甘味で喧嘩
「ねえねえ。」
挙動不審の合間に突然話しかけられて、肩がびくんっと跳ねる。
「な、なんですか?」
「これ、なーに?」
興味津々といった感じで、お姉さんに聞かれる。
「細長い方がポックーで、ケーキみたいな方がペロペロキャンディ風パンケーキです。」
「ポックー?」
「ペロペロキャンディってなに?」
「食べていい?」
三人が口々に話しかけてきて、一人アワアワする。
「棒に刺さった飴で「ペロペロキャンディ」っていうものがあってそれのパンケーキバージョンというか、で。食べていいです。」
自分でも何を言っているか分からないぐらいしどろもどろだった。
しかし私のしどろもどろな説明をいい感じで拾ってくれた3人は、各々お菓子に手を伸ばす。
「なるほど。ペロペロ食べるキャンディ風かぁ。」
「うまそう……おっ。うまい。」
「甘さもちょうどいい感じだな。」
喜んで頂けたようで何よりである。
こちらにもチョコの種類がビター、スイート、ミルクとあったので、ミルクを使ったのだ。
てか、だれかチョコ好きの異転者がいたのかもしれない。
「もうちょっと甘くてもいいと思うんたけど?」
「いやいや。女はお子ちゃま舌だからな。」
「はぁ?なに?喧嘩売ってんの?」
「だってそうだろ?大人はビターな感じとか、甘さ控えめがいいんだよ。」
「なにがビターよ、なにが甘さ控えめよ。かっこつけてんじゃないわよ。」
「ちょっと、やめなよ。落ち着いて……」
バチバチと火花が散りそうな喧嘩が始まって、真ん中の彼がかわいそうなくらいオロオロしている。
私に至ってはわれ関せずな顔をしているが、内心は彼と同じようにオロオロしているし、やり取りを見ているだけで吐きそうである。
原因が私が作ったお菓子ならば私にも責任があるのかとどうにかしたほうがいいと思い、洗い物を切り上げて彼らの方に寄って行く。
しかし、寄っていったからといってどうにかできるわけではなく、オロオロするのが二人に増えただけだった。
「二人とも落ち着けって。」
「いやお前は黙ってろ。」
「むしろあなたはどっちの味方なの!」
「え、急にそんなこと言われても……」
ヒートアップする会話についていけれずに様子を見ていると、話を振られた中立の彼が、困った顔で私を振り返ってきた。
「どうしたら……」
そんなこと言われたって、私にはどうすることもできないよぅ。