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眠り姫症候群

「ねえねえ、夏ももう終わるからさ、冬の新商品なにかないかしら。」


 マダムの店に行くと開口一番そう尋ねられる。

 しかし、去年の冬にもうすでに色々とアイデアを出しているので、それ以上何も出てこない。

 それを伝えるとマダムはあっさりと引いてくれた。


 もしここで粘られたら、石でもあっためて布に包んでカイロにしたらと言うところだった。


 話が一段落したところで、例の話を切り出す。


「そういえば最近、なんだか変わった病気が流行ってるって聞いた?」

「あー、あれね。眠り姫症候群(シンドローム)でしょ。 うちのお客さんから話を聞いたわ。」


 マダムが深刻そうな顔をする。


「眠り姫症候群って病名なの?」

「症状から見てそう呼ばれるているわ。あだ名みたいなものね。実際の病名ではないみたいよ。というか、そんな病気は存在してなかったみたい。だから仮でそう呼んでるのよ。」

「へー。そうなんだ。お客さんに聞いたっていったよね。詳しい?」

「客商売だもの。ある程度の情報が集まってくるわ。聞きたい?」

「聞きたいか聞きたくないかで聞かれたら、聞きたい。」

「素直に『お願い』って言えばいいのに。でも、そのちょってひねくれているところもいいわ~。」


 え、なんかよくわからないスイッチを押してしまったか?

 でも、素直に言えない……


「こほん。どうやらね、貴族のお嬢様方に流行っているらしいのよ。ある日、突然目が覚めなくなるんですって。どれだけ揺すっても声をかけても目が覚めない。でも原因もわからない。治療法もわからない。ただただ眠り続けてるって話よ。」

「でも、眠り続けてるってことは、ご飯とか食べれないから衰弱していくよね?」

「まだそこまで深刻ではないけど、このまま続けばそうかもね。」

「そのお嬢様たちに共通点はないの?」

「さぁ?貴族なんて醜聞を恐れるのと噂話で生きる生き物だからどこまでが本当かわからないわ。」


 うわっ。バッサリ切るな。


「貴族様が嫌いなの?」

「嫌いではないわ。第一、このお店のお高め設定の商品は、貴族様は買っていくものよ。」


 ですよね。


「たまに自分本意なお客様がいるわね。でもそれは、貴族ばかりではないのよ。」

「でしょうね。」


 共通点か……

 今の話だったら、「貴族のお嬢様」ってのが共通点だよな。


「何人くらいいるんだろうか?」

「え?眠り姫が?そうねぇ……はっきりした数はわからないけど、これだけ話題になるってことは一人や二人ではないわね。五人から十人ぐらいかしら。」


 マダムの返答に腕組みをして考え込む。


 五人から十人ぐらい、か……

 本当のところをいえば、もう少し人数がいるかと思った。

この話にでてくる、「眠り姫症候群」は、実際の睡眠障害ではありません。

あくまで、ファンタジーの中の一つとしてとらえてください。

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