スタンプカード
何だこれ。
短冊に書かれた短歌を見ながら、考える。
おみくじに短歌が書かれているのと同じ感じかな?
でもこれって、普通に読んだ通りでいいのか。
国語的授業であれば、深読みしろっていうよね。
でも、私は考察とか深読み苦手だからなぁ。
小説でも映画でもネタバレされても楽しく見れるし、推理小説でも推理しながら読むなんて高等技術はない。
取り巻きの登場人物たちと、同じように驚いて、話を聞いている立場なのだから。
あとがきからでも読める人なのだ。
テレビドラマであれば、犯人が誰がなのかがわかる方だが、自分で読むとなかなか難しい。
深読みする?
どう読めばいいんだろうか。
涙も泡も消えてくよー。星の瞬きしかそれを知らんのだわ。って感じ?
違うな。絶対違う。
しかし闇夜だったら、星見えなくない?
しかも、瞬きって届くまでに時間がかかるよね。
ってことは、結果今は誰も知らないってことじゃない?
何年後かにそれを知る人がいるかも知れないってこと?
うーー。全然わからん。
……。
…………。
ま、いっか。
これが読み解けなくても死なないし。
あっさりとあきらめて、短冊をゴミ箱に丸めて捨てる。
机に残ったクッキーを齧りながら、ジュースで流し込む。
齧るたびに眉間にシワが寄るし、いつまで食べても美味しいと思わない。
やっとのことで食べ終えたが、もう晩御飯の時間である。
自室を出て食堂に向かっていくとレティシアと出会った。
「アイナー。」
「ぐぇ。」
いつもの通りに突撃され、蛙がつぶれたような声が出てしまう。
しかし、その後の行動がいつもと違った。
何故かレティシアは、くんくんと私の匂いを嗅ぎ始めた。
「な、なに?」
「なんかいい匂いがする。」
自分でも確認しようと、服の袖の匂いを嗅いでみる。
「そう?」
「うん。お花みたいな感じ。」
食べたらしばらくいろんな所に匂いがつく、カップ焼きそばみたいだ。
思い当たることが有りすぎて納得していると、レティシアがワクワクした顔でみてくる。
「聞きたい。」
「え、楽しい話じゃないよ。」
「教えて?」
請われた通り、新しい店が出来ていたことから、一悶着有りながらも凛と出掛けたこと、そこでフォーチュンクッキーを買ったことと味についてを語る。
話が終わるとレティシアはなぜか頬をぶっと膨らませていた。
「そのお店に私もアイナとお買い物にいきたい。」
「行きたくない。」
「えー!!」
「そうだ。行きたいなら、スタンプカードをあげるよ。」
クッキー一つしか買ってないから、スタンプも一個しか押されてないけど。
「いらないわ。だって、二人でいった時に使うでしょう?」
いや、 もう二度と行かないんだろうし、行ったとしても買い物をしないと思う。