ナンパ
さて、街にやってきたのはいいものの。
「どこにいくんだったかしら。」
「えーっと……ティアラちゃんどこに行きたいっ……んだった?」
なんだこの棒読みな芝居は。
「マリンおねーさま、いまはやりのお店につれていってくれるって話デショ?」
「そうだったわ。流行りと言えばあそこね。」
「そうね。あそこっ……だわ。」
ウォル子ことリジー、毎回「っす。」って言いそうになるのを何とかしろよ。
「かわいいものがたくさん売っているのよ。」
「うわーたのしみだなぁ。」
ん?何故止まる?
ウォルターもリアムも何故か立ち止まってしまった。
視線で「?」と伝えるが、二人からも「?」と返ってくる。
えぇい!!
「早く行かないと行列になるくらい人気のお店なんだよね?ほら。早く行こうよ!!」
「そ、そうね。」
「いこういこう。」
案内をしてもらっている設定の私が仕切るのはおかしな気もするがなかなか進まないので無理やり押しきることにした。
棒読みなやり取りをしながら歩いていく。
ちょっとはなれたところからついてくるノアがお腹を抱えて笑い転げるのを我慢しているのをアレンが叩いているのが見えた。
笑いすぎだろ。
しかも、なんだかさっきからチラチラとすれ違う男の人たちがこっちを見ている。
きっとうちらの馬鹿馬鹿しい芝居が目立っているにちがいない。
早く店に着きたい。
まだ始まったばかりなのにげっそりする。
しかし世の中うまくいかないもので。
二人を軽く睨みながら歩いていると前からチャラそうな二人組がやってきた。
「ねぇねぇ、オネーさんたち。俺たちとお茶でもしない?」
俗にいうナンパだった。
しかも、ここまでベタなナンパなんて始めてみたかもしれない。
「いえ、予定がありますので。」
「うひょー、ハスキーな声でかっこいいねぇ。」
男だからねぇ。
「オネーさんもちょっとぐらいいいと思うっしょ?」
「ちょっ、離してっ。」
腕を捕まれたウォルターが相手の手を振り払う。
二人からすればすぐにでも制圧できるだろうが、女装してるし潜入中(まだ始まってもないけど)だから手出しが出来ないのだろう。
「えー、ちょっとぐらいいいじゃんかよ。」
「よくない。」
「は?あぁ、おちびちゃんは読んでないんだよー。ちょっと黙ってようね?」
あー、もうめんどくさいなぁ。
「黙るのはそちらです。」
「な、にを偉そうに!邪魔をするな。」
「先を急いでいると言いました。お誘いは断りました。それに私のが先に二人と一緒にいました。さて、この場合邪魔はどっちですか?」
「な」
「ちなみに先にそちらが手を出して来ているので、実力(というか魔法)行使も出来ますよ。」
私はわざと首をかしげながら微笑んで見せる。