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高校生、戦国を生き抜く  作者: 神谷アキ
1、戦国時代へ
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 奥にめちゃくちゃ貫禄のある人が座っている。その横には、ズラーッとドラマとかで見るような感じでゴツい人たちが皆一斉にこっちを見てくる。



(ひいっ、こわっ!)



 敏之の後ろに隠れようとしたが、そんなことは気にもしないという風に颯爽と歩き出した。もちろん、袖を掴まれている俺も道連れだ。


 じろじろと遠慮のない視線に、だんだん耐えきれなくなってくる。しかも



「あやつがあの……」


「東にある村は収穫が………」


「この間の戦でも………」


「ただの村人ではないか」



 ヒソヒソ...ヒソヒソ……


 皆がヒソヒソ話しているけど聞こえてるって! 俺が何⁉︎ 収穫? 戦なんて終わってから知ったよ! 最後の人なんて当たり前のこというなよ! 農民の仕事は畑を耕すことなんだから! 他に何があるの⁉︎


 両側から見られて萎縮していると、1番偉そうな人の前まで来てしまった。敏之につられて座り、頭を下げる。



「先日お話しした、あの案の発案者である私の友を連れてきました」


「は、初めまして! 田辺真人といいます!」



 緊張して噛んでしまったが、しっかり言えた。それよりも案ってなんだ?



「ほう、お主が……。家名があるのか。儂はそこの敏之の父で、この斎賀領の領主だ。」


「だまっててごめん」



 あー目元とか似てるなー。将来は敏之もこんなゴリゴリマッチョになるのか。想像できないな。へえーー……。



「……えっ! 領主様!? の息子!?」



 様付けで呼ばれているのを聞いてから、お金持ちで少し偉い人なのかなーって思ってたけど、偉いじゃん! ちょっとじゃなくて領主だよ領主! あ、この時代って苗字ないんだっけ?


 親子を見ながら頭の中がパニックになっていると、横にいる人から声をかけられた。確か上座に近くなる程偉いんだよな。じゃあこの人もかなり……。

何を言われるかと緊張してゴクリと喉を鳴らす。



「某は長岡重兵衛と申す。先の戦はお主のおかげで勝つことが出来たのだ」


「お、私のですか? それはありえませんよ。戦だって終わってから知ったんですから。」


「いいや。敏之様を通じてお主のことを聞いたのだ。ただの思いつきでも畑には効果があったのでな」


「畑?」


「あれだよ真人。堆肥。」


「あ、あー! あれか。でもあれって斎賀のお殿様が……。あ、そっか! そういうことか!」



 やっと繋がった。あの時は斎賀のお殿様と若様すげーなー、ありがとーって思っていたけど、よく考えたらそれって敏之じゃん!そういえば俺肥料が臭いのが嫌で、堆肥とか作ればいいのにーって言ったよ。それを試したのか。



「本当か自信はなかったんだけど、試してみるのもいいかなって。それで真人が言っていたことを試してみたんだ。そうしたら例年より収穫量が増えたらしくて。他の村でもやるように伝えたんだ」


「そうだったのか。でも、戦は?俺何も聞かれた覚えないけど……」


「1ヶ月半くらい前さ、真人が話していたでしょ。戦は戦わずに勝つのが1番だって。あの時は何も言っているのかあまりわからなかったけど。戦は膠着状態が続いて兵が疲れていたから、どうにかできないかと思って。だから外からじゃなくて中から責めることにしたんだ」


「中から?」


「そう。兵たちは農民が大勢いるから、皆早く戦を終わらせたがってる。だからこっちに寝返ったら田畑の保証と少しの間の減税を呼びかけたんだ。あと、相手側が出来るだけ疲労するように夜も軍を分けて襲撃しては撤退するのをくりかえしたんだ」


「おぉ、意外とえげつない」


「うん、相手側は精神状態も不安になるし。夜も安心して眠れないからいつか我慢の限界が来る。そしたら、この間農民達が反乱を起こしてね。見事私たちの軍が勝ったんだ」



 そんな背景があったとは…。というか、それって敏之達の手柄じゃない?

 俺戦わずに勝つのがいいとか格好つけて言っただけだし、そんな作戦考えてないのに。



「その案を考えた者が居ると聞き、今回会ってみたくなったのだ」



「いやいや案も何も全てあなたのお子さんの考えですから」

 


 そういえたらどんなに良かったか……。ゴリゴリマッチョに意見なんて言えるはずもなく、頭の中で反論するにとどめ、ただ聞き役に徹した。



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