ポイント制度
「お連れ様は賑やかな方ですね。」
「はぁ、すみません。」
「いえいえ。あのように元気な女性がいるとぱっと花が咲いたように明るい気持ちになりますよね。」
いいえ、全然。明るい気持ちになりません。
暗闇のなかで一人で立っていて、遠くで誰かの鳴き声なのか話し声なのかが聞こえているのに、その場から動いてはいけない気分です。
「ところで、占いがクッキーだけってことはないですよね?」
「そうですね。当店はポイント制になっております。お買い物をしていただいてポイントが貯まります。貯まると御館様の占いを体験することができます。」
「御館様?」
「はい。当館の主です。」
あっ、そういう設定ね。店長さんのことをそう呼んでいるんだ。
「御館様の占いはよく当たりますよ。」
ふふふ、と笑いながら宣伝をする店員さん。
大変だね。設定に乗っていかなきゃいけないのは。
私の冷めたコメントを知らない彼女は、次に入店したお客さんに声をかけにいった。
やっと解放された私は、並んだ商品をざっと眺めていく。
商品のとなりにはポップが立っており、ピンクのリボンのバレッタは、恋愛運が上昇するだの「このお茶を二人で飲めばもっとラブラブに」などの煽り文が踊っている。
異世界でも、そこら辺は変わらないらしい。
周りを見渡してもキャッキャッと話す女性たちだって、たぶん向こうと変わらないだろう。
そう考えると急に居心地が悪くなる。他の人との距離が遠くなったような感覚すらある。
私はああやってテンションが上がらない。
可愛いものをみて可愛いと思うが、それを自分が使ったり、身に付けたりするかと言えば、絶対にない。
似合うかな、と当てる事だって恥ずかしい。
「なにかいいものはあった?」
凛が話しかけてきて、現実に引き戻される。
「特には。凛は」
何かあった?と聞こうとして、両手に一杯抱えられた商品をみて言おうとしていた言葉を飲み込んで違う言葉に変更する。
「山盛りだね……」
「もう、あれもこれも欲しくて、迷っちゃうー。」
「あっそう。そろそろ出るよ。」
時間制限があるわけではないが、外で並んでいるであろう人達のことを考えると長居はできない。
「えー、もうちょっとぉ。」
「だめ。それにそんなに無駄遣いしちゃだめだって。お小遣いなくなっちゃうでしょ。」
凛のお金の出所はきっとチョコ殿下だと思うけど、だからと無駄遣いが許される訳ではない。むしろ、無駄に使ってはダメな気がする。
何だかんだとわめく凛に会計をさせ、そそくさと店を出るのだった。