鹿みたい。やっぱり覆せない。何度生まれ変わっても。ビクビク。」
「馬鹿ですね。さあ行きましょう部室に。」
「へいへい。」
休み中はなんだかずっと弟君と会長と一緒だった。と言っても弟君は常に私の後ろに座るという謎の行動を繰り返し昼食も黙って食堂まで後ろをついてきて一緒の机で無言で食べて先に食事が終わってもじっと私を待っていて極めつけはトイレ中もトイレの前で待っていて弟君がトイレに行く時は、
「絶対に動くな。ここで待ってろ。」
とどちゃくそに怖い顔で言われ男子トイレの前で待機させられる。そして午後から会長と合流するとやっと解放される。
「いや監獄か!」
「うわびっくりした。ずっと黙ってたくせになんです急に。」
「だって弟君ですよ!あの人ずっとついてきてトイレまで!」
「でも彼に直接文句を言わないって事は分かってるんでしょ理由が。」
「まあ、はいそうですね。多分グレアム氏が気をきかせてくれたって事ですよね。」
「ええ、実際誰にもからかわれなかったでしょ。」
「はい、だから黙ってます。ありがたいです。彼が何故あそこまでしてくれるのか分からないですが。」
「ええとにかく休みの間はこのまま気にかけて貰っていればいいですよ。僕は恋人として貴方を守ってあげますから。」
手の甲にキスをされる。サロンでお茶をしましょうと資格講習終わりに無理やり連れてこられて外のテラスで話をしてたらまたこれ見よがしにキス。
「おいおい。本当にやめてくれよあんちゃん今日は割と人がいるぞ。」
「ええ今日は貴族がある理由で呼び出されて学校にいるのでわざわざサロンに連れ出してみました。」
「みましたじゃねーよ。本当に会長、恋人が出来なくなりますよ。」
「大丈夫です。貴方に心配されなくても僕はモテるので。」
「あはははっ!胡散臭男なのに?」
「おい。」
「わあ珍しい。会長がおいだなんて。」
「はいはい。さあ部室に行きますよ。」
「ええ本当に見せびらかしにきただけ?草。」




