疑惑
お菓子の甘さについての討論会が行われてから数日後。
仕事が終わった後、ウォルターとリアムとくだらない話をしながら宿舎に戻ってくると、なんだかいつもと違う空気が流れているような気がした。
「ん?なんか……」
「なんかあったんすかね?」
顔を見合わせて進んでいくと、とある部屋の前に男性が二人いた。
この前のお菓子の時のお兄さん二人だった。
お兄さんたちもこちらに気がつくとなんとも言えない顔をした。
「何かありました?」
「あぁ、ちょっとな。」
リアムが尋ねると言葉を濁された。
「そうですか。では。」
気にならないと言えば嘘になるが、教えてくれないならば、いつまでもここで立っていてもしかたがない。
回れ右とその場をさろうとすると、お兄さんたちがなぜか慌てる。
「いや、諦めんの早すぎだろ。」
あれ?お納めください、いえいえ、みたいな様式美ってやつでしたか?それは失礼しました。
「では、改めて。なにかあったんですか?」
真面目な顔をして興味があるよ、知りたいよ、っという雰囲気を出しながら、もう一度尋ねてみる。
私のあからさまな態度に隣にいるウォルターとリアムが笑う気配がした。
「実はなリリーの事なんだが」
大変だ。一言目からつまづいたぞ。リリーが誰か分からない。
察するに甘いの大好きお姉さんのことだろうが、ここで口を挟むわけにもいかず、答え合わせは後回しにする。
「あいつ、自由に見えて時間はしっかり守る方なをだ。朝も強いし。だから、朝寝坊とか遅刻とかしないんだよ。」
「なのに今日は、全然起きてこなくて、まさか調子が悪くてなかで倒れてるんじゃないかって。悪いとは思ったけど、中を覗いたら……」
「まさか!」
死んでた?
「普通に寝ていたんです。」
ですよね。
「おい。今変な想像したよな?」
「してない。」
「絶対したっす。」
「してない。」
リアムとウォルターが疑惑の目で見てくる。
ほらほら、お兄さんたちの話聞かなくっちゃ。
「まぁ、たまにはそんなこともあるかと思ったんだか。」
「でも、さすがに一日中起きてこないのは、おかしいよねって医者に見てもらってるところなんだ。」
話が現実に追い付いたとき、扉があいて中からおじいさんか出てきた。
長めの白い髭なんて、生で見るのは初めてだな。
「先生!どうでした?」
「あぁ、特にどこが悪い訳ではなくてだな。眠っているだけのようじゃ。」
「眠っている、だけ?」
「そうじゃ……最近若い娘の間で流行っているものと同じだろう。」
それを聞いてついつい、言葉が出てしまった。
「眠り姫症候群?」
私の言葉におじいさん先生は、フムフムと頷いた。