飴好きなあなた
「うわっ!」
棚をジロジロと見ていたら、足元に置かれていたものを蹴飛ばしてしまった。
どうやら、凛の鞄のようて中身がぶちまけられてしまった。
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」
小さい声でひたすら謝りながら、鞄の中に荷物を戻していく。
「ん?」
最後の一つと手に取ったどぎついんピンクの巾着ががさりと音を立てた。
なんだろう?
こんな巾着持ってなかったよな。
持ち上げると同時にコロンと中身が一つ転がりだした。
「なんだ?」
拾い上げてよくよくみれば、それはべっこう飴だった。
どうやら凛は飴が好きらしい。
巾着の中にはたくさんの飴玉が入っていた。
巾着に飴を戻して鞄に突っ込んでおく。
さして発見もなく、ノアの方へ戻ろうとするとノアはのんきにナンパをしていた。
お前は何をしているんだ。
半目でやり取りを眺めていると、こちらに気づいたようだった。
「おかえりー。何かあった?」
「特には。」
「そう?あ、それでさ、最近なんか変わったことなかった?」
「変わったこと、ですか?」
どうやら、ナンパではなかったらしい。
ノアが侍女さんに最近の凛の様子を聞く。
「特には思い当たりません。」
「そうですか。」
「そういえば、凛は飴が好きなんですね。」
「飴、ですか?……そうですね。そう言えば、最近よく食べてますね。」
「へー。」
それ以外に特に有益な情報は得られず、お暇しようかとしたときだった。
「リン様!!」
どやどやと入ってきたのは、第一の方々だった。ひいふうみい……五人もいるな。
そのうちの一人がすぐに私たちに気づき、舌打ちをする。
「なぜお前たちがいるんだ!!」
私だって来たくなかったんですけど。
それなのにその言い方されると腹立つな。
「わ、私がお願いして来ていただいたんです。」
控えていた侍女さんたちがうんうん頷いているので、どうやら総意らしい。
「なんで俺らより早く来ているんだ。」
ギリっと奥歯を噛みそうな勢いで、悔しがっているのは何故でしょう。
あっ、この人達、凛ちゃんファンクラブの方々ですか。そうですか。
じゃあ、何を言っても無駄だな。
「そんなことより、リン様は?大丈夫なのか?」
「眠り姫症候群のようです。」
「「「な、なんだってー!!」」」
うるさいな。もしかして、この勢いで目が覚めるかも?
そうも思ったが、凛は目覚める様子はない。
いつまでもこいつらと付き合っていてもしかたがないし……と部屋を出ようとしたときだった。
「今度は俺の番だったのに。折角のチャンスが……」
「流石に俺らが行っても意味ないしな。ポイントがたまる訳じゃないし。女ばっかで入りづらいしな。」