大きくなったらなんになる?
暑い日が続いたある日。
ウォルターと一緒に買い出しに出ていた帰り道、目の前を子どもが何人か走り去っていった。
子どもたちは、この暑さをもろともせず、元気よく歌を歌っていた。
「♪おーきくなったらなんになるー」
「おっ、ちっちゃい頃歌ったなぁ。」
「へー、ちなみにウォルターは、小さい頃なにになりたかったの?」
「俺っすか?小さい頃は、ドラゴンになりたいっていってたんすけど、母親になれないって言われて……」
あーよく、アニメのキャラになりたいとか言うよね。小さい頃って。
「で、なにに変えたの?」
「騎士になりたいにしたっす。夢は叶ったっす。」
「へー。良かったね夢がかなって。」
「そうっすね。お嬢は、何になりたかったんすか?」
「無難にお花屋さんとかケーキ屋さんとか、かな。よくある感じでしょ?」
「そうなんすか。その後は変わったんすか?」
「なりたいものは別にないかな。願い的には……そうだな。今現在で言えば、巻き込まれ事故ゼロへ、平凡な日常を、かな。」
「なんか、標語みたいっすね。」
「そんな風にしてみた。」
下らない話をしながら歩いていると視界の端に見慣れないものが映った気がした。
「?」
見れば、ファンシーな建物があった。
別に外観がファンシーな訳ではなかったが、窓から見える中の様子がピンクとフリルにまみれていたのだ。
「あれ?新しいお店ができたんすね。」
「女子受けしそうだね。」
「お嬢も女子っすよ。」
「そうなんだけど、あそこまで可愛いのを推されると恥ずかしくない?」
「そういうもんすか?」
「私はそう。……占いの館だってさ。それも女子受けしそうだね。」
「占いに興味ないんすか?俺はちょっぴりあるっす。」
占いねぇ。あんまり気にしないかな。
あっ、でも、初詣の時はおみくじを必ずひくなかな。
懸賞もけっこう出してたな。商品券とか図書カードをよく貰った。
あと、私の身長より大きいぬいぐるみも当たったな。
私は懸賞に対して、勝てない勝負はしない派ではないが、当たりそうなところを攻めるのが基本だった。
しかものめり込むほどやり混みもしないので、ひき際はあっさりだったりする。
……これは占いじゃなくて、ギャンブルか。
「興味ない。」
「そうみたいっすね。でも、あんな可愛い感じの店じゃ、男は入りづらいっす。」
「行けばいいじゃん。もしそれで、不審者認定されたら、私は離れて歩くから。」
「見捨てる気、満々じゃないっすか!!絶対行かないっす!」
楽しく話ながら、凛が好きそうだなと思ったのが、運のつきだったかもしれない。
数日後、店の存在を知った凛が突撃してきた。