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「ほら、起きて。学校遅刻するわよ!」
「うぅん……あとちょっとだけ……」
そう言って薄目を開けると家の天井が木になっていた。ガバッと起き上がり横を見るとお婆ちゃんが座っている。
「おや起きたのかい。ちょうど起こそうと思っていたんだよ。朝ごはんできたからお食べ」
そう言って立ち上がると歩いて行った。
「戻れないか……」
もしかしたら夢かもしれないと、目が覚めたら戻っているかもと期待していたが、やはり現実は残酷だ。
ため息をついてコリッと首を回しいい匂いのする部屋へ行く。
グゥゥゥ~……
どこにいても腹時計は正確だ。ちょっと笑って部屋に入ると質素ではあるがご飯が用意されていた。
「ほら、お食べ」
そう言ってお茶碗を渡してくれる。昨日も食べたはずなのにご飯が美味しく、涙が出てきた。お母さんとか、いつも怒られてばかりだけどお父さんの顔が浮かんできて拭っても拭っても涙が溢れてくる。
ぐすぐすしながら食べていると正面のお婆ちゃんとお爺ちゃんが話しかけてきた。
「昨日ね、この人と話したんだけど良かったらしばらくこの家に住まないかい?娘もいないし若い働き手がいなくてねぇ……。わしらも年だし力仕事をしてくれる男手がいると助かるんだよ」
そう言って手拭いを渡しながら話してくれた。お爺ちゃんは無口だけど隣で頷いている。
急に知らないところへきたことへの不安、こんな時でも美味しいご飯、住むところが見つかってホッとしたのやら、お婆ちゃん達の優しさやらでこの日の朝ごはんは泣きっぱなしだった。
それからはいつ現代に戻れるかもわからないため、必死に働いた。収穫し終えた畑を耕していたら、筋肉痛になってお爺ちゃんと同じくらい腰が低くなったり、トイレは水洗なんてないから臭くて息を止めてないと入れないし。息が続かなくて思いっきり吸った途端にウエッてなったりしたけども。
ご飯炊くのもすっごく大変!ずーと火加減を見てなきゃ行けないし、水も村の共用井戸まで汲みに行かなきゃ行けない。
「あちぃ~、あ、水多すぎた?」
今まで料理なんてしたことなかったから、結構ミスをしてしまう。バイト先でも、レシピを覚えてさあ実食!ってなったら接客だけでいいよって言われたんだよな……。
ちょびっとだけ昔の人を尊敬しながら、ひとまずはちゃんとした生活を送れている。
そんなこんなで、おそらく戦国時代(お婆ちゃん達の話の様子から)に来てから2ヶ月とちょっとが立とうとしていた。
今日はノルマも終わり、ご飯前に最近見つけた秘密基地に向かっていた。
村から少し離れたところにポツンと小屋が建っている。誰も使っていないらしく、埃だらけだし物もあまりない。俺はその横に広がる小さな花畑が気に入っている。
小学生の頃、家の押し入れを秘密基地にしてお菓子を溜め込んで怒られたが、ここは押し入れなんかと比べ物にならないほど大きく開放的だ。
屋根の下でぼけーと花畑を見つめているとなんだか気持ちが安らぐ気がする。
ガサッ
いつも通りご飯の時間までぼけーと過ごしていると、後ろで音がした。勢いよく振り返ると、驚いた顔の少年がいた。年は俺と同じくらいか少し小さいくらい?
ここの人たちよりも少しだけ綺麗な服をきている。
お互い見つめあっていると先に相手が話しかけてきた。
「えぇ~と、この小屋に何か用事が……?」
相手も驚いてるらしく、戸惑いながら質問してきた。
「いえいえ!すみません、だれも住んでいないと思って……。最近見つけたのですが、ここの花畑が気に入ってて……」
そう答えると相手の顔はパァッとわかりやすく喜んだ。