串カツ食べたい
絶対行かないからね、と言いながら食堂に入ろうとするとぬっと目の前に影がさす。
通せんぼをしていたのは、ノートを掲げたソラだった。
ま・た・お・ま・え・か。
「……」(ノートを掲げる)
「廊下の話し声を聞いて、すっ飛んでスタンバってましたよ。」
食堂にいた人がソラの行動について説明してくれる。
「で?」
「……」(ノートを掲げる)
えー、新しいメニュー?
そろそろネタ切れになるよ。
うーむ。
夏のご飯といえば、冷やし中華とか冷や麦とか?
あとは冷やし茶漬けとかしか思い浮かばん。
でも結局台所に立つ人は、何を作ってもあついんだよな。
「私、トンカツ食べたい!!」
「あ、それだったらカツドンがいいです!!」
悩む私をみて、レティシアとソラの行動について説明してくれた人が手を上げる。
黙れ、脳筋ども。
夏の揚げ物ほど死ぬものはないじゃないか。
しかも、暑いからさっぱり食べようという気はないのか。
豚カツかぁ。言われたら食べたくなってきた。
でも、作るなら。
「串カツも美味しいんだよな。」
「クシカツ?なにそれ!!」
しまった。声に出ていたようだ。
急いで口に手を当てるがもう遅い。後の祭りである。
新しいものが食べられると、キラキラした目で見つめられる。
視線がいたい。
「……串に具材をぶっさして、パン粉をつけて揚げたやつ。」
「「「「それにしよう!!」」」」(こくこく)
いつの間にか食堂にいた他の人も会話に参加してきているし、ソラは、やる気を出している。
仕方がない。作り方を教えて、後はソラに作らせよう。
そうと決まれば早速作り方を説明する。
手近にあった野菜たちを適当な大きさに切り、串に刺していく。
私はキノコが好きだから、忘れずに。
肉には間に玉ねぎを挟み、刺していく。
そして小麦粉、卵、パン粉の順に付けていく。
ある程度出来たところで、ソラが油で揚げ始めたのだが、熱い。
隣にいるだけなのに熱い。
ちょっとソラの方に手を出してみれば、パチパチと油がはねてくる。
誰だよ。夏に揚げ物が食べたいって言ったやつ。
言いだしっぺを見れば、なんだか楽しそうに談笑している。
腹立つな。
腹が立った私は、平皿に豆を入れ小さい深皿を一枚用意する。
そして箸を用意してテーブルに近づいて行く。
「え。なになに?おつまみ?」
「違う。まだ出来るまで時間があるから、ゲームしない?このお皿に入っている豆をこっちの小さいお皿に入れるの。箸を使って。」
「箸で?」
ちょいちょい向こうの世界の文化があるので、もしかして箸もあるかもと調べたらこっちの世界にも箸はあった。
しかし、あまり使う人はいないようだった。