試供品
「なにか気になることでも?」
マダムに聞かれて一瞬口ごもる。
「いや、言葉は悪いし、人でなしって罵られるかもしれないけど、もう少し人数がいれば、もっと共通点とか発症する条件とかがわかるかなって……」
スゴく悪いことを言っている自覚があるので、後ろめたいにもほどがある。
視線が泳ぐのが自分でもよくわかる。
「あぁ、そういうこと。確かに言葉は悪いけど、一理あるわね。サンプルは多い方がいいものね。」
ついにはサンプル扱いになってしまった。
「そうとも言う。まぁいいや。もし他に新しい情報かあったらまた教えてください。」
「オッケーよ。」
諸々を話をして、さぁ帰ろうとしたところで、マダムがなにかを思い出したように口を開く。
「そうだ。またなにか面白いアイディアがあったらなにか教えて。この前のベッコウアメみたいな感じのやつ。」
「何故急に?」
「それが、売れるものはすぐに類似商品が出るものなのよ。」
「あぁ。」
そうだよね。売れるとわかれば、似たような商品がでたり、品質の良くないものが出回ったりするなんて話は、よくある話だ。
今のところ、香料をいれての飴シリーズを出してはいるが、すぐに飽きられるだろう。
「じゃあまたなにか思い浮かんだら。」
挨拶をして店から出る。
新しい商品と言われたって、すぐになにか思い浮かぶわけでもなく、考えながら歩いていると目の前ににゅっと手が現れた。
「お試し商品です。お一つどうぞ。」
顔をあげれば、メイド服のお姉さんがニコニコしながら、試供品を渡してきた。
コロンと手のひらに転がるのは、小さな包みに入ったものだった。
包み紙に描かれているマークに見覚えがある。
なんだろうと見つめていると、お姉さんが説明をくれる。
「夢心地キャンディです。お買い求めは、占いの館までどうぞ。」
ああ、あそこのロゴか。
とりあえず、お姉さんに曖昧な笑顔で会釈をしておく。
お姉さんは、また他の通行人に飴を配りにいった。
貰ったけど、あそこの店のものって聞いただけで、エグい甘味が食べてもいないのに口のなかに広がったような気がする。
スンスンと匂いを嗅いでみると、相も変わらず甘ったるい匂いと、その中に桃のような香りもする。
うぇ、「さりげなく」って言葉をしらないのだろうか。
ほのかに香る、とか。
飴は食べるきにならず、手のなかでもてあそびながら歩くのだった。




