【閑話】サヨナラリスト(前編)
「もう!本当にあり得ない!!」
何時ものごとくノックもなしに現れたレティシアだったが、今日はご立腹のようだった。
「これ。超特急でやって!」
何かの紙の束をアレンに投げる。
「は?これ、お前の仕事では?しかも、提出期限間近。」
「やって!!もう無理なの~。」
感情の起伏が激しい人だ。
怒った次は、泣き落としか?
アレンは鬱陶しそうな顔で諦めたぞ。
ノアはこの空気は気にならないらしい。
「なんでこんなギリギリになっちゃったの?」
「それが聞いてよ!ちょっと前にね、合同で仕事したのよ。そしたら、むこうが「報告書はやっておきます」って言ったのよ。なのに今日、上から「出てないぞ」って言われて。あいつに聞いたら、「そっちで何とかしてください」って。意味わかんなくない!」
あー。そんな感じね……
「それは、ひどいね。怒るのも当然だよ。」
「でしょう?もー、ほんとにありえない。」
「その仕事をこちらに回すのもありえない、だがな。」
三人は仲良しだねぇ。
「だから、癒してー。」
「な!ちょっと、こっちにこないで!!」
急に方向転換したレティシアに捕まった。
「良いじゃない。すこしぐらい。」
「レティの場合は少しじゃない。」
「そう?」
「そう!!」
「仲良しっすね。」
「仲良しじゃないから。」
「えー、仲良しじゃないの?」
「……早く離れてくれないと怒るよ?」
「怒るの?でも、怒った顔も可愛いからいいの!」
なにその、惚れた相手ならなにしても可愛い理論。
「でも、なかなか本気で怒るのも疲れない?」
「……そうねぇ。アイナはそれほど怒らないわよね。」
「いやこいつ、怒りますよ。」
「一気にドカンとくるっすね。」
まぁ、そうだねぇ。
「小さなことに怒らない秘訣は?」
「さぁ?」
「えー、何かあるでしょう?」
「小さくはないけど、怒らずにやり過ごす方法はあるよ。自分ルールだけど。」
「なになに?」
「サヨナラリストにいれる。」
「なにそれ?」
「サヨナラリスト?」
リストに入る人は、ものすっっごく嫌いな人。で、毎日顔を合わせるし、必要最低限なコミュニケーションをしなければならない人。
この条件から外れるとリストから消えていくシステムである。
「そう。ちなみに今入ってる人は、ちょっと前まで入っていた人は、理不尽に説教してきた女教師とクラスメイトの戸田さん。」
「なにしたの?」
「教師の癖に私に私の話を一向に聞かず首を絞めた人。もう一人は、調理実習の買い物に来ず、当日たらふく食べたのに割り勘請求したら、「なんであんたなんかにお金払わなきゃいけないの?死ね」って言って私にだけお金を払わなかった同級生。」
「理不尽すぎる……」