降臨
私の必死な形相に凛も何かを察したらしい。
救助班に何かを小さい声で訴えている。
離してください。本気で。
命が危ないのです。あなたの。
しかし、私の努力は実らなかった。
パリンとガラスの割れる音と共に窓から入ってきた風にカーテンが舞う。
急に行われた空気の入れ換えに、犯人さんが驚き、ナイフを私の首からはずし窓に向ける。
風が収まると、そこには人影が……
「その子を離していただけますか?」
「ひぃ!」
ひぃ!氷の帝王が降臨していた。
ははは、犯人さん、逃げて!
ペチペチと今以上に叩くが、犯人さんは離してくれない。
それどころか、氷の帝王にたてつこうとする。
「だ、だれだお前!武器を」
犯人さんか言い終わる前にキン、と音がして、手からナイフがなくなる。
どうやら、帝王様が剣でナイフを弾いたらしい。
壁に綺麗にナイフが突き刺さっている。
「離していただけますか?」
「ひぃぃぃ!!」
あー!!怒ってる!!
説教タイムが来るよね?これ。私、今回はなにもしてないよ。
ホントだよ。
帝王様が摺り足でこちらに近づこうとしたタイミングで、犯人さんが圧に耐えきれず発狂した。
私を帝王様に向かって、投げたのだ。全力で。
「うわぁぁぁぁ!!」
「ちょっ!!」
「なっ!」
「ぶっっっ。」
「リアム!そっちに行ったぞ。」
「はい!」
大きな音がしたと思ったら、リアムが「確保しました」と知らせる。
バタバタと駆け寄る音を聞きながら、鼻を押さえる。
アレンが受け止めてくれたものの、思い切り鼻をぶつけたのだ。
「大丈夫ですか?」
「はにゃをぶつけた……」
心配そうな顔で顔を覗き込まれる。
骨折はしていないらしい。
というか、鼻血すらでないのは何故だろう。
よく考えてみたら、ぶつけて鼻血なんて一度も出たことなかったわ。
さすさすと鼻をさすりながら、自分の手をみれば、鼻血ではなく手からの出血が目にはいる。
手の甲は、うっ血してるし、お腹もいたいし、散々である。
「怪我してますね。一度外に出ましょう。」
凛も明輝も保護されて外に出るところだった。
すると、凛が戻ってきてアレンに何かを小さな声で何かを囁いた。
直ぐに私に「先行ってるね」と手を振って出ていく。
そのあとに続いて私も出ていこうとするが、なぜかアレンに止められる。
「?」
出ましょうって言ったのに、何故止められるのかがわからず、首を傾げる。
あれ?何故また怒っているのでしょう?
「ふぁっ!!」
突然の浮遊感に変な声が出る。
直ぐにアレンにお姫様抱っこをされていることを理解する。
「なぜに!!」
「怪我人は大人しくしていてください。」
いや、降ろしてください。
凛!!何を吹き込んだんだ!!