13
「うわぁ、賑やか!」
「ちょうど戦が終わって人が多いからね。あ、あっちで串焼きが売ってるよ! 行こう、真人!」
俺に城下町を見させてくれるのでは? と疑問に思いながら敏之についていく。あっちに行ったりこっちに行ったり、ものすごい楽しんでるのはわかるのだけど。片手に串焼きを持ちながら紐みたいなのを売っているお店を眺めている。祭りの日の子どもみたいに。いつの時代でも変わらない光景だ。
「はい、真人の分」
「ありがと」
串焼きにかぶりつくと、タレがトロッとして美味しい。だけどもう少し濃さが欲しい。なんの肉だろう。
「何か欲しいのでもあったのか?」
「ううん、二郎丸に紙紐でもあげようかと思って。今日連れて来れなかったから」
「あぁ、そっか。お婆ちゃん達の家に寄るためにすぐに出てきたからな。お婆ちゃんたち寂しがってたけどお礼言えてよかった」
スクールバッグと、しばらく屋敷にお世話になることを伝えるために一度村に寄って行った。急で寂しがってたけど、快く送り出してくれて良かったし、普段あまり話さないお爺ちゃんが「頑張れよ」って言ってくれたのが本当に嬉しかった。
「それには何が入ってるの?不思議な形だね」
「これ? 教科書とかいっぱいあるよ。テスト最終日だったから数学と英語と日本史…………」
「へぇ、沢山あるね。あとでわた……」
「ああ!!日本史! 敏之、すぐに帰ろう! 俺ちょっとやることできた!!」
「あとで私にも見せてねって……。え、ちょっと待って!」
忘れてた忘れてた!!俺のバカ! 村にたどり着くまでにお腹が空いてバックに入ってたお菓子は食べたけど(最後の現代のお菓子……)それ以来開けてなかった! 村についてからは毎日の生活に慣れるのに必死で気にも止めてなかったし、奥に仕舞われて目につかなかったからね。それにあまり人に見られない方がいいと思って出してもいなかった!
ゼィゼィと息が切れるまで走り続けようやく屋敷に帰ってきた。敏之もついてくるがまだ余裕があるみたいだ。これでも武将の息子ってか……。
「敏之、ごめんやることができたから! あと悪いんだけど俺の部屋には誰も入らないように伝えて!!」
「いいけど、突然どうしたの?せっかく町に出ていたのに」
「ごめんまた今度!!あとでな!」
せっかく連れてきてくれた敏之には悪いが、放っては置けない。早く早くと足を動かす。
「あ、真人! 帰ってきたのか! 置いていくなんてひどいぞ!」
「ごめん二郎丸! 今度埋め合わせしてやるから!」
「あ、おい!」
自室は行く途中二郎丸には会ったが、適当に返事をして通り抜ける。何か言っていたが、教科書のことが頭にいっぱいでそのまま部屋に向かった。
部屋に入ると大急ぎでバッグを開ける。日本史の教科書を探し出し、斎賀を探す。
だが、どこを探しても見つからない。
「どこだよ斎賀家! どこにも載ってないとかあるか!」
教科書の最後の地図や戦国時代の範囲を探しまくったけど、斎賀なんて家はなかった。弱小ですぐに滅ぼされ、歴史にも全く違う名を残さなかったのか、あるいは……。
「似てるけど、史実じゃない?」
俺はずっと過去にタイムスリップしてきたと思っていたけど、違う世界の過去にタイムスリップしたとか? よくパラレルワールドとかいうじゃない?
「まじかよ……」
力が抜けて敷布団にうつ伏せに倒れ込んだ。